君と始める季節-side杏寿郎
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君と始める季節-side杏寿郎
杏寿郎は鮮やかな花々を前にして、
とても満ち足りていた。
去年、見ることが出来なかった花を
今年は澪とこうして並んでみることが出来ている。
澪に想いを告げ、改めて恋人になってしばらく後
またしてもチューリップの球根を植える澪の白い手を見た時から
ずっと『咲いたら必ず教えて欲しい』と言い続けてきた。
今日、剣道部の練習が終わり、
汗を拭くタオルを取り出そうとした際に点滅するスマートフォンに気付いた。
開くと、澪から『待望のチューリップ、綺麗に咲いたよ。』という
メッセージを受信していて、それからすぐにここへ向かって走って来たのだ。
ぐりん
「…今年は澪と一緒に見ることが出来て良かった!」
「…うん、そうだね。」
隣の澪へ向き直り、そう告げると
澪は穏やかに微笑った。
こうして共に花を見ることが出来たことで、
改めて恋人という関係を始めることが出来たような気分だ。
(それにしても…自惚れてしまいそうになる色合わせだ。)
目の端に、黄色と赤の花を捉えながら
そんな自分の思考回路を気恥ずかしく感じて、
慌てて澪に次は何を植える予定なのかという話題を振る。
「茄子か!それは良いな!」
去年のミニトマトは実った時期どころか実ったのかどうかも知らない。
去年のあれこれを思い返すと惜しい気もするが、
去年のことがあったからこそ気付けたこともある。
(今年の茄子の収穫は、きっと一緒に出来るだろう。)
去年と違い、そう思えることが
当たり前のように澪と共にある次の季節を思えることが
こんなにも尊い、ということに。
「澪は、もう行けるか?」
「あ、あとは1つ隣の花壇だけ終われば行けるよ。杏寿郎くん、着替えるでしょう?」
「そうだな!すぐに戻る!」
「うん、待ってるね。」
今日は道場が午後から空手部の練習試合で占拠されることになっており
剣道部は午前中のみの練習だった。
ちょうど良く、澪の当番と重なったので、
元々ここで待ち合わせ、共に杏寿郎の家へ向かう約束をしていた。
昨夜、明日澪が来ると知って、喜んでいた千寿郎の顔が思い浮かんだ。
去年、会う機会が減ってしまったことで
寂しがっていた千寿郎だったが、
最近はまた澪と会う機会が増え、とても楽しそうにしている。
(それも山田のおかげだな!)
自分の気持ちに気付かせてくれたクラスメイトを思い浮かべたことで
そういえば…と、数日前に山田から聞いた話を杏寿郎は思い出し
着替えるために道場の方へ戻ろうとしていた足を止める。
「…澪、今年同じクラスになって嬉しかったというのは誰のことだ?」
「…えっ!?」
始業式の日、
クラス発表の掲示板の前で
澪が『同じクラスだ』と呟きながら嬉しそうにしていた、という話を
山田から聞いたのだ。
誰のことをそう言っていたのかと尋ねたら、山田がなぜか
『キミにだけはぜったい教えない!』と怒り始めたので
それ以上は聞けなかったのだ。
「そ、それは…その、…」
「?」
「~っ、き、杏寿郎くんだよ、…//////」
「…俺?」
少し意外に思って、思わず聞き返す。
澪とは、中等部1、2年で同じクラスだったが
それ以降は別のクラスだった。
あの期間限定の恋人だった期間のうちのほとんどと
去年改めて恋人となってからの半年間もずっと別のクラスだ。
だが、同じクラスだとしても教室内で話す機会はそれほど多くない。
授業中はもちろん、
休み時間も基本的には互いに同性の友人と話したり
行動をすることが多い。
別にそのようにしようと話して決めたわけでもなく
自然とそうなるのだ。
だから、澪が自分と同じクラスになりたいと思ってくれていたということが
杏寿郎には少し意外だった。
「だって、その…今年は…修学旅行があるでしょう?だから…高等部の修学旅行は杏寿郎くんと同じクラスで行けたらいいな、そうしたら絶対素敵な思い出になるだろうなって思ったの…//////」
「…っ、」
(本当に…澪のこういう不意打ちには参ってしまう…)
恥ずかしそうに視線を彷徨わせながら言った澪の言葉と
その表情に、思わず頭を抱えそうになった。
目の前の花壇を彩る花の色もそうだ。
普段、ストレートに想いを告げてくれるわけではない彼女だが
無意識の言動や、
こういった不意に告げられる言葉の中に
自分へと向かう気持ちを確かに感じ取ることが出来て
愛おしい気持ちが溢れて堪らなくなる。
自然と少し熱くなる頬の熱を誤魔化すように、
その溢れる気持ちのまま、
杏寿郎が澪の方へ身体を屈め、
2人の影が重なった。
(夏も、秋も、冬も、当たり前に君の傍にいる未来は確かに絶対良い想い出になるだろうな。)
