【Series長編】千紫万紅の煌めき
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金赤の夜明け
……っ、去った、か…?
かなうことなら、刺し違えてでも滅したかったところだな…
誠に不甲斐ない限りだ…いや、しかし…
「もうそんなに叫ぶんじゃない。」
守り切ったと言ってくれた。
俺のために、倒れそうな身体をおして立ち向かってくれた。
この若者に、これだけは伝えなければ。
俺の、最後の使命として…。
「こっちにおいで、最後に少し話をしよう」
腹に力が入らない…もう全集中の呼吸は難しいな。
だが、まだ話すことは出来る。ありがたい。
「弟の千寿郎には自分の心のまま正しいと思う道を進むよう伝えて欲しい。
父には体を大切にして欲しいと。それから澪には…
…いや、…良い。」
澪は…大丈夫だ。
彼女は強い女性だ。幼き頃から、覚悟を持っていた。
『杏寿郎さん、私は。私は鬼殺隊炎柱、煉獄杏寿郎の妻ですよ?
これくらいのことで狼狽えたりはしません。』
たくさん話もした。一瞬、一瞬をこれが最後の瞬間かもしれないと思いながら、
いつも隣で生きてきた。
だからこそ、いつ離れることになっても後悔がないよう、
想いはすべて伝えていた。
感謝している。誰よりも。
『澪、ありがとう!君が居てくれて良かった!』
『私だってそう思ってますよ、杏寿郎さん。』
幸せに生きて欲しい。いつでも、いつまでも。
『俺はいつも君には幸せでいてもらいたいんだ!澪!』
『そうお思いでしたら、その木刀を今すぐ床に置いて下さいな杏寿郎さん。あなた今、右腕を骨折しているんですからね。あなたが今一刻だけでも大人しく休んでくださったら私は幸せを感じますよ。』
泣かないでほしい。もう拭ってやることはできないから。
『澪…いい加減、涙を止めてくれないか!目が溶けてしまいそうだ!』
『…グスッ…、目が溶けるなどと…ッ。そんなことは、あり、ません!私は、鬼ではないのですよ!』
だから今、この時。
彼女に遺すべき言葉はない。
「れん、煉獄さんっ…?」
『言わずとも分かっています。それがあなたの使命ですから。私の、大切な旦那様の、大切な使命です。…ね、杏寿郎さん?』
そうだ。そうだな。
今が、最後の使命を果たす時だ。
この若者に伝えるべきことは何だ。
最後は、彼のために。
「…俺は信じる。君たちを信じる。」
「っ…」
だから、
胸を張り、真っすぐに生きて欲しい。
心を燃やし、負けないでほしい…誰もが持つ内なる弱さに屈しないで欲しい。
戦い抜いて欲しい、少年自らの願いと使命のために。
あぁ…母上。
見て下さい、この少年の心を。
今はまだ、小さな火かも知れませんが、いずれ大きく燃える炎となってくれるでしょう。
希望溢れる金赤の輝きです。
夜明けが、まいります。
金赤の夜明け
……っ、去った、か…?
かなうことなら、刺し違えてでも滅したかったところだな…
誠に不甲斐ない限りだ…いや、しかし…
「もうそんなに叫ぶんじゃない。」
守り切ったと言ってくれた。
俺のために、倒れそうな身体をおして立ち向かってくれた。
この若者に、これだけは伝えなければ。
俺の、最後の使命として…。
「こっちにおいで、最後に少し話をしよう」
腹に力が入らない…もう全集中の呼吸は難しいな。
だが、まだ話すことは出来る。ありがたい。
「弟の千寿郎には自分の心のまま正しいと思う道を進むよう伝えて欲しい。
父には体を大切にして欲しいと。それから澪には…
…いや、…良い。」
澪は…大丈夫だ。
彼女は強い女性だ。幼き頃から、覚悟を持っていた。
『杏寿郎さん、私は。私は鬼殺隊炎柱、煉獄杏寿郎の妻ですよ?
これくらいのことで狼狽えたりはしません。』
たくさん話もした。一瞬、一瞬をこれが最後の瞬間かもしれないと思いながら、
いつも隣で生きてきた。
だからこそ、いつ離れることになっても後悔がないよう、
想いはすべて伝えていた。
感謝している。誰よりも。
『澪、ありがとう!君が居てくれて良かった!』
『私だってそう思ってますよ、杏寿郎さん。』
幸せに生きて欲しい。いつでも、いつまでも。
『俺はいつも君には幸せでいてもらいたいんだ!澪!』
『そうお思いでしたら、その木刀を今すぐ床に置いて下さいな杏寿郎さん。あなた今、右腕を骨折しているんですからね。あなたが今一刻だけでも大人しく休んでくださったら私は幸せを感じますよ。』
泣かないでほしい。もう拭ってやることはできないから。
『澪…いい加減、涙を止めてくれないか!目が溶けてしまいそうだ!』
『…グスッ…、目が溶けるなどと…ッ。そんなことは、あり、ません!私は、鬼ではないのですよ!』
だから今、この時。
彼女に遺すべき言葉はない。
「れん、煉獄さんっ…?」
『言わずとも分かっています。それがあなたの使命ですから。私の、大切な旦那様の、大切な使命です。…ね、杏寿郎さん?』
そうだ。そうだな。
今が、最後の使命を果たす時だ。
この若者に伝えるべきことは何だ。
最後は、彼のために。
「…俺は信じる。君たちを信じる。」
「っ…」
だから、
胸を張り、真っすぐに生きて欲しい。
心を燃やし、負けないでほしい…誰もが持つ内なる弱さに屈しないで欲しい。
戦い抜いて欲しい、少年自らの願いと使命のために。
あぁ…母上。
見て下さい、この少年の心を。
今はまだ、小さな火かも知れませんが、いずれ大きく燃える炎となってくれるでしょう。
希望溢れる金赤の輝きです。
夜明けが、まいります。
金赤の夜明け