甚三紅の想紅
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「…。」
「…。」
「…杏寿郎さん?」
私が無言で手を差し出しても、
一向に木刀を渡さない杏寿郎さんに声を掛ける。
「…むぅ。しかし…、左腕であれば…」
「…私の幸せを願って下さっているのでは?」
往生際の悪い杏寿郎さんにそう言うと
ようやく諦めて、私に木刀を差し出した。
「では、ここらを一走り…」
「杏寿郎さん、“安静”の意味はご存知ですか?」
「だが足なら元気だ!」
「あなたが鍛錬で走る速さは腕に響きますので、駄目です!」
「むぅ…、だが家で大人しくしているのは性に合わん。」
「性に合わなくても、大人しくしていて下さい。」
「…。」
「大人しくしていて下さい。そうすれば私は安心して、幸せな気分です。」
「…。」
「私にはいつも幸せでいてほしいのですよね?」
「…。」
無言でじっと見つめてくる杏寿郎さんに
畳みかける。
「…。…よし!」
反論しないので、ようやく分かってくれたか
と思っていたら、
じっとこちらを見つめるだけだった杏寿郎さんが
にぱっと笑った。
(…“よし”…?)
嫌な予感がして、眉をひそめると
輝く笑顔のまま杏寿郎さんがこう叫んだ。
「澪!今日は逢引だ!!」