【短編】微力なエール
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微力なエール
「カナタ、お疲れー!」
「…あぁ、また明日。」
声を掛けられたクラスの友人に挨拶を返しながら、
HRの終わった教室を出て足早に弟のクラスに向かう。
…そこに弟はいないと分かっていながら。
その理由を頭に浮かべてため息をつきながら廊下を歩いていると
1年の廊下に行き着いた辺りから周りがざわつきだし
そこかしこで声を掛けられた。
「カナタ先輩っ!/////こ、こんにちはっ」
「こんにちは。(ニコッ)」
きゃぁーーーっ
照れながらも一生懸命声を掛けて来てくれるその子達が
自分がにっこり微笑むだけで嬉しそうに頬を染める様子は
可愛いなぁ…と純粋にそう思う。
まぁ、容姿が可愛いかどうか…と言われると
1番可愛いのは間違いなく、幼馴染である燈子なのだが。
そう言えば、今日はお昼で学校が終わるからと
燈子お気に入りの定食屋に誘われていたのに
急きょ呼び出された生徒会の仕事のせいで付き合ってあげられなくて
申し訳なかったな…ということも思い出す。
その事を伝えた時に見せていた拗ねた顔も、
やっぱり地球で一番可愛かったが。
「ん?カナタではないか!炭彦なら不在だ!」
「…知ってるよ。そのせいでここまで出向いているんだから。」
「…?」
燈子のことを思い出しながら、弟の教室にたどり着いた瞬間
煉獄桃寿郎から分かり切っている事実を告げられる。
不思議そうに首を傾げた時に揺れた派手な色の髪が
地毛だと言うのだから不思議なことも在るものだ。
まぁ、桃寿郎の人と為りを知ってからは
彼が校則違反の染髪をするような人物ではないことも充分すぎるほど
分かっているので疑う余地ももう無いのだが。
弟の親友であるこの男は、時に呆れてしまうほど真っ直ぐで
カナタにとっては眩しいくらいだ。
その真っ直ぐさは、桃寿郎の親友である自身の弟もよく似ている。
「…あぁ!炭彦の荷物か?あとで届けようと思っていたんだ!」
「いや、それじゃなくて…、まぁそれも必要だけど」
ザワザワ…
廊下の方が、自分が出向いた時と同じくらいざわつき出し、
(あぁ、来たか)
と教室の入り口を振り返る。
「お。澪ちゃん、久しぶりだね~!」
「澪ちゃん、相変わらず可愛いなぁ!」
「こんにちは!お兄ちゃん、居ますか?」
「ここには居ないよ。」
「!?兄さんっ、どうしてここにいるの!?」
にこにこと笑顔を振り撒きながら入って来たのは
炭彦の1歳下の、妹・澪だ。
「お兄ちゃんは居ないってどういうこと?」
「警察と母さんが来て、今こっぴどく説教中だからだよ。」
「け、警察っ!?い一体何が…」
端的に伝えすぎたせいで、澪の目が潤み出し
内心焦って、詳細な事情を伝える。
最近、寝坊が過ぎて毎日パルクール通学をしていたら
「危険な登校をする高校生がいる」という通報が7件も入ったこと
その通報の件で、今朝警察に炭彦が呼ばれたこと
だから今日は、炭彦は澪と帰ることが出来ないということ
「良かった…事件に巻き込まれたとかじゃなくて…」
「いや、良くはないだろ。人に迷惑をかけたから通報されたんだし。」
「…!そっか、そうだよね。私も明日からは今日以上にちゃんとお兄ちゃん起こすね!」
そう言って、胸の前で両拳を握る妹は
確かに可愛い。
地球で二番目に可愛いと思っている。
だから、視界の端でそわそわしている男どもの気持ちも分からないでもない。
…ないが、下手なことしたらただじゃおかないからな。
と笑顔で圧を掛けておく。
あと、さっき澪に直接「可愛い」と言っていたヤツも
顔は覚えたからな。
地球で一番可愛いと思っている女の子は燈子だが、
地球で一番愛しいと思っている女の子は澪だからな。
「それで…兄さんは、ここに私を迎えに来てくれたの?」
「いや、俺は生徒会の用事でまだ帰れないから。炭彦のこと伝えに来ただけ。」
