約束の始まり
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約束の恋人_約束の始まり
澪が杏寿郎に告白をしたのは、中学2年の夏休み明けすぐのことだ。
杏寿郎は、はじめ断りの返事をした。
彼は明るく快闊で、
誰に対しても分け隔てなく接し、
面倒見もよく優しい少年だったので
彼に想いを告げる女子生徒はそれなりの数存在したが
彼にとって1番大切なのは家族であり、
次に剣道、勉学、友…と
それらに誠実に向き合っていた彼には「彼女」という存在を必要としていなかった。
「彼女」になってほしいと望むほどの恋心というのを
誰かに抱いたことも無かったし、
正直そういったことに時間を取られるよりは、
部活動や鍛錬、友と過ごす時間を大切にしたいと思っていたくらいだった。
そしてそれは、相手が学園三大美女である瀬尾澪であっても同じだったのである。
「瀬尾、君の気持ちはありがたく嬉しいが、今は恋人を作るつもりはないから気持ちには答えられない、すまない!」
澪は、慎重かつ聡い女の子だった。
彼女が杏寿郎に恋心を抱いたのは、
中学に入学してすぐの頃のことだ。
同じクラスで、隣の席になった際に彼を好ましく想うようになった。
そしてすぐに、彼が誰に対しても分け隔てなく振る舞うことにも気付いた。
杏寿郎は誰とでも親しくなり、
誰からも好かれる性質だが、
いい意味でも悪い意味でも彼は誰に対しても平等、なのだ。
しばらくは澪も、より親しくなれるように頑張った。
だがどんなに頑張ってもダメだった。
こんなに頑張っている澪であっても、
いつも杏寿郎の側にいる男友達であっても、
誰も杏寿郎の「特別」にはなれない。
それは、やがて澪が「学園三大美女」と呼ばれるようになっても変わらなかった。
彼の「特別」はいつも、家族や剣の道だった。
だから澪は分かっていた。
普通に想いを告げても、断られるだろうということを。
そこで彼女は、想いを告げるだけでなく、
ある提案を杏寿郎にした。
「ねぇ、煉獄くんは今、恋人を作るつもりはないって言ったけど…それは、今は好きな人がいないから?好きな人が出来たらその気持ちって変わるの?」
「…む?それは分からないな!正直誰かのことを特別に好きだと思ったことはないからな!」
「じゃあ…今も好きな人はいないってことだよね。ねぇ、煉獄くん。1つお願いというか…提案があるんだけど…」
「ん?なんだ!」
「私もね、人を特別好きになる気持ちってよく分からなかったんだ。だけど、去年の春に煉獄くんのこと好きかもしれない、って思って…でもよく分からなかったから、今日までたくさん考えたの。」
「!?よ、よもや…そんなに前からだったのか!?////」
「えへへ、うん。1年半かけて、やっぱり好きだからちゃんと伝えようって思ったの。だから、もし今煉獄くんに好きな人がいないのなら、今日から中等部卒業までの1年半、私を煉獄くんの仮の恋人にしてくれない?そして、その期間で、私のことを好きかどうか考えてみて欲しいの。」
「仮の恋人?わざわざそのような関係にならずともこれまで通り友人として接しながら考えれば良いのではないか?それに、今恋人を作るつもりがないのは、剣道に集中したいからという理由もあるから仮とは言ってもそういう関係になることは難しいな!」
「剣道に集中するためにも、役に立つと思うよ?仮だってことを皆には秘密にしておけば、告白されるために呼び出される機会も減るし、断るときは『彼女がいるから』って断ることもできるようになるもん。」
「…、しかし。その…君は俺のことを好いてくれているのだろう?そんな…そんなことのために、君の気持ちを利用して偽りの関係になったり、周りを騙した上でそれを理由に断るようなことはするべきじゃないと思うが。」
「…あぁ、そう、だね。杏寿郎くんの言う通りだね、今のは私が間違ってた。ごめんなさい…。真剣な想いに嘘で返してしまってはダメだよね。」
「分かってくれたならそれでいい!この話はこれでお、」
「偽りの関係じゃなくて!…嘘をつくわけじゃなければ、いい?」
「?どういう意味だ…」
「仮の恋人じゃなくて…本当の恋人ならなってくれる?卒業までの1年半、期間限定で構わないから。」
「(困惑)いや、だから俺は、」
「今は剣道に集中したいから恋人を作るつもりはないって言ってたけど、煉獄くんは恋人が出来たらどうして剣道に集中出来なくなっちゃうと思っているの?」
