甚三紅の想紅
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銀座に出向く目的は、
煉獄家御用達の呉服店に行くためということだったが
銀座に着いて呉服店に向かうまでにも
簪やら漆器の小物入れやら絞り染の手巾やらを
ぽんぽんあっさり購入していた。
簪は、『澪にはこれだな!』と言って杏寿郎さんが選んでくれたことが嬉しく
素直にありがとうございますと受け取ったし
小物入れは細かな傷が絶えない杏寿郎さん用の軟膏入れに
ちょうど良いなと思ったし
手巾は日々の家事をこなす中でいくつあってもありがたいので
これも素直に受け取った。
しかし、その後にようやく辿り着いた
呉服店が酷かった。
杏寿郎さんが女将に勧められるまま、
十枚以上も私の着物を仕立てようとするので
『私の身体は一つしかありませんので!』と必死に止め
(それでも五枚も新調することになった)
不満そうな杏寿郎さんに、
最近少しずつ身長が伸びてきた千寿郎と
自宅で着流し姿でいることが多くなってきた槇寿郎様用の
着物を仕立てることでどうにか納得してもらった。
それでも、同時に頼んだ帯や帯留め、襦袢などを
あわせたら途轍もない金額だろう。
何故急にそのような散財を…と
道々で聞き出したところ、
どうやら三河屋のおじ様の言葉をきっかけに
花嫁姿は今しばらく無理だけど
着飾らせることは出来るな!という思考に至ったらしい…
道理で『逢引だ!』と言い出す前にじっと
私の着物を見ていたはずである。
その割には、小物入れや手巾など
身に付ける物以外も購入していると思ったが
深く考えるのは止めよう。
とにかく今は、これ以上の散財を止めることが
第一だ。
「杏寿郎さん!私、少々疲れましたのであちらのカフェーで休憩致しましょう!!」