珊瑚の祈り
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*おまけ*
「あ、そうだわ!蛤の吸い物もお義父様にはぜひ召し上がっていただかなくては!!」
「えっ…あ、兄上ではなく父上ですか!?」
「…?何をそんなに驚くの、千寿郎…」
「いや、だって義姉上は兄上の妻になるのでは…っ!?/////」
「…。…あぁ!」
やたらと赤面している千寿郎を見つめながら、
しばし考えていた澪は
合点がいったようにポンと手を打つ。
「嫌だ、千寿郎。そっちの意味じゃないわよ。クスクス…」
「え…?夫婦円満以外の意味があるのですか?」
「意味というか、蛤には御酒を醒ます効果もあるのですよ。だから、是非!お義父様にも召し上がって頂きましょうね!」
「蛤にはそんな効果もあるのですね。知りませんでした…。」
桃の節句に食す蛤の吸い物は、
合わせの貝しかぴたっとはまることが決してない蛤のように、
女子が一人の伴侶と末永く続きますように、
将来良い夫婦となれますように…
という願いを込めるという意味がある。
数年前の初めての節句の時も、
お義母様がしつこいくらいお義父様に「蛤の用意を忘れないように」とか
「良い蛤を手に入れてくるように」と言い付けていらっしゃったのを思い出して
クスクスと笑いが零れる。
辟易としたお義父様が、仕入れの良い問屋に、
今後私が祝言をするまでの年数分
「その年の一等良い蛤を卸してほしい」と依頼して
一括で代金をお支払いなさったのよね。
だから、今日の吸い物に入っている蛤も、
その問屋が「今年の分だよ」と届けて下さった分だ。
昨年あたりからは
「もうそろそろこの役目もお役御免かねぇ~祝言が決まったら教えてくれよ!その時は祝言に出すに相応しい蛤手に入れてみせるからよっ」
というひと言も付くようになった。
実際、桃の節句用としてその問屋から蛤を仕入れたのはその年が最後となり、
約束通り、祝言の祝い膳には身のふっくらした問屋渾身の蛤が並んだ。
だが、それ以降も千寿郎が父の酒醒まし用として定期的に蛤を仕入れていたため、
その問屋は煉獄家御用達のままお役御免にはならなかったのである。