「…む?そう改めて問われるとどう答えていいものか悩ましいが!そうだな、恋人同士は一緒に登下校したり、休日も2人で遊びに行くのが普通だと思うのだが、俺は朝も晩も休日も鍛錬に励みたいんだ。」
「なるほど…。…あのね、煉獄くん。一緒に登下校したいとか休日2人で遊びたいとか、もちろんそういうのも出来るなら楽しそうだなぁとは思うけど…。私は好きな人が頑張っていることを応援したいと思うから、その邪魔はしたくないってそう思うよ?それに、朝練もある煉獄くんと園芸部の私じゃ登校の時間は合わないし、同じように放課後も部活がある煉獄くんと、習い事している私だと下校の時間だって合わないから実際恋人になったって、一緒に登下校って難しいと思うし。」
「…それなら、瀬尾は俺と期間限定の本当の恋人になって、どういうことを求めているんだ?」
「私が期間限定の恋人としてお願いしたいのは3つだよ。下の名前で呼び合うこと。校内、校外で見かけたら必ず声を掛けて挨拶すること。そして、煉獄くんがすごく嬉しい!って思ったこと、悲しいと思ったこと、悔しかったこと、辛かったこと、楽しかったこと…そういうことを私に教えてもらいたい。そして逆に私の感じたいろんなことを聞いて欲しいの。」
「…それだけなのか?それは…、友人と何が違うんだ?」
「うーん、その3つを“意識して”やってもらいたいの。だからそれが友だちとの違い、かな。」
「…俺にはよく違いが分からんな!」
「ふふっ…私にとっては、結構違うんだけど…煉獄くんがそう思うならそれで良いよ。1年半の期間限定恋人として、その3つだけお願いしたいの。それで、1年半後に改めて、返事して欲しいっていうのが私のお願い。…ダメ、かなぁ?」
「むぅ…。…それくらいでいいのなら構わないが。」
「!え、本当!?」
「あぁ、それだけであれば友人とあまり変わらないから、わざわざ恋人という関係になる必要があるのかやっぱりよく分からないが、どちらにしろ卒業までの間で俺が恋人を作りたいと思うとは思えないからな。君が考えてくれたのと同じ期間をかけて俺も考えてみよう!」
「…あ、ありがとう!嬉しい!それなら…卒業までの1年半、よろしくね。…っ、えと、き、杏寿郎くん…!」
「っ!ぁ、あぁ宜しく頼む、澪!」
澪が杏寿郎に告白をしたのは、中学2年の夏休み明けすぐのことだ。
杏寿郎は、はじめ断りの返事をした。
彼は明るく快闊で、
誰に対しても分け隔てなく接し、
面倒見もよく優しい少年だったので
彼に想いを告げる女子生徒はそれなりの数存在したが
彼にとって1番大切なのは家族であり、
次に剣道、勉学、友…と
それらに誠実に向き合っていた彼には「彼女」という存在を必要としていなかった。
「彼女」になってほしいと望むほどの恋心というのを
誰かに抱いたことも無かったし、
正直そういったことに時間を取られるよりは、
部活動や鍛錬、友と過ごす時間を大切にしたいと思っていたくらいだった。
そしてそれは、相手が学園三大美女である瀬尾澪であっても同じだったのである。
「瀬尾、君の気持ちはありがたく嬉しいが、今は恋人を作るつもりはないから気持ちには答えられない、すまない!」
澪は、慎重かつ聡い女の子だった。
彼女が杏寿郎に恋心を抱いたのは、
中学に入学してすぐの頃のことだ。
同じクラスで、隣の席になった際に彼を好ましく想うようになった。
そしてすぐに、彼が誰に対しても分け隔てなく振る舞うことにも気付いた。
杏寿郎は誰とでも親しくなり、
誰からも好かれる性質だが、
いい意味でも悪い意味でも彼は誰に対しても平等、なのだ。
しばらくは澪も、より親しくなれるように頑張った。
だがどんなに頑張ってもダメだった。
こんなに頑張っている澪であっても、
いつも杏寿郎の側にいる男友達であっても、
誰も杏寿郎の「特別」にはなれない。
それは、やがて澪が「学園三大美女」と呼ばれるようになっても変わらなかった。
彼の「特別」はいつも、家族や剣の道だった。
だから澪は分かっていた。
普通に想いを告げても、断られるだろうということを。
そこで彼女は、想いを告げるだけでなく、
ある提案を杏寿郎にした。
「ねぇ、煉獄くんは今、恋人を作るつもりはないって言ったけど…それは、今は好きな人がいないから?好きな人が出来たらその気持ちって変わるの?」
「…む?それは分からないな!正直誰かのことを特別に好きだと思ったことはないからな!」
