一斤染の自覚
お名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
杏寿郎兄さまのお父様、槇寿郎様は現炎柱だ。
いつもお忙しくて、杏寿郎兄さまのところへ遊びに来ても、お会いできないことの方が多い。
三人いる私の兄上様のうち、二の兄上様以外のふたりも鬼狩りだけど、
三の兄上様など昨夜だって、その前の夜だってお家にいらっしゃったのに。
まだもっと小さかった頃に「どうして?」って兄上様に聞いたら、笑いながら「お前なぁ…炎柱様と比べるなよ。俺はまだ辛で兄上だってようやく丙になったばかりなんだからな。」と仰っていた。
私のお家は、お祖父様も、叔父様も、そして兄上様たちも鬼狩りだけれど、みんなが鬼狩りになるわけじゃない。私のお父様は、商いをしていて、いろいろな品物を鬼殺隊へお渡ししている。だから家には隠の方々がたくさんいらっしゃるの。
隠って格好いいの!まるで忍みたいなのよ!
いつも布で顔を隠していて、ときどき信じられないくらい大きな荷物を軽々運んで下さるの。私がすごい、すごい!と手を叩いて喜ぶと、みなさん唯一見えるお目元をふわっと緩めて頭を撫でて下さるのよ!
あ、私のお家の話の途中だったわ。
お父様はお品のことで遠出なさる時はあるけど、その時以外はいつもお家にいて下さる。
二の兄上様もお父様の後を継ぐためといって、基本はお家にいて下さる。だから少しも寂しくないの。
兄上様方も槇寿郎様ほどお家にいらっしゃらないことはないし…それだけ柱ってとても大変で大切なお役目なのね。
実は、私のお祖父様は先々代の風柱だったと聞いたけど、早くに足を悪くされて継子であった方にお譲りになったんですって。だから私はお祖父様が柱だった時のことを覚えていないの。
『俺も将来は父上のように立派な柱になるんだ!』
杏寿郎兄さまはそう言って、いつもいつも鍛錬をなさっている。
私が遊びに来たときは、いっしょにおやつを食べたり、近所の川で川遊びをして下さったりすることもあるけど
それよりも杏寿郎兄さまが剣を振る姿を眺めていることの方が多くて、私はいつも少し寂しい。
杏寿郎兄さまが目標にされていることだから、もちろん応援しているけど
杏寿郎兄さまが柱になったら、今よりももっともっと一緒に遊んで下さることも
お会いできることも少なくなってしまうのかな?って想像したら、
もっと寂しくなって、私は心にもやがかかったみたいになる。
「…澪、…澪!…どうしました?具合が悪いのですか?」
「あ、すみません。瑠火様!少しぼんやりしてしまっただけです!」
「今朝は少し冷えたから、風邪でもひいたのではないですか?」
「いえ、元気です!」
「それなら良いのですが…具合が悪いようでしたらすぐに言うのですよ。」
あわわ…瑠火様が、すごく真剣な顔で心配して下さっていて申し訳ない。
少しぼんやり考え事してしまっただけなのに。
でも、嬉しいな。だってまるで…
「…お母様みたい。」
「え?」
「…あ!ごめんなさい!そんな風に心配して下さって…まるで瑠火様がお母様みたいだなって思ってしまいましたっ…」
「…。」
は、恥ずかしいっ!瑠火様はお優しいから、そう言って下さっただけなのに!
私のお母様は、私を産んだ少し後に亡くなったから、私はお母様を知らない。
うんと小さい頃はお祖母様が、お祖母様が亡くなった後はお姉様とお義姉様が私の母代わりとしていろいろと面倒を見て下さっていた。
(そういえば、お姉様お元気かな。)
お姉様は昨年、お父様のお仕事のお相手に見初められてお嫁に行ったのだ。
「澪は…」
「はい?」
絶対に赤くなってしまっているだろう頬を手で隠しながら、隣の瑠火様を見上げると
瑠火様がすごく真剣なお顔で私を見下ろしている。
「…澪は、私が母となるとしたらどう思いますか?」
え…?
瑠火様は、今なんと…?