楝の温もり
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「っ!…煉獄さん…?」
ぽん、ぽん、と頭上に重みを感じ、目の前には鮮やかな炎の意匠が入った袖が揺れる。
どうやら、頭を撫でられているようだ。
…ぱしんっ
その温かさごと振り払うように、手を叩き落とす。
「何なんです、私、怒っているんですよ。分かってます?」
「うむ!元気があるようで結構なことだ!」
「…分かってませんね?(怒)」
成立しない会話に、仄かであったがゆえに表には出していなかった怒りを
全面に出すと
煉獄さんはひらり、と炎を翻して扉に向かっていた。
「さて!俺も義兄君にご挨拶に伺うとしよう!!」
「ちょっと!煉獄さん!?」
「案ずるな!努力はしよう!…ありがとう、胡蝶!」
「っ…!」
(ひょっとして余計なお節介、というやつだったでしょうかね…)
祝言はつい最近だったとはいえ、
許婚期間は長かった二人だ。
私などよりも余程長期間を共に過ごしているのは明白なのに、
あの時、私の心を掬い上げてくれた彼女とお茶できる間柄になれたのが嬉しくて
ついつい口を出したくなってしまう。
あの笑顔を私も守りたくなってしまう。
こんな考えだって、煉獄さんには筒抜けなのかもしれないが
それが何だか妙に悔しく思えてくる。
…そ、と先ほどまで温もりを感じていた部分に手を当てる。
姉さんがいなくなってから、頭を撫でられるなんて無かったから。
「…私の方が、先輩なんですからね。」
もうとうに無人の椅子と扉を、悔し紛れに睨みつけたけれど
それは猫すら逃げ出さないくらい弱々しい眼差しだっただろう。
楝の温もり
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