若紫の恋恥
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澪の小さな手から、針と父の隊服を慎重に抜き
部屋へ運ぶために横抱きで抱き上げる。
「…ん、」
「…っ」
起こしてしまっただろうか?としばらく固まるが
少し身じろぎした澪は、
そのまますやすやと眠っている。
…ほっと息をつき、澪の部屋へ向かう。
(…温かいな。)
図らずも、その温もりに先ほど思い出したばかりの
あの夜のことを再度想った。
『君が居てくれて良かった!』
あの夜伝えたその想いは、日を追うごとに強く
深くなっていく。
(愛いなぁ…。)
この腕に感じる重み、
そして温もり。
すぅすぅという息遣いですら、ただただ、愛おしい。
部屋に着き、布団にその身をおろす。
その際に、目にかかってしまった
前髪を払ってやりながら、柔らかな頬に触れる。
(…いつも、ありがとう澪。)
明日は体を休ませられるよう、
千寿郎と澪と三人で、外で食事をしようか…と
考えながら、
自分の部屋へ向かうため立ち上がった時、
「ん…きょうじゅろぅさん…、」
と呼ぶ声が聞こえた。
まさか今度こそ起こしてしまったか…!?と
見下ろすが、澪は目を閉じ眠ったままだ。
「なんだ、寝言か…。」
…ん?寝言…?
「っ!よ、よもやっ…//////」
寝言で自分の名前を呼ぶということは、
澪の夢の中に自分がいるということで…
気付いたその事実が思った以上に気恥ずかしく、
頬に熱が灯り、
慌てて足音を立てないようにしながら
逃げるように自分の部屋へと戻った。
そんな俺を、先ほどの蛍が
ふわ、んと
楽し気に見ているかのように
庭を舞っていたが、
羞恥で頭がいっぱいの俺はすでに蛍の存在を忘れていた。
若紫の恋恥