あの子のマフィンの行方
お名前の設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
約束の恋人_あの子のマフィンの行方
新学期
まだまだ暑さは和らぎ切っておらず、
生徒たちも皆まだ夏休みのどこか浮ついた空気を引きずりながら
互いの夏休みについて語り合ったりしていたが
始業式の翌日から2日間かけて実施された実力テストによって
キメツ学園の生徒たちの夏休み気分は強制終了となった。
2週間が過ぎ、
身体のリズムもようやく学園生活のモードへ完全に戻ったと感じた頃――
「煉獄くんっ!…今、お腹空いてない?良かったらコレあげるから食べて?」
「ぅん?これは…マフィンか?」
「うん、さっき調理実習で作ったの!」
「そうか、ちょうど朝練のせいで小腹が空いていたんだ。ありがたく頂こう!」
「…あー、あの子たちのクラス調理実習1限目だったんだ。」
「私たちは今日の午後だったよね?」
「そうそう、昨日は隣のクラスの子たちだったみたいなんだけど2グループぐらい何か全然マフィン膨らまずにぺしゃんこの状態で出来上がって悲惨だったらしいよ~(笑)」
「上手いこと出来上がった量が少なかったから、マフィンを狙う男子たちの争奪戦が激化したらしいね!(笑)」
「ウチらのクラスには澪が居るもん、大丈夫でしょ!ね!澪!」
「!…え、あ、ごめん。何の話だった?」
廊下の先でやり取りをされていた、
可愛くラッピングされたマフィンの行方をボーっと見つめてしまっていた澪は、
友人に話しかけられて我に返る。
「午後の調理実習は、澪が居るから失敗知らずで争奪戦も安心だよねって話!」
「…そりゃあ出来には何も不安はないけど、澪が居るからこそ争奪戦はむしろ激化するんじゃない?」
「あーそっか今年は…」
「そんな…争奪戦だなんて、大げさだよ。」
「そんなことなぁーいっ!少なくともオレはっ澪ちゃんの手作りマフィンが欲しい!!」
「っ…びっくりした…!」
「…げ、出たっ山田太郎!」
「ちょっとあんた何でこんなところにいるのよ!?」
「そーだ、そーだ!引っ込め山田!澪のマフィンは同じクラスの俺らがもらうんだからな!」
「お前のクラス昨日だったんだからもう食べたろ!?諦めろよ!」
「昨日のマフィンはもらってないし、オレは澪ちゃんの作ったやつが食べたいんだ!!」
「…あーなるほど、失敗作多くて母数が少なかったのに普段から澪、澪言ってる山田にあげようって女子はまぁいないよねぇ…。」
「ホラ、やっぱり争奪戦すでに始まってるじゃない。」
澪のクラスとは1番距離が離れているはずの山田の登場で、
ざわついていた休み時間の廊下は更に騒がしくなる。
「あー何か騒がしいと思ったら山田くんか。」
「ねぇねぇ、山田くんって澪のこと1学期まで“瀬尾さん”って呼んでなかった?今、下の名前で呼んでたよね?」
「え、ホント!?あの2人、夏休みの間に何かあったのかな!?」
「…。」
「お?煉獄、お前もうすでにマフィン、ゲットしたのかよ!?ずりぃ!おい、俺等の分は!?」
「え、知らないわよ。他の女子にもらったら?」
「私たちのグループで作ったのはもう皆無くなっちゃったもの。」
「まぢかよっ!?」
「事前に声かけておかなかったなら、もう絶望的ね~。」
「え、煉獄、お前事前にこいつらにマフィンくれって言ってたのか!?」
「…。っ、いや!今日調理実習だということも知らなかったな!」
「ぉい!じゃあ何で煉獄には渡してるんだよ!」
「当たり前でしょ?あんた自分が何もせずに煉獄くんと同じ土俵に上がれると思ってるわけ!?」
「はぁっ!?」
やいのやいのと目の前で盛り上がり始めた友人たちを尻目に、
杏寿郎は今受け取ったばかりの手の中の包みを見つめながら、
澪が作ったマフィンは山田という生徒が食べるのだろうか…と考える。
先ほど友人が言っていた「夏休みの間に何かあったのかな」という台詞を聞いて、
脳裏には花火大会の夜に見た、
澪の笑顔と山田の照れた顔が思い浮かんだ。
「争奪戦っ!それは良い、その勝負オレも参加するぞ!」
「上等だ!頭以外なら山田に負ける気がしねぇ!」
「ちょっとあんた達、澪の意思を無視しないで!」
益々ヒートアップしている廊下の先の騒ぎも耳におさめながら、
今まさに目の前の友人からマフィンを受け取った上、
またしても“意識して”声を掛けるのを止めてしまった自分は、