「えー!お母さんもいないのに…お昼どうすればいいの~」
「自分で作れるだろ?」
「あ!燈子ちゃんと義照くんはっ?」
「あの二人なら、」
「…澪!それなら、俺と一緒に帰ろう!!」
あぁそう言えば桃寿郎と話をしていたな。
澪の登場で、すっかりその存在を忘れ去ってしまっていたけど。
「…桃寿郎くん!でも、桃寿郎くん今日剣道部は?」
「今日は休みだ!ちょうど炭彦の荷物を預かって、家へ届けようと思っていたんだ!」
「あ、お兄ちゃんのカバン…」
「一度家に寄って、一緒に昼ご飯を食べたら炭彦のカバンと一緒に澪も家へ送り届けよう!どうだ?」
「でも…、」
澪が、俺の顔色を窺うようにこちらを見る。
同時に、桃寿郎もこちらをじっと見てきた。
…はぁ、心の中だけでため息を吐く。
「…桃寿郎がいいと言うなら、お言葉に甘えたらいいんじゃない?」
ぱぁっ
俺の言葉に、澪も桃寿郎も
同じタイミングで顔を輝かせた。
「うむ!遠慮はいらないぞ、澪!」
「わぁい!やったー!桃寿郎くんのお家にお邪魔するの久しぶりだ!」
本当は、燈子と義照が
この前奥さんに不埒な視線を送ったことを謝りがてら
定食屋さんでご飯を食べて帰ると言っていたから
澪もそこに行って合流すればいいと伝えようとしていたのだが
2人の嬉しそうな笑顔を見ていたら、まぁいいか…と思った。
「じゃあな、桃寿郎。あとは頼んだ。」
「あぁ!任せてくれ!澪も、カバンもしっかり送り届けるからな!」
当たり前だ。
と言いかけたけど、辞めた。
澪にとってはまだまだ、桃寿郎は義照と同じような存在だろうが
桃寿郎にとっては…。
まぁ、それを知っていながら
愛しい妹を頼むくらいには、
俺も信用している男だから。
「桃寿郎くん!ご飯の後、久しぶりに少しだけ桃寿郎くんの稽古も見学したいな。」
「あぁ、そんなことなら好きなだけ構わないぞ!」
「わぁ楽しみ~♪」
そんな会話をする二人に背を向けながら
(せいぜい、頑張るんだな。桃寿郎。)
エールともつかないエールを贈った。
「カナタ、お疲れー!」
「…あぁ、また明日。」
声を掛けられたクラスの友人に挨拶を返しながら、
HRの終わった教室を出て足早に弟のクラスに向かう。
…そこに弟はいないと分かっていながら。
その理由を頭に浮かべてため息をつきながら廊下を歩いていると
1年の廊下に行き着いた辺りから周りがざわつきだし
そこかしこで声を掛けられた。
「カナタ先輩っ!/////こ、こんにちはっ」
「こんにちは。(ニコッ)」
きゃぁーーーっ
照れながらも一生懸命声を掛けて来てくれるその子達が
自分がにっこり微笑むだけで嬉しそうに頬を染める様子は
可愛いなぁ…と純粋にそう思う。
まぁ、容姿が可愛いかどうか…と言われると
1番可愛いのは間違いなく、幼馴染である燈子なのだが。
そう言えば、今日はお昼で学校が終わるからと
燈子お気に入りの定食屋に誘われていたのに
急きょ呼び出された生徒会の仕事のせいで付き合ってあげられなくて
申し訳なかったな…ということも思い出す。
その事を伝えた時に見せていた拗ねた顔も、
やっぱり地球で一番可愛かったが。
「ん?カナタではないか!炭彦なら不在だ!」
「…知ってるよ。そのせいでここまで出向いているんだから。」
「…?」
燈子のことを思い出しながら、弟の教室にたどり着いた瞬間
煉獄桃寿郎から分かり切っている事実を告げられる。
不思議そうに首を傾げた時に揺れた派手な色の髪が
地毛だと言うのだから不思議なことも在るものだ。
まぁ、桃寿郎の人と為りを知ってからは
彼が校則違反の染髪をするような人物ではないことも充分すぎるほど
分かっているので疑う余地ももう無いのだが。
弟の親友であるこの男は、時に呆れてしまうほど真っ直ぐで
カナタにとっては眩しいくらいだ。
その真っ直ぐさは、桃寿郎の親友である自身の弟もよく似ている。
「…あぁ!炭彦の荷物か?あとで届けようと思っていたんだ!」
「いや、それじゃなくて…、まぁそれも必要だけど」
