露草の慈愛
お名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はいよ、澪ちゃん。これが味噌で、これはおまけだ。」
「おまけ?…あ!ぼうろだ!これ千寿郎が大好きなのよ!」
「そうかそうか!それは良かった。多めにあげるから、杏ちゃんと千ちゃんと三人で仲良くお食べ。」
「いいの!?三河屋のおじ様!ありがとう!!」
「…澪ちゃん!澪ちゃん!!」
「…?」
千寿郎の大好きなお菓子をおまけでもらえて、嬉しくてほくほくしていると
お向かいの二軒隣にある海苔問屋の奥様の呼ぶ声がした。
何だろう…?と振り返った私の目に、バサッと翻る炎が飛び込んでくる。
「…お義父様!」
「…今、戻った。」
昨日のお昼過ぎから任務に出ていたお義父様がいらっしゃった。
「お帰りなさい!!お疲れ様でした。お怪我はありませんか?」
「あぁ問題ない。…買い物か?」
「良かったです!はい、今お味噌を…、…あ!お義父様!見て下さい、三河屋さんがぼうろをおまけにと下さったんです!」
風に煽られてなびく、歴代炎柱が引き継いできた羽織には薄っすらと汚れは見えるが
問題ないと仰る通りお義父様には特にお怪我は無さそうで安心した。
たった今、頂いたおまけの話をにこにこと満面の笑みでお伝えする。
…フッ
「…そうか」
ポンポン
あまりにも満面の笑みだったからなのか、少し眉を下げて微笑ったお義父様は
私の頭を撫でながら三河屋さんに向き直って頭を下げる。
「いつも世話になっている。菓子の代金は俺が払おう。」
「へ!?いやいや!止めておくれよ、煉獄さん!いつもここらを守ってくれてるんだから頭を下げるのはこっちだし、それに…これはいつも元気に頑張っている子どもたちへのご褒美ですから!!」
「いや、しかし…」
「いーんですって!遠慮なく受け取って下せぇ。その代わり、今後も贔屓にしてくれりゃあそれだけでうちはいいんだから!今後も来てくれるだろ?なぁ、澪ちゃん?」
「うん!お味噌は三河屋さんのが一等美味しいし、いろいろ新しい品が多いから来るだけでも楽しいもの!」
「へへ、澪ちゃんは嬉しいこと言ってくれるねぇ~。」
…ッドドーン!!
「ひゃあっ!!」
「…来たか。」
三河屋さんとお互いににこにこしながら会話していると、
光と共に轟音が鳴り響いた。
「雷ですかぃ?さっきまで、ようやく久方ぶりの晴れ間だったってぇのに…」
「半刻ほど前から西の方に黒い雲があった。昨日までの雨とは違い、通り雨だろう。」
「そうか…ようやく梅雨から、本格的な夏に様変わりかねぇ…」
「澪、傘は持ってきたか?」
「すみません…家を出る時は晴れていたので持ってきておりません…。」
ボタッ…ボタボタボタボタッ
ッザーーーーーーー
そうこうしているうちに、激しい雨も降り始めた。
「わぁ…すごい雨ですね…。」
「全くだねぇ…でもこの降り方じゃあ煉獄さんの言う通り、通り雨ですぐ止むだろうね。
お二人とも、このままうちで雨宿りしてい…あ!そうだ、そうだ!うちと軒続きの隣の甘味屋でつい昨日から水ようかん始めたって言ってたから二人でそれ食べってったらいいよ!今日は暑いし!ね、煉獄さん…」
「?」
「ちょっと…(ごにょごにょごにょ)」
?
私が軒先で雨に濡れないようにしながら空の様子を見ていたら、
三河屋さんが何やらお義父様に耳打ちをしていた。
「(煉獄さん、さっきあげた菓子だけどよ。きっと澪ちゃんのことだからぜーんぶ千ちゃんにあげちゃうと思うんだよ。千ちゃんの大好きな菓子だって言ってたからさぁ。)」
「…。」
「(だから、いつも小っちゃい体で頑張ってる澪ちゃんに甘味でもご馳走してやんなよ。せっかくまたとない機会だ、雨宿りって言やぁ澪ちゃんだって遠慮なく楽しめるだろう?)」
「…あい、分かった。澪、行くぞ。」
「…え、…え!?」
「良かったなぁ澪ちゃん。隣の親父さんの自信作だって言ってたから存分に味わってきな!」
「え!?で、でもお義父様!私、帰ってお夕飯の支度を…!」
「こんな雨の中、傘無しじゃどうせ帰れねぇんだから気にすることないよ、なぁ煉獄さん!」
「そうだな。…ホラ、行くぞ。」
「え、えぇえ~…??」
「いってらっしゃい!!」