ゴトッと音を立てながら
澪の持っていた如雨露が足元に落ちる音を聞きながら
杏寿郎はそう思った。
杏寿郎は鮮やかな花々を前にして、
とても満ち足りていた。
去年、見ることが出来なかった花を
今年は澪とこうして並んでみることが出来ている。
澪に想いを告げ、改めて恋人になってしばらく後
またしてもチューリップの球根を植える澪の白い手を見た時から
ずっと『咲いたら必ず教えて欲しい』と言い続けてきた。
今日、剣道部の練習が終わり、
汗を拭くタオルを取り出そうとした際に点滅するスマートフォンに気付いた。
開くと、澪から『待望のチューリップ、綺麗に咲いたよ。』という
メッセージを受信していて、それからすぐにここへ向かって走って来たのだ。
ぐりん
「…今年は澪と一緒に見ることが出来て良かった!」
「…うん、そうだね。」
隣の澪へ向き直り、そう告げると
澪は穏やかに微笑った。
こうして共に花を見ることが出来たことで、
改めて恋人という関係を始めることが出来たような気分だ。
(それにしても…自惚れてしまいそうになる色合わせだ。)
目の端に、黄色と赤の花を捉えながら
そんな自分の思考回路を気恥ずかしく感じて、
慌てて澪に次は何を植える予定なのかという話題を振る。
「茄子か!それは良いな!」
去年のミニトマトは実った時期どころか実ったのかどうかも知らない。
去年のあれこれを思い返すと惜しい気もするが、
去年のことがあったからこそ気付けたこともある。
(今年の茄子の収穫は、きっと一緒に出来るだろう。)
去年と違い、そう思えることが
当たり前のように澪と共にある次の季節を思えることが
こんなにも尊い、ということに。
「澪は、もう行けるか?」
「あ、あとは1つ隣の花壇だけ終われば行けるよ。杏寿郎くん、着替えるでしょう?」
「そうだな!すぐに戻る!」
「うん、待ってるね。」
今日は道場が午後から空手部の練習試合で占拠されることになっており
剣道部は午前中のみの練習だった。
ちょうど良く、澪の当番と重なったので、
元々ここで待ち合わせ、共に杏寿郎の家へ向かう約束をしていた。
昨夜、明日澪が来ると知って、喜んでいた千寿郎の顔が思い浮かんだ。
去年、会う機会が減ってしまったことで
寂しがっていた千寿郎だったが、
最近はまた澪と会う機会が増え、とても楽しそうにしている。
(それも山田のおかげだな!)
自分の気持ちに気付かせてくれたクラスメイトを思い浮かべたことで
そういえば…と、数日前に山田から聞いた話を杏寿郎は思い出し
着替えるために道場の方へ戻ろうとしていた足を止める。
「…澪、今年同じクラスになって嬉しかったというのは誰のことだ?」
「…えっ!?」
始業式の日、
クラス発表の掲示板の前で
澪が『同じクラスだ』と呟きながら嬉しそうにしていた、という話を
山田から聞いたのだ。
誰のことをそう言っていたのかと尋ねたら、山田がなぜか
『キミにだけはぜったい教えない!』と怒り始めたので
それ以上は聞けなかったのだ。
「そ、それは…その、…」
「?」
「~っ、き、杏寿郎くんだよ、…//////」
「…俺?」
少し意外に思って、思わず聞き返す。
澪とは、中等部1、2年で同じクラスだったが
それ以降は別のクラスだった。
あの期間限定の恋人だった期間のうちのほとんどと
去年改めて恋人となってからの半年間もずっと別のクラスだ。
だが、同じクラスだとしても教室内で話す機会はそれほど多くない。
授業中はもちろん、
休み時間も基本的には互いに同性の友人と話したり
行動をすることが多い。
別にそのようにしようと話して決めたわけでもなく
自然とそうなるのだ。
だから、澪が自分と同じクラスになりたいと思ってくれていたということが
杏寿郎には少し意外だった。
「だって、その…今年は…修学旅行があるでしょう?だから…高等部の修学旅行は杏寿郎くんと同じクラスで行けたらいいな、そうしたら絶対素敵な思い出になるだろうなって思ったの…//////」
「…っ、」
(本当に…澪のこういう不意打ちには参ってしまう…)
恥ずかしそうに視線を彷徨わせながら言った澪の言葉と
その表情に、思わず頭を抱えそうになった。
目の前の花壇を彩る花の色もそうだ。
普段、ストレートに想いを告げてくれるわけではない彼女だが
無意識の言動や、
こういった不意に告げられる言葉の中に
自分へと向かう気持ちを確かに感じ取ることが出来て
愛おしい気持ちが溢れて堪らなくなる。
自然と少し熱くなる頬の熱を誤魔化すように、
その溢れる気持ちのまま、
杏寿郎が澪の方へ身体を屈め、
2人の影が重なった。
(夏も、秋も、冬も、当たり前に君の傍にいる未来は確かに絶対良い想い出になるだろうな。)
ゴトッと音を立てながら
澪の持っていた如雨露が足元に落ちる音を聞きながら
杏寿郎はそう思った。