君と始める季節-side主人公
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君と始める季節-side澪
タッタッタッタッタッ
遠くの方からこちらへ向かってくる足音を耳に捉え、
澪はふんわりと笑みを浮かべた。
傾けていた如雨露を水平に戻して振り返る。
「澪!」
「おはよう、杏寿郎くん。」
「どちらかと言うと、こんにちはだな!」
手元の腕時計をチラリと見ながら、
(それもそうだな)と澪は思った。
土曜日の11時を少し回った時間、
遠くのグラウンドでは野球部、陸上部が
部活動に勤しむ声が聞こえてくるが、間にある校舎に阻まれて姿は見えない。
「もう部活、終わったの?」
「あぁ、午後からの準備があるからと追い出されてしまった!それより…、うむ!綺麗に咲いたな!!」
「うん…今年は少しのんびりだったかな。」
目の前には、杏寿郎がやたらと見るのをこだわっていた
チューリップが鮮やかな黄と赤で綺麗に咲き開いていた。
その様子を、隣で満足そうに眺める杏寿郎を澪は盗み見る。
去年の秋、
もう1度杏寿郎の恋人になることが出来てしばらく経った頃に
去年取っておいた球根を埋めた時からずっと
『咲いたらすぐに教えて欲しい!』と言われ続けていた。
咲くのは春だと言っているのに、
まだコートが必須な時季から1~2週間に1回は
『まだ咲いていないか!?」と確認されるのに辟易しながら
『そんなにチューリップ好きだったの?』と尋ねたことがある。
『いや別に特別好きでも嫌いでもないな!』とあっさり宣った
杏寿郎に、それなら何故そんなにこだわるのか?と
澪がポカンとしていると、その理由を教えてくれた。
『澪から咲いたということを教えてもらわず、見逃してしまった初めての花なんだ。それが存外寂しかったからな、今年は絶対に見たい!』
(ダメだ…また思い出しちゃった。…今、私、絶対顔赤い…//////)
まさかそんな小さな出来事を、
杏寿郎が寂しいと想ってくれていたなんて…
面と向かって好きだと言われた時よりも何だか気恥ずかしく
あの時のことを思い出して油断すると澪はすぐ顔が熱くなる。
何度も何度も念押しされた約束通り、
1時間ほど前に園芸部の水やり当番で登校した際に
花開いたチューリップを目に映した澪は
その場で杏寿郎にメッセージを送った。
『待望のチューリップ、綺麗に咲いたよ。』
剣道部の練習が終わり、メッセージを見た瞬間に
走ってこちらにやって来たのだろう、杏寿郎はまだ道着のままだった。
ぐりん
「っ、」
花壇を見つめていた杏寿郎が、澪の方へ向き直り
自然杏寿郎を盗み見ていた澪と視線がぶつかる。
「…今年は澪と一緒に見ることが出来て良かった!」
「…うん、そうだね。」
真っすぐな視線と、真っすぐな言葉に
最早照れる隙すら見つけられない。
「この後は、今年もミニトマトか?」
「うーん…今年は茄子に挑戦してみようかなぁ…」
「茄子か!それは良いな!」
去年、春から夏に向けては
ミニトマトを育てていたこともしっかり記憶してくれている
杏寿郎に、澪は気持ちがもぞもぞした。
(本当に…杏寿郎くんって、こういうところがズルいんだよなぁ…)
せっかく堪えたのに、
また頬に熱が集まりそうだ。
茄子が育ち、秋に花咲く品種の花をまた2人でこうして眺め
そうしてまた、チューリップを植える頃になれば
こうして杏寿郎から向けられる想いに
もっと慣れることが出来ているだろうか?
(あぁ、今年は一緒に花火見られたらいいな…)
ずっと言われ続けた春の約束を果たし、
澪の心はすでに杏寿郎と過ごせる次の季節へ向かっていった。
タッタッタッタッタッ
遠くの方からこちらへ向かってくる足音を耳に捉え、
澪はふんわりと笑みを浮かべた。
傾けていた如雨露を水平に戻して振り返る。
「澪!」
「おはよう、杏寿郎くん。」
「どちらかと言うと、こんにちはだな!」
手元の腕時計をチラリと見ながら、
(それもそうだな)と澪は思った。
土曜日の11時を少し回った時間、
遠くのグラウンドでは野球部、陸上部が
部活動に勤しむ声が聞こえてくるが、間にある校舎に阻まれて姿は見えない。
「もう部活、終わったの?」
「あぁ、午後からの準備があるからと追い出されてしまった!それより…、うむ!綺麗に咲いたな!!」
「うん…今年は少しのんびりだったかな。」
目の前には、杏寿郎がやたらと見るのをこだわっていた
チューリップが鮮やかな黄と赤で綺麗に咲き開いていた。
その様子を、隣で満足そうに眺める杏寿郎を澪は盗み見る。
去年の秋、
もう1度杏寿郎の恋人になることが出来てしばらく経った頃に
去年取っておいた球根を埋めた時からずっと
『咲いたらすぐに教えて欲しい!』と言われ続けていた。
咲くのは春だと言っているのに、
まだコートが必須な時季から1~2週間に1回は
『まだ咲いていないか!?」と確認されるのに辟易しながら
『そんなにチューリップ好きだったの?』と尋ねたことがある。
『いや別に特別好きでも嫌いでもないな!』とあっさり宣った
杏寿郎に、それなら何故そんなにこだわるのか?と
澪がポカンとしていると、その理由を教えてくれた。
『澪から咲いたということを教えてもらわず、見逃してしまった初めての花なんだ。それが存外寂しかったからな、今年は絶対に見たい!』
(ダメだ…また思い出しちゃった。…今、私、絶対顔赤い…//////)
まさかそんな小さな出来事を、
杏寿郎が寂しいと想ってくれていたなんて…
面と向かって好きだと言われた時よりも何だか気恥ずかしく
あの時のことを思い出して油断すると澪はすぐ顔が熱くなる。
何度も何度も念押しされた約束通り、
1時間ほど前に園芸部の水やり当番で登校した際に
花開いたチューリップを目に映した澪は
その場で杏寿郎にメッセージを送った。
『待望のチューリップ、綺麗に咲いたよ。』
剣道部の練習が終わり、メッセージを見た瞬間に
走ってこちらにやって来たのだろう、杏寿郎はまだ道着のままだった。
ぐりん
「っ、」
花壇を見つめていた杏寿郎が、澪の方へ向き直り
自然杏寿郎を盗み見ていた澪と視線がぶつかる。
「…今年は澪と一緒に見ることが出来て良かった!」
「…うん、そうだね。」
真っすぐな視線と、真っすぐな言葉に
最早照れる隙すら見つけられない。
「この後は、今年もミニトマトか?」
「うーん…今年は茄子に挑戦してみようかなぁ…」
「茄子か!それは良いな!」
去年、春から夏に向けては
ミニトマトを育てていたこともしっかり記憶してくれている
杏寿郎に、澪は気持ちがもぞもぞした。
(本当に…杏寿郎くんって、こういうところがズルいんだよなぁ…)
せっかく堪えたのに、
また頬に熱が集まりそうだ。
茄子が育ち、秋に花咲く品種の花をまた2人でこうして眺め
そうしてまた、チューリップを植える頃になれば
こうして杏寿郎から向けられる想いに
もっと慣れることが出来ているだろうか?
(あぁ、今年は一緒に花火見られたらいいな…)
ずっと言われ続けた春の約束を果たし、
澪の心はすでに杏寿郎と過ごせる次の季節へ向かっていった。