ザワザワ…
廊下の方が、自分が出向いた時と同じくらいざわつき出し、
(あぁ、来たか)
と教室の入り口を振り返る。
「お。澪ちゃん、久しぶりだね~!」
「澪ちゃん、相変わらず可愛いなぁ!」
「こんにちは!お兄ちゃん、居ますか?」
「ここには居ないよ。」
「!?兄さんっ、どうしてここにいるの!?」
にこにこと笑顔を振り撒きながら入って来たのは
炭彦の1歳下の、妹・澪だ。
「お兄ちゃんは居ないってどういうこと?」
「警察と母さんが来て、今こっぴどく説教中だからだよ。」
「け、警察っ!?い一体何が…」
端的に伝えすぎたせいで、澪の目が潤み出し
内心焦って、詳細な事情を伝える。
最近、寝坊が過ぎて毎日パルクール通学をしていたら
「危険な登校をする高校生がいる」という通報が7件も入ったこと
その通報の件で、今朝警察に炭彦が呼ばれたこと
だから今日は、炭彦は澪と帰ることが出来ないということ
「良かった…事件に巻き込まれたとかじゃなくて…」
「いや、良くはないだろ。人に迷惑をかけたから通報されたんだし。」
「…!そっか、そうだよね。私も明日からは今日以上にちゃんとお兄ちゃん起こすね!」
そう言って、胸の前で両拳を握る妹は
確かに可愛い。
地球で二番目に可愛いと思っている。
だから、視界の端でそわそわしている男どもの気持ちも分からないでもない。
…ないが、下手なことしたらただじゃおかないからな。
と笑顔で圧を掛けておく。
あと、さっき澪に直接「可愛い」と言っていたヤツも
顔は覚えたからな。
地球で一番可愛いと思っている女の子は燈子だが、
地球で一番愛しいと思っている女の子は澪だからな。
「それで…兄さんは、ここに私を迎えに来てくれたの?」
「いや、俺は生徒会の用事でまだ帰れないから。炭彦のこと伝えに来ただけ。」
「えー!お母さんもいないのに…お昼どうすればいいの~」
「自分で作れるだろ?」
「あ!燈子ちゃんと義照くんはっ?」
「あの二人なら、」
「…澪!それなら、俺と一緒に帰ろう!!」
あぁそう言えば桃寿郎と話をしていたな。
澪の登場で、すっかりその存在を忘れ去ってしまっていたけど。
「…桃寿郎くん!でも、桃寿郎くん今日剣道部は?」
「今日は休みだ!ちょうど炭彦の荷物を預かって、家へ届けようと思っていたんだ!」
「あ、お兄ちゃんのカバン…」
「一度家に寄って、一緒に昼ご飯を食べたら炭彦のカバンと一緒に澪も家へ送り届けよう!どうだ?」
「でも…、」
澪が、俺の顔色を窺うようにこちらを見る。
同時に、桃寿郎もこちらをじっと見てきた。
…はぁ、心の中だけでため息を吐く。
「…桃寿郎がいいと言うなら、お言葉に甘えたらいいんじゃない?」
ぱぁっ
俺の言葉に、澪も桃寿郎も
同じタイミングで顔を輝かせた。
「うむ!遠慮はいらないぞ、澪!」
「わぁい!やったー!桃寿郎くんのお家にお邪魔するの久しぶりだ!」
本当は、燈子と義照が
この前奥さんに不埒な視線を送ったことを謝りがてら
定食屋さんでご飯を食べて帰ると言っていたから
澪もそこに行って合流すればいいと伝えようとしていたのだが
2人の嬉しそうな笑顔を見ていたら、まぁいいか…と思った。
「じゃあな、桃寿郎。あとは頼んだ。」
「あぁ!任せてくれ!澪も、カバンもしっかり送り届けるからな!」
当たり前だ。
と言いかけたけど、辞めた。
澪にとってはまだまだ、桃寿郎は義照と同じような存在だろうが
桃寿郎にとっては…。
まぁ、それを知っていながら
愛しい妹を頼むくらいには、
俺も信用している男だから。
「桃寿郎くん!ご飯の後、久しぶりに少しだけ桃寿郎くんの稽古も見学したいな。」
「あぁ、そんなことなら好きなだけ構わないぞ!」
「わぁ楽しみ~♪」
そんな会話をする二人に背を向けながら
(せいぜい、頑張るんだな。桃寿郎。)
エールともつかないエールを贈った。
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