彼女だけが知る笑顔
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「煉獄~女子もいるんだから、お前ちゃんと加減しろよ?」
そう言いながらこちらを見る友人たちの顔は
にやにやと完全に俺を揶揄おうという面持ちだ。
「当たり前だろう!それくらい承知している!」
「いや、お前出来るか…加減…?」
友人の心底疑わしいという様子に
加減できるに決まっている!と声高に主張したいところだが、
力の加減という部分に関しては自他共に信頼がないのが実情であるがゆえに
一瞬、返答に詰まる。
「…そもそも女子は狙わん!」
「…そうだな。それが安全だ。」
「まぁ今年はふわっふわのゴムボール使うらしいから大丈夫だろうけどな。きっと煉獄対策だぞ?(笑)」
「…っ、…っくく、煉獄クンどんだけだよ…っ(笑)」
「むぅ…。」
やけに楽しそうに俺を揶揄う友人たちと、山田に
だから、人には得手不得手というものがあって…と説こうか
どうしようかと眉を寄せながら腕を組んで悩んでいたその時、
「杏寿郎くん、飲み物買いに購買行ってくるけど何かパンとか買ってこようか?」
とお弁当を食べ終わった澪が声を掛けられた。
パッとそちらを見ると、澪の顔には苦笑が浮かべられていた。
その表情を見て、あぁ話を切り上げるタイミングを与えてくれているのだなとすぐに気付き
「いや、俺も一緒に行こう!」
と立ち上がり、
澪と連れ立って、購買へ向かうことにした。
教室を出て、廊下を歩き始めながら
「すまないな、澪!」
と呼び掛けるときょとんとした顔で澪がこちらを見返してきた。
よもや、助けてくれたと思ったのは勘違いだったのだろうか?と思いつつ
それでも助かったことは事実なので澪に礼を伝える。
「声を掛けてくれてありがたかった、感謝する!」
すると「あぁそのことかぁ…」と呟いた澪が
隣を歩きながら、俺の眉間に手を伸ばした。
「…ふふっ、眉、下がって千寿郎くんみたいになってたよ(笑)」
「よもや…」
「あはは!今も。下がってる、眉。」
揶揄われるのは、嫌いというわけではないが少し苦手だ。
どう反応して良いか、悩ましいから。
自分が不得手なスポーツは、同級生の大多数に知られてしまっているが
自分が揶揄われるのを苦手としていることを知っているのは
きっと澪だけだ。
だからさっきもさりげなく澪が助け出してくれた。
助け出してくれたはずなのに、
今度は澪自身が揶揄うように隣から俺を覗き込んでいるが。
だが俺も、揶揄われるのは苦手なはずなのに、
つん、と俺の眉間を触りながら楽しそうに笑う澪を見ていると
自然に笑顔になった。