我慢できない想い
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約束の恋人_我慢できない想い
項垂れ、頭を抱えていた山田は、
数秒の後改めてもう1度ため息を吐くと
意を決したように顔を上げた。
そして、仕方がないな…というような表情で
目の前の杏寿郎に語り掛ける。
「友人だって君は言うけど、クラスの違う女子で君がわざわざ声かけるの澪ちゃんだけってこと、気付いてる?それだけじゃない、澪ちゃんに声かける時だけ、必ず挨拶だけじゃなくて何かしらの話をしてるよね?同じクラスの子も含め、その他の子には挨拶だけする時だってあるのに、澪ちゃんとは挨拶だけじゃなくて必ず会話してるんだよ。」
いや、それはあの1年半の間に身に付いた習性のようなもので…と心の中で思ったが
杏寿郎はすぐに自らそれを否定する。
あの1年半、澪と約束したのは「見掛けたら声を掛けて挨拶すること」ということだけだったはずだ。
だけど実際に思い返してみると、山田の言う通り、澪に声を掛ける時に挨拶だけで済ませた記憶は無かった。
それに…この夏、自ら気付いていたではないか。
3つの約束のうち声を掛けることは
あの約束をする前から、
無意識ながらずっとしていたという事実に。
「あとは、表情かな。煉獄くんが澪ちゃんと話す時の顔、他の子と話す時と全然違うよ?これはまぁ自分の顔なんて分からないだろうから無自覚でも仕方ないけど…煉獄くんは何かこう…気持ちの面で澪ちゃんと話す時だけ他の友だちと話す時とは違うなって自分で感じたことないの?」
ある。
つい最近も感じたばかりだ。
あのIHの日に。
表面だけじゃなくて、ちゃんと内側の想いも汲み取ってくれる澪に、
安らぎを感じた。
自分のことを分かってくれる存在だと、そう思って。
でもそれも、あの1年半を経てお互いのことをより深く知り合うことが出来たからだろうと思っていた。
期間限定の恋人として重ねてきた時間があるからこそ、共有できる思いが多くて、居心地の良い唯一無二の存在だと感じてしまうのだ…と。
だけど本当にそれだけなのだろうか?
澪があの約束ごとを提案してきた時、俺は「それは友人にすることと何も変わらない」と思ったはずだ。
実際に、特にその約束事をあの1年半で“意識して”実行したことなどほとんど無かった。
澪へ話すようなことは、同じように他の友人にも話していたはずだ。
それに重ねてきた時間だけで言ったら、去年と今年同じクラスになった友人たちとも
同じ1年半という時間を過ごしてきた。
だが、その中に澪と同じような居心地の良さや、安らぎを感じる友人がいるだろうか?
普段、誰かと誰かを比べたりはしない杏寿郎では気付けていなかったが
今、山田から「他の人と話す時とは違うのではないか」と問われたことで
杏寿郎の中で「友人」と「澪」の違いが、しっかりと浮き彫りになったように感じた。
「それにさぁ…、オレが澪ちゃんと話しててやたらと強い視線感じるなぁ~と思うと絶対煉獄くんがこっち見てるんだよね。あれも無自覚?煉獄くんって、ただの友人が他の子と話しているのじっと見つめる趣味でもあるの?」
「いや…」
「そしたらそれって、完全に嫉妬でしょ?想像してみなよ、澪ちゃんが例えばオレとか、オレじゃなくても他の男の子と2人きりで親密に、楽しそうに話してるところと
誰でも良いけど他の煉獄くんのお友達の女の子が、煉獄くん以外の男の子と2人きりで親密に楽しそうに話してるとこ。」
そう言われてすぐに思い出すのは、やっぱりあの花火大会の日の光景だ。
「友人」と「澪」が違うのなら、それはどう違う?
