私の踏み出した1歩
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約束の恋人_私の踏み出した1歩
「ねぇねぇ煉獄くん!延期になってたIH、今月ウチの学校でやるって話、本当なの!?」
「うむ!よく知ってるな、先日そのように決まった!」
「そうなんだ!いつ、いつ?私たち応援行くよ!」
「それはありがとう!再来週の日曜だな!」
決して口に出せない願いと共に自分のマフィンを飲み込んだ日から数日、
移動教室のために廊下を歩いていたら
煉獄くんのクラスからはしゃいだあの子の声が聞こえてきた。
「…へー。剣道部のIHやっと日程と場所決まったんだぁ。」
「まさかの開催予定の会場が火事になるとかびっくりだったよね。」
そう、本来なら8月の夏休み中に実施されるIHだったが
試合の少し前に会場が火事となり、
試合が延期となったまま、代替の日程や会場が決まっていなかったのだった。
「ていうかウチの学校で開催なんだね。」
「まぁちゃんとした道場ある学校限られてるもんね。澪、応援行くの?」
「えっ私!?…えーと、…。」
「せっかくウチの学校でやるみたいだし、澪、剣道部の先輩たちにも可愛がられてたじゃん。応援行ったら喜ぶんじゃない?」
「…うん。考えてみるね。」
「何だったら私たちも一緒に見るよ?ルール全然分からないけど(笑)」
「ふふっ、ありがとう。」
周りの友人たちは澪に何も言わないけれど、
澪がまだ杏寿郎のことを好きだということはバレているらしい。
それでも何かアクションを起こしたり、
変に気持ちを聞き出そうとしたり
そういうことをせず、ただただ見守っていてくれる友人たちに、
澪は心から感謝している。
今も、応援に行くことを強く勧めたりはしないで
迷っているならばソッと背中を押す…くらいの
絶妙な力加減で促してくれた。
純粋に、久しぶりに剣道の試合を見たいな、という気持ちはあった。
杏寿郎の影響で試合を見るようになって、ルールを覚えて、
そうしてその真剣勝負の緊張感とか
技の決まる一瞬にも満たない瞬間の高揚感と感動に澪は魅了されていた。
そのうち、試合ではなく日々の単調な鍛錬であっても、
腕の振り方、止め突き払いのスピード、
足さばき等をじっくり見るのが好きになり、
時たま煉獄家の道場にも見学に行っていたくらいだ。
けれど、先ほどのあの子も来るのか…と思うと躊躇う気持ちも出てきてしまう。
自業自得とはいえ、やはり目にする度に
心苦しくなってしまうから。
それに…試合会場に行けば、杏寿郎の両親や千寿郎に会うことにもなってしまうだろう。
その時にどういう顔をして何を話せばいいのかも分からない。
そうして迎えた2週間後の日曜日、
澪はIHの試合が行われる道場の入り口に1人立っていた。
あの後、しばらく悩んだものの、
次第にそんな風に思っている「こんな弱い自分は好きじゃない」と思うようになったからだ。
真正面からぶつかり続けず、
期間限定の恋人などというものにおさまったことに対して
反省も後悔も、ちゃんとしている。
だけど、せめて杏寿郎の友人としてふさわしい自分で在りたいと思ったから。
自らが招いた苦しさから逃げたくない。
試合を見たい、応援したいと思ったのだったら、
逃げずに、それを実行できる自分で在りたいと思ったから。
「本当に一緒に行かなくていいの?」と本気で心配してくれて、
気遣ってくれる自分の友人にも恥じない自分で在りたいと思ったから。
(…よし、行こう!)
