若草の決意
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「じゃあ二人とも、寄り道せずに気を付けて帰るんだよ!」
店主に見送られて、澪と手をつないだまま
家に戻る道を行く。
前回、澪が家に来た時にいなかった父上が、
その時どんなにんむをしていたか聞かせてもらった内容を澪に話しながら
町を抜け、川原沿いの道を歩いているとどこからか「みぎゃーーー」という
鳴き声が聞こえてきた。
「っきょうじゅろう兄さま!猫さんが…っ、いたいって言ってる!」
青ざめて泣きそうな顔で澪があたりを見回す。
同じように鳴き声のした方を探すと、俺より少し年上の少年
二、三人が猫を押さえつけながら棒切れでその小さな体をなぶっている姿が見えた。
「…っ!」
目に入ってすぐにそちらへ走りかけて、直後に
ずっとにぎっている手のぬくもりを思い出して、止まる。
と同時に、スルッとその手のぬくもりがはなれていった。
「っ兄さま!」
「澪はここを動くな!」
もうひとつの手に持っていた茶を澪に預け、すぐに駆け出す。
「…止めろっ!!」
「…うわぁっ!!」
猫を押さえつけていた者に一番に体当たりすると
あっさりと手が外れ、
押さえつけられていた猫はすぐに逃げ出しあっという間に姿が見えなくなる。
「ってぇ…、おい!お前なにするんだよ!?」
「それはこちらが問いたい!なぜあんなに小さきものを痛めつける必要があるんだ!」
「あぁ!?お前なんなんだよ!」
「ぉい、こいつ…」
「あぁそうだ、あの…」
「あぁ何かよく分からねぇけど、鬼狩りとかっておかしな家の、」
「変な着物着て刀持ってる親父がいる、」
「変な着物、ではない!あれは鬼殺隊の隊服で、」
「うるせぇな!なんだよ、“きさつたい”って!大体あの親父もお前も変な髪して…っ」
「そうだよ、何だよその髪と目!気持ち悪いんだよ!」
「鬼狩りとか言って、お前らの方が鬼みたいじゃねぇか!」
「…っなんだと!?」
口々に文句を言ってくる少年たち。
俺や父上の見た目が普通の人と違うことは分かっていた。
大昔はそういう見た目の違う者たちのことを総称して「鬼」と呼んでいたことが
あったことも知っている。
明治以降、外つ国の異人も来るようになったが、異人を町人たちが見慣れているわけではない。
それでも、自分や父上のことを「鬼」などと…っ!
「やめて!兄さまは鬼なんかじゃないもの!!」
「…澪!」
あの場を動くなと言ったはずの澪が、俺よりも身体の大きな少年に向かっている。
「鬼はにんげんを食べたり、ひどいことをするの!鬼がなにかしらないくせにっ…猫をいじめたあなたたちの方が鬼みたい!」
「あぁ?なんだよ、このチビ!」
ッドン!
「きゃあっ!」
「おい、澪に何するんだ!!」
「うるせぇな、大体お前らがっ…」
少年の一人に肩をおされ、尻餅をついた澪を見て頭に血が昇る。
さらに澪と俺に近付こうとする少年たちを見て、澪を守らなければ…と
なりふり構わずに向かっていこうとした時、
「…そこまでだ。」
「…!?」
澪の方に向かっていた少年の腕を掴んだのは、父上だった。