あちらの争奪戦には
参加することも出来ないのだろうな…と杏寿郎は思った。
新学期
まだまだ暑さは和らぎ切っておらず、
生徒たちも皆まだ夏休みのどこか浮ついた空気を引きずりながら
互いの夏休みについて語り合ったりしていたが
始業式の翌日から2日間かけて実施された実力テストによって
キメツ学園の生徒たちの夏休み気分は強制終了となった。
2週間が過ぎ、
身体のリズムもようやく学園生活のモードへ完全に戻ったと感じた頃――
「煉獄くんっ!…今、お腹空いてない?良かったらコレあげるから食べて?」
「ぅん?これは…マフィンか?」
「うん、さっき調理実習で作ったの!」
「そうか、ちょうど朝練のせいで小腹が空いていたんだ。ありがたく頂こう!」
「…あー、あの子たちのクラス調理実習1限目だったんだ。」
「私たちは今日の午後だったよね?」
「そうそう、昨日は隣のクラスの子たちだったみたいなんだけど2グループぐらい何か全然マフィン膨らまずにぺしゃんこの状態で出来上がって悲惨だったらしいよ~(笑)」
「上手いこと出来上がった量が少なかったから、マフィンを狙う男子たちの争奪戦が激化したらしいね!(笑)」
「ウチらのクラスには澪が居るもん、大丈夫でしょ!ね!澪!」
「!…え、あ、ごめん。何の話だった?」
廊下の先でやり取りをされていた、
可愛くラッピングされたマフィンの行方をボーっと見つめてしまっていた澪は、
友人に話しかけられて我に返る。
「午後の調理実習は、澪が居るから失敗知らずで争奪戦も安心だよねって話!」
「…そりゃあ出来には何も不安はないけど、澪が居るからこそ争奪戦はむしろ激化するんじゃない?」
「あーそっか今年は…」
「そんな…争奪戦だなんて、大げさだよ。」
「そんなことなぁーいっ!少なくともオレはっ澪ちゃんの手作りマフィンが欲しい!!」
「っ…びっくりした…!」
「…げ、出たっ山田太郎!」
「ちょっとあんた何でこんなところにいるのよ!?」
「そーだ、そーだ!引っ込め山田!澪のマフィンは同じクラスの俺らがもらうんだからな!」
「お前のクラス昨日だったんだからもう食べたろ!?諦めろよ!」
「昨日のマフィンはもらってないし、オレは澪ちゃんの作ったやつが食べたいんだ!!」
「…あーなるほど、失敗作多くて母数が少なかったのに普段から澪、澪言ってる山田にあげようって女子はまぁいないよねぇ…。」
「ホラ、やっぱり争奪戦すでに始まってるじゃない。」
澪のクラスとは1番距離が離れているはずの山田の登場で、
ざわついていた休み時間の廊下は更に騒がしくなる。
「あー何か騒がしいと思ったら山田くんか。」
「ねぇねぇ、山田くんって澪のこと1学期まで“瀬尾さん”って呼んでなかった?今、下の名前で呼んでたよね?」
「え、ホント!?あの2人、夏休みの間に何かあったのかな!?」
「…。」
「お?煉獄、お前もうすでにマフィン、ゲットしたのかよ!?ずりぃ!おい、俺等の分は!?」
「え、知らないわよ。他の女子にもらったら?」
「私たちのグループで作ったのはもう皆無くなっちゃったもの。」
「まぢかよっ!?」
「事前に声かけておかなかったなら、もう絶望的ね~。」
「え、煉獄、お前事前にこいつらにマフィンくれって言ってたのか!?」
「…。っ、いや!今日調理実習だということも知らなかったな!」
「ぉい!じゃあ何で煉獄には渡してるんだよ!」
「当たり前でしょ?あんた自分が何もせずに煉獄くんと同じ土俵に上がれると思ってるわけ!?」
「はぁっ!?」
やいのやいのと目の前で盛り上がり始めた友人たちを尻目に、
杏寿郎は今受け取ったばかりの手の中の包みを見つめながら、
澪が作ったマフィンは山田という生徒が食べるのだろうか…と考える。
先ほど友人が言っていた「夏休みの間に何かあったのかな」という台詞を聞いて、
脳裏には花火大会の夜に見た、
澪の笑顔と山田の照れた顔が思い浮かんだ。
「争奪戦っ!それは良い、その勝負オレも参加するぞ!」
「上等だ!頭以外なら山田に負ける気がしねぇ!」
「ちょっとあんた達、澪の意思を無視しないで!」
益々ヒートアップしている廊下の先の騒ぎも耳におさめながら、
今まさに目の前の友人からマフィンを受け取った上、
またしても“意識して”声を掛けるのを止めてしまった自分は、
あちらの争奪戦には
参加することも出来ないのだろうな…と杏寿郎は思った。