きっと、あの場所で見かけたのが澪以外の「友人」だったら、これほどまでにあの場面が脳裏に焼き付いて離れないことはなかっただろう。
むしろ、あの時躊躇わずに声を掛けていたに違いない。
それに…
「…そうだな。俺も澪のマフィンが食べたかった。」
「は?…いや、ちょっと待って何の話、ソレ?」
「俺も澪のマフィンが欲しいと、そう思ったんだ。」
すでに「友人」からマフィンはもらっていたのに。
俺は「澪」のマフィンが欲しかった。
誰か、俺以外が澪のマフィンをもらうのかと思ったら、
…目の前の山田が受け取るのかもしれないとそう思ったら、
自分の内側から沸々と「なぜ俺は「俺も澪のマフィンが欲しい」と言えないんだ」と怒りが沸いて
俺以外がもらうのはどうしてか我慢ならないと、そう思ったのだった。
項垂れ、頭を抱えていた山田は、
数秒の後改めてもう1度ため息を吐くと
意を決したように顔を上げた。
そして、仕方がないな…というような表情で
目の前の杏寿郎に語り掛ける。
「友人だって君は言うけど、クラスの違う女子で君がわざわざ声かけるの澪ちゃんだけってこと、気付いてる?それだけじゃない、澪ちゃんに声かける時だけ、必ず挨拶だけじゃなくて何かしらの話をしてるよね?同じクラスの子も含め、その他の子には挨拶だけする時だってあるのに、澪ちゃんとは挨拶だけじゃなくて必ず会話してるんだよ。」
いや、それはあの1年半の間に身に付いた習性のようなもので…と心の中で思ったが
杏寿郎はすぐに自らそれを否定する。
あの1年半、澪と約束したのは「見掛けたら声を掛けて挨拶すること」ということだけだったはずだ。
だけど実際に思い返してみると、山田の言う通り、澪に声を掛ける時に挨拶だけで済ませた記憶は無かった。
それに…この夏、自ら気付いていたではないか。
3つの約束のうち声を掛けることは
あの約束をする前から、
無意識ながらずっとしていたという事実に。
「あとは、表情かな。煉獄くんが澪ちゃんと話す時の顔、他の子と話す時と全然違うよ?これはまぁ自分の顔なんて分からないだろうから無自覚でも仕方ないけど…煉獄くんは何かこう…気持ちの面で澪ちゃんと話す時だけ他の友だちと話す時とは違うなって自分で感じたことないの?」
ある。
つい最近も感じたばかりだ。
あのIHの日に。
表面だけじゃなくて、ちゃんと内側の想いも汲み取ってくれる澪に、
安らぎを感じた。
自分のことを分かってくれる存在だと、そう思って。
でもそれも、あの1年半を経てお互いのことをより深く知り合うことが出来たからだろうと思っていた。
期間限定の恋人として重ねてきた時間があるからこそ、共有できる思いが多くて、居心地の良い唯一無二の存在だと感じてしまうのだ…と。
だけど本当にそれだけなのだろうか?
澪があの約束ごとを提案してきた時、俺は「それは友人にすることと何も変わらない」と思ったはずだ。
実際に、特にその約束事をあの1年半で“意識して”実行したことなどほとんど無かった。
澪へ話すようなことは、同じように他の友人にも話していたはずだ。
それに重ねてきた時間だけで言ったら、去年と今年同じクラスになった友人たちとも
同じ1年半という時間を過ごしてきた。
だが、その中に澪と同じような居心地の良さや、安らぎを感じる友人がいるだろうか?
普段、誰かと誰かを比べたりはしない杏寿郎では気付けていなかったが
今、山田から「他の人と話す時とは違うのではないか」と問われたことで
杏寿郎の中で「友人」と「澪」の違いが、しっかりと浮き彫りになったように感じた。
「それにさぁ…、オレが澪ちゃんと話しててやたらと強い視線感じるなぁ~と思うと絶対煉獄くんがこっち見てるんだよね。あれも無自覚?煉獄くんって、ただの友人が他の子と話しているのじっと見つめる趣味でもあるの?」
「いや…」
「そしたらそれって、完全に嫉妬でしょ?想像してみなよ、澪ちゃんが例えばオレとか、オレじゃなくても他の男の子と2人きりで親密に、楽しそうに話してるところと
誰でも良いけど他の煉獄くんのお友達の女の子が、煉獄くん以外の男の子と2人きりで親密に楽しそうに話してるとこ。」
そう言われてすぐに思い出すのは、やっぱりあの花火大会の日の光景だ。
「友人」と「澪」が違うのなら、それはどう違う?
きっと、あの場所で見かけたのが澪以外の「友人」だったら、これほどまでにあの場面が脳裏に焼き付いて離れないことはなかっただろう。
むしろ、あの時躊躇わずに声を掛けていたに違いない。
それに…
「…そうだな。俺も澪のマフィンが食べたかった。」
「は?…いや、ちょっと待って何の話、ソレ?」
「俺も澪のマフィンが欲しいと、そう思ったんだ。」
すでに「友人」からマフィンはもらっていたのに。
俺は「澪」のマフィンが欲しかった。
誰か、俺以外が澪のマフィンをもらうのかと思ったら、
…目の前の山田が受け取るのかもしれないとそう思ったら、
自分の内側から沸々と「なぜ俺は「俺も澪のマフィンが欲しい」と言えないんだ」と怒りが沸いて
俺以外がもらうのはどうしてか我慢ならないと、そう思ったのだった。