甚三紅の想紅
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「な、なんですか、急に声を掛けたらびっくりするじゃないですか!」
「驚かせてしまったなら、すまない!」
どくどく、と波打つ胸を押さえながら抗議しても
全くすまないと思っていなさそうな笑顔で
杏寿郎さんはこちらを見ている。
「時に澪、君は早めに花嫁になりたいのか?」
「はいっ!?」
「先ほど三河屋さんが仰っていただろう!早く嫁ぐのが君の幸せだと!」
「い、いえ…そこまでは言っていなかったと思いますが…」
三河屋のおじ様が言ったのは早く幸せな姿(花嫁姿)を見たい、
というおじ様の願望であって、
私が早く嫁ぐのが私の幸せだと言ったわけじゃない。
それに…
「…祝言は杏寿郎さんが炎柱にお就きになったら、というお話でしたよね?」
幼き頃より、杏寿郎さんの許婚となり
更に煉獄家に入って暮らしてきた私は
正直すでに嫁入りしたようなものだったが、
昨年とある騒動をきっかけに改めて杏寿郎さん本人から
求婚されたのは記憶に新しい。
その際に、祝言は杏寿郎さんが炎柱に就任したら
執り行うことにしようと話してもいた。
「うむ!だが、早い方が君が幸せなのであれば早めるのも吝かではない!」
「別に早い方が幸せだなんてことはありませんよ。それに…十五になった途端に嫁ぐ方が今は少ないですよ。」
「む?そうなのか?」
婚姻が可能な年齢が女子が十五、男子が十七なので
私と杏寿郎さんはちょうど婚姻できる年齢になったところだ。
それゆえ「祝言はまだなの?」と
ご近所の方々や馴染の店の方に聞かれることも出てきたが
同年の友人で嫁いだ話など未だ聞かない。
私には必要ないので、私は通っていないが
友人たちは女学校に通い家事・裁縫などを修練している
時分である。