「じゃあ…今も好きな人はいないってことだよね。ねぇ、煉獄くん。1つお願いというか…提案があるんだけど…」
「ん?なんだ!」
「私もね、人を特別好きになる気持ちってよく分からなかったんだ。だけど、去年の春に煉獄くんのこと好きかもしれない、って思って…でもよく分からなかったから、今日までたくさん考えたの。」
「!?よ、よもや…そんなに前からだったのか!?////」
「えへへ、うん。1年半かけて、やっぱり好きだからちゃんと伝えようって思ったの。だから、もし今煉獄くんに好きな人がいないのなら、今日から中等部卒業までの1年半、私を煉獄くんの仮の恋人にしてくれない?そして、その期間で、私のことを好きかどうか考えてみて欲しいの。」
「仮の恋人?わざわざそのような関係にならずともこれまで通り友人として接しながら考えれば良いのではないか?それに、今恋人を作るつもりがないのは、剣道に集中したいからという理由もあるから仮とは言ってもそういう関係になることは難しいな!」
「剣道に集中するためにも、役に立つと思うよ?仮だってことを皆には秘密にしておけば、告白されるために呼び出される機会も減るし、断るときは『彼女がいるから』って断ることもできるようになるもん。」
「…、しかし。その…君は俺のことを好いてくれているのだろう?そんな…そんなことのために、君の気持ちを利用して偽りの関係になったり、周りを騙した上でそれを理由に断るようなことはするべきじゃないと思うが。」
「…あぁ、そう、だね。杏寿郎くんの言う通りだね、今のは私が間違ってた。ごめんなさい…。真剣な想いに嘘で返してしまってはダメだよね。」
「分かってくれたならそれでいい!この話はこれでお、」
「偽りの関係じゃなくて!…嘘をつくわけじゃなければ、いい?」
「?どういう意味だ…」
「仮の恋人じゃなくて…本当の恋人ならなってくれる?卒業までの1年半、期間限定で構わないから。」
「(困惑)いや、だから俺は、」
「今は剣道に集中したいから恋人を作るつもりはないって言ってたけど、煉獄くんは恋人が出来たらどうして剣道に集中出来なくなっちゃうと思っているの?」
「…む?そう改めて問われるとどう答えていいものか悩ましいが!そうだな、恋人同士は一緒に登下校したり、休日も2人で遊びに行くのが普通だと思うのだが、俺は朝も晩も休日も鍛錬に励みたいんだ。」
「なるほど…。…あのね、煉獄くん。一緒に登下校したいとか休日2人で遊びたいとか、もちろんそういうのも出来るなら楽しそうだなぁとは思うけど…。私は好きな人が頑張っていることを応援したいと思うから、その邪魔はしたくないってそう思うよ?それに、朝練もある煉獄くんと園芸部の私じゃ登校の時間は合わないし、同じように放課後も部活がある煉獄くんと、習い事している私だと下校の時間だって合わないから実際恋人になったって、一緒に登下校って難しいと思うし。」
「…それなら、瀬尾は俺と期間限定の本当の恋人になって、どういうことを求めているんだ?」
「私が期間限定の恋人としてお願いしたいのは3つだよ。下の名前で呼び合うこと。校内、校外で見かけたら必ず声を掛けて挨拶すること。そして、煉獄くんがすごく嬉しい!って思ったこと、悲しいと思ったこと、悔しかったこと、辛かったこと、楽しかったこと…そういうことを私に教えてもらいたい。そして逆に私の感じたいろんなことを聞いて欲しいの。」
「…それだけなのか?それは…、友人と何が違うんだ?」
「うーん、その3つを“意識して”やってもらいたいの。だからそれが友だちとの違い、かな。」
「…俺にはよく違いが分からんな!」
「ふふっ…私にとっては、結構違うんだけど…煉獄くんがそう思うならそれで良いよ。1年半の期間限定恋人として、その3つだけお願いしたいの。それで、1年半後に改めて、返事して欲しいっていうのが私のお願い。…ダメ、かなぁ?」
「むぅ…。…それくらいでいいのなら構わないが。」
「!え、本当!?」
「あぁ、それだけであれば友人とあまり変わらないから、わざわざ恋人という関係になる必要があるのかやっぱりよく分からないが、どちらにしろ卒業までの間で俺が恋人を作りたいと思うとは思えないからな。君が考えてくれたのと同じ期間をかけて俺も考えてみよう!」
「…あ、ありがとう!嬉しい!それなら…卒業までの1年半、よろしくね。…っ、えと、き、杏寿郎くん…!」
「っ!ぁ、あぁ宜しく頼む、澪!」