蘇芳の導き
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「澪、千寿郎!ただいま!…ん?」
家に戻ってすぐに台所へ向かい、
声を掛けたがそこには澪も千寿郎もいなかった。
この時間ならば夕食の準備をしている頃合いのはずだが、
二人はどこに居るのか…
屋敷の中の気配を探る。
二人はどうやら、奥の間にある千寿郎の部屋にいるようだった。
台所には作りかけの夕飯が放置されたままで
何かあったのだろうか?と
不思議に思いながら奥へと向かう。
「…っ、…ひっく、…ぅえ、」
(千寿郎は泣いているのか…?)
母上が亡くなったばかりの頃は
母上を恋しがって泣くことも多かった千寿郎だが
最近はそんなことも少なくなっていたのに…
その代わり、「あねうえ、あねうえ」と
雛鳥のように澪に付いてまわるようになった。
「…ほら、千寿郎。もう泣かないのよ。最初は誰だって失敗するんだから。」
「…っく、…ぁ、あねうぇも…?」
「そうよ。お義母様に教えてもらってから毎日たくさん頑張って出来るようになったのよ。」
「でも…、ぅ…」
…なるほど、恐らく夕飯の支度をしている最中に
千寿郎が何かを失敗してしまったのだろう。
それを澪が慰めているのか、と思い至る。
最近の千寿郎は、澪に付いてまわりながら
何でも澪の真似をしたがっていた。
まだまだ小さい千寿郎には出来ないことの方が多いが、
澪はそんな千寿郎にも出来そうなことを任せていて
上手いこと考えるものだなと感心していたのだが
それは澪が母上から教えられた順に倣っていたのかもしれないな。
「ほら、千寿郎、涙とお鼻を拭いて。」
「ふぐっ…、…ずびぃっ!…ぃ、…」
澪は、千寿郎にとって
姉の役割も
母の役割も
とても上手に担っている。