藤紫の覚悟 -side主人公-
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初任務から戻った杏寿郎さんは、
両耳の鼓膜を損傷していた。
鬼の術を回避するため、
自分で強打して破ったと聞き、
その時の痛みを思ったが、私は想像すら及ばなかった。
直後は痛みと共に一時的に音が聞こえなかったようだけれど
今は水の中にいるように少し篭った響きで聞こえているらしい。
任務後に隠の方の手配でお医者様に診て頂いたが
音や水などに留意すれば自然に治癒するだろう、
とのことだったそうで、ひとまず安心した。
そんな状態なのだから、話は後日にして
耳を休ませて欲しいと思っていたのに、
杏寿郎さんは決意に満ちた顔で
「いや、今話そう」と言う。
そうして、杏寿郎さんから語られたのは…
藤襲山で出会った少年の話。
間近で見た鬼の死、鬼殺隊士の死、
お義父様の言葉、
そして、自分の想い。
「俺は、この道をこそ選びたい。…人間であれば、いつ死ぬかは分からないのが普通だろう。だが、これは普通に生きるより何倍も死に近しい生き方だ。」
「…。」
「だが澪には、夜毎家を不在にする俺の傍で、常に死の気配を感じながら生きるのではない、明るく幸せに満ちた生き方をしてもらいたいんだ。」
「…。」
無言のまま、目の前の杏寿郎さんを見つめる。
最終選別以降、
いえ、もしかしたらそれよりずっと前から
その想いはずっと心の奥底にあったのかも知れない。
だけど、
私にだって、
「お話は、分かりました。」
伝えたい思いがある。
譲れない、
覚悟がある。