花色の笑み
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指に力を込め、歯を食いしばり過ぎて
微かな頭痛まで感じ始めた頃、
処置室の扉を背に廊下に立ち尽くしていた自分の耳が
静かに、
それでいて必死に急いでいることが分かる足音を拾う。
伏せていた顔と瞼をあげると、
目の前を見知らぬ少女が駆け抜けていく。
自分の存在に気付く気配すらない、その少女の背中を目で追うと
その小さな身体は廊下の先
突き当りの部屋の中に吸い込まれていった。
(…、あの部屋は…)
思考が遅れ、ようやく思い至る。
いつになく鈍い思考に、自分が疲れているのだということも実感する。
それもそうだろう。
姉さんの葬儀を終えたばかりの昨夜半、
南方にて強力な血鬼術を操る鬼が出没し、数十名を超える死傷者が出た。
次々に蝶屋敷へ運び込まれる戦闘不能になった隊士たち…
その対応で、しのぶ自身も今の今まで処置にあたっていたのだ。
文字通り、目が回るほどの忙しさだった。
だが、少女が入っていったあの部屋は
しのぶが先ほどまでいた戦場のような処置室とは一線を画している。