青鈍の光
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青鈍の光
ずっと暗闇と恐怖だけの人生だった。
今際の際に、紅く燃える
ひと筋の光が訪れた。
だが、その光はたったひと筋のまま
広がることはなく
従兄妹の言葉が俺を苛む。
五十人分の恨みが、俺を暗闇の中に
押しとどめようとする。
「…すまなかった。」
隣でそう言った、
俺の人生で初めて会った“男性”に
俺はただ首を振ることしか出来ない。
一切言葉を返さない俺に
苛立つ様子も、逆に気遣う様子もない
そのことがありがたくて、
「ひとまず、俺の家に行こう。」
引いてくれた手が、ただただ温かかった。
「ちちうえー!」
「父上!お帰りなさいませ!」
「あぁ、今戻った。」
びくっ
身体が震え、全身が強張る。
一目散に男性の足元に飛び込んできた子を
すっと抱きかかえ、
目の前に駆けてきた少年にも声をかけた
隣のその人をこっそり見上げると、
あの夜からここへ来るまでの間では見なかった
柔らかい笑顔を浮かべていた。
「…?」
「っ、…。」
その笑顔をぼうっと見つめていると、その笑顔の真横にある
小さな目と目が合った。
先ほど抱き抱えられた子が
不思議そうにこちらを見下ろしている。
咄嗟に目を逸らした先でも、
こちらをじっと見つめてくる少年がいて
視線を泳がせた俺は、最終的に自分の足元に視線を落とした。
ちら、と見ただけだが、
どちらの少年も
今もまだ俺の手を握るこの人と
同じ顔をしていた。
先ほど父と呼んでいたし、
この人の子なのだろうと思うと、
自分を害する存在ではないと思えて
ようやく肩の力を抜くことが出来た。
「父上!こちらの方はどなたですか!」
「説明するから、とにかく家に入るぞ。」
とたとたとたっ
手を引かれるがまま、戸口を潜ると
奥の方から小さな足音が聞こえてきた。
「…お義父様!お帰りなさい!お怪我はありませんか?」
その瞬間、ひゅっと息が止まったのが分かった。
「っ!?おいっ!おい!息をしろ!!」
おんな、
おんなだ。女、おんな、おんながいる、
隣から焦ったような声が聞こえるが
頭の中には“女がいる”しか考えられなくなり、
俺の意識はあの夜へ、そしてあの座敷牢へ
暗闇へを逆戻っていく。
…ひ、ひゅっ、ひくっ…
「…クソ!おい、澪!革袋か何かを持って来い!!」
「!?は、はいっ、ただ今っ!!」
「杏寿郎っ、お前は客間に寝床を準備しろ!」
「!かしこまりましたっ!!」
ずっと自分の隣にあった
強くて
優しくて
紅い
ひと筋の光が弱まり、
ぷつん、
と俺は闇に落ちた。
ずっと暗闇と恐怖だけの人生だった。
今際の際に、紅く燃える
ひと筋の光が訪れた。
だが、その光はたったひと筋のまま
広がることはなく
従兄妹の言葉が俺を苛む。
五十人分の恨みが、俺を暗闇の中に
押しとどめようとする。
「…すまなかった。」
隣でそう言った、
俺の人生で初めて会った“男性”に
俺はただ首を振ることしか出来ない。
一切言葉を返さない俺に
苛立つ様子も、逆に気遣う様子もない
そのことがありがたくて、
「ひとまず、俺の家に行こう。」
引いてくれた手が、ただただ温かかった。
「ちちうえー!」
「父上!お帰りなさいませ!」
「あぁ、今戻った。」
びくっ
身体が震え、全身が強張る。
一目散に男性の足元に飛び込んできた子を
すっと抱きかかえ、
目の前に駆けてきた少年にも声をかけた
隣のその人をこっそり見上げると、
あの夜からここへ来るまでの間では見なかった
柔らかい笑顔を浮かべていた。
「…?」
「っ、…。」
その笑顔をぼうっと見つめていると、その笑顔の真横にある
小さな目と目が合った。
先ほど抱き抱えられた子が
不思議そうにこちらを見下ろしている。
咄嗟に目を逸らした先でも、
こちらをじっと見つめてくる少年がいて
視線を泳がせた俺は、最終的に自分の足元に視線を落とした。
ちら、と見ただけだが、
どちらの少年も
今もまだ俺の手を握るこの人と
同じ顔をしていた。
先ほど父と呼んでいたし、
この人の子なのだろうと思うと、
自分を害する存在ではないと思えて
ようやく肩の力を抜くことが出来た。
「父上!こちらの方はどなたですか!」
「説明するから、とにかく家に入るぞ。」
とたとたとたっ
手を引かれるがまま、戸口を潜ると
奥の方から小さな足音が聞こえてきた。
「…お義父様!お帰りなさい!お怪我はありませんか?」
その瞬間、ひゅっと息が止まったのが分かった。
「っ!?おいっ!おい!息をしろ!!」
おんな、
おんなだ。女、おんな、おんながいる、
隣から焦ったような声が聞こえるが
頭の中には“女がいる”しか考えられなくなり、
俺の意識はあの夜へ、そしてあの座敷牢へ
暗闇へを逆戻っていく。
…ひ、ひゅっ、ひくっ…
「…クソ!おい、澪!革袋か何かを持って来い!!」
「!?は、はいっ、ただ今っ!!」
「杏寿郎っ、お前は客間に寝床を準備しろ!」
「!かしこまりましたっ!!」
ずっと自分の隣にあった
強くて
優しくて
紅い
ひと筋の光が弱まり、
ぷつん、
と俺は闇に落ちた。