藤紫の覚悟 -side杏寿郎-
お名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『澪ちゃんが杏ちゃんの許婚でさえなけりゃ、うちの倅の嫁にもらいたいのになぁ!』
とよく言われているのは知っている。
実際に、町の若者で澪に恋慕を抱いている者も何人か知っている。
鬼、
刀、
血、
…そして死。
そういうものとは無縁の人生を歩むことが、澪には出来る。
何故なら澪は、
「…君のことだ、何処に居ても誰と居ても上手くやっていけるだろう。」
「…一体、何を仰りたいのです。」
「言った通りのことだ。」
無事に最終選別から戻り、身綺麗にした後で
俺は部屋で澪と向かい合っている。
先ほど、千寿郎と迎えてくれた時は輝くような笑顔だった澪の顔が
今は固く強張っている。
「っ…破談にしたいと、だから出ていけと、そういう意味ですかっ…」
「…。」
「なぜ…、なぜなのか、理由をお聞かせ下さい。」
「…その方が君のためだと思ったからだ。」
「どうしてそのようなことが、私のためだと言うのです!」
「しばらく、考えてみて欲しい。」
「杏寿郎さんっ…!!」
澪にそう告げてから数日。
鎹烏から初めての任務を告げられ、隊服に身を通す。
背中に負う“滅”の字、
煉獄家の者がまとう焔を模した脚絆、
自然と身が引き締まる思いがする。
まだまだ、炎柱が引き継いでいる炎の羽織には遠く及ばないが。
俺は、俺の責務を全うしなくては。