会場に入ると、試合時間が近付いていることもあって中は熱気に包まれていた。
「…じゃあ、あっちで応援してるから!頑張ってね!!」
「あぁ差し入れありがとう!」
入ってすぐに、例のあの子と杏寿郎の会話を耳に拾ってしまい、
…ぐっ、と澪はお腹に力を入れる。
(…気にしない、気にしない。)
そう自分に言い聞かせながら、応援席の端にそっと腰かけた。
「ねぇねぇ煉獄くん!延期になってたIH、今月ウチの学校でやるって話、本当なの!?」
「うむ!よく知ってるな、先日そのように決まった!」
「そうなんだ!いつ、いつ?私たち応援行くよ!」
「それはありがとう!再来週の日曜だな!」
決して口に出せない願いと共に自分のマフィンを飲み込んだ日から数日、
移動教室のために廊下を歩いていたら
煉獄くんのクラスからはしゃいだあの子の声が聞こえてきた。
「…へー。剣道部のIHやっと日程と場所決まったんだぁ。」
「まさかの開催予定の会場が火事になるとかびっくりだったよね。」
そう、本来なら8月の夏休み中に実施されるIHだったが
試合の少し前に会場が火事となり、
試合が延期となったまま、代替の日程や会場が決まっていなかったのだった。
「ていうかウチの学校で開催なんだね。」
「まぁちゃんとした道場ある学校限られてるもんね。澪、応援行くの?」
「えっ私!?…えーと、…。」
「せっかくウチの学校でやるみたいだし、澪、剣道部の先輩たちにも可愛がられてたじゃん。応援行ったら喜ぶんじゃない?」
「…うん。考えてみるね。」
「何だったら私たちも一緒に見るよ?ルール全然分からないけど(笑)」
「ふふっ、ありがとう。」
周りの友人たちは澪に何も言わないけれど、
澪がまだ杏寿郎のことを好きだということはバレているらしい。
それでも何かアクションを起こしたり、
変に気持ちを聞き出そうとしたり
そういうことをせず、ただただ見守っていてくれる友人たちに、
澪は心から感謝している。
今も、応援に行くことを強く勧めたりはしないで
迷っているならばソッと背中を押す…くらいの
絶妙な力加減で促してくれた。
純粋に、久しぶりに剣道の試合を見たいな、という気持ちはあった。
杏寿郎の影響で試合を見るようになって、ルールを覚えて、
そうしてその真剣勝負の緊張感とか
技の決まる一瞬にも満たない瞬間の高揚感と感動に澪は魅了されていた。
そのうち、試合ではなく日々の単調な鍛錬であっても、
腕の振り方、止め突き払いのスピード、
足さばき等をじっくり見るのが好きになり、
時たま煉獄家の道場にも見学に行っていたくらいだ。
けれど、先ほどのあの子も来るのか…と思うと躊躇う気持ちも出てきてしまう。
自業自得とはいえ、やはり目にする度に
心苦しくなってしまうから。
それに…試合会場に行けば、杏寿郎の両親や千寿郎に会うことにもなってしまうだろう。
その時にどういう顔をして何を話せばいいのかも分からない。
そうして迎えた2週間後の日曜日、
澪はIHの試合が行われる道場の入り口に1人立っていた。
あの後、しばらく悩んだものの、
次第にそんな風に思っている「こんな弱い自分は好きじゃない」と思うようになったからだ。
真正面からぶつかり続けず、
期間限定の恋人などというものにおさまったことに対して
反省も後悔も、ちゃんとしている。
だけど、せめて杏寿郎の友人としてふさわしい自分で在りたいと思ったから。
自らが招いた苦しさから逃げたくない。
試合を見たい、応援したいと思ったのだったら、
逃げずに、それを実行できる自分で在りたいと思ったから。
「本当に一緒に行かなくていいの?」と本気で心配してくれて、
気遣ってくれる自分の友人にも恥じない自分で在りたいと思ったから。
(…よし、行こう!)
会場に入ると、試合時間が近付いていることもあって中は熱気に包まれていた。
「…じゃあ、あっちで応援してるから!頑張ってね!!」
「あぁ差し入れありがとう!」
入ってすぐに、例のあの子と杏寿郎の会話を耳に拾ってしまい、
…ぐっ、と澪はお腹に力を入れる。
(…気にしない、気にしない。)
そう自分に言い聞かせながら、応援席の端にそっと腰かけた。