希望融け滲む夏の夕暮れ
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約束の恋人_希望融け滲む夏の夕暮れ
「澪さーん!!」
夏休みも半ばを過ぎた頃、そろそろ残りの日数を考えると本腰を入れねば…と
夏休みの課題を進めていた澪は
自室ではどうにも集中しきれなかったため、
むせかえるような炎天下に心を折られそうになりながらも公立図書館に出向いた。
図書館内は暑すぎず冷えすぎず静謐で、
思惑通り集中して課題を進めることができた。
行き帰りの暑さに耐えた甲斐があったというものだ、と充足感を感じながら
少しだけ傾いてきた陽の中を帰ろうとしていたらどこかから澪のことを呼ぶ声が聞こえる。
辺りを見回すと、公立公園の出口付近でこちらに向かって大きく手を振っている少年が見えた。
「…千寿郎くん?」
「澪さんっお久しぶりです!」
「本当に久しぶりだね。今日は…公園で遊んでたの?」
「友人と、この先の公立プールに行っていました!」
千寿郎の指差す方向を見ながら、なるほど…と思う。
この公立公園はとても敷地面積が広く、
子どもたちが遊べる普通の公園と
野球やサッカーなどが行えるグラウンド、
澪が今しがた行っていた図書館
通年利用できる室内プール等がすべて敷地内に併設されている。
特に室内プールは小さいながらスライダーも設置されているため、
子どもたちには大人気だ。
澪も小学生の頃は何度も友人と行った記憶がある。
もう1度、千寿郎の方に視線を戻すと
プールから出てきたばかりなのだろう、
いつもフワフワと炎のように揺れる髪が
今はしっとりと落ち着いている状態だった。
「そっか、楽しかった?」
「はいっ!」
「ふふふっ、良かったね。」
杏寿郎も感情表現は豊かな方であるが、
長男ということもあってか
中学生の頃からどちらかと言うと
周囲よりも落ち着いている印象がある。
千寿郎も同じく、
小学生にしては言動がとても大人びていると思うことばかりであるが
今のように身体中で喜びを表してくれているところを見ると、
その子どもらしい素直さに澪も自然と笑みが零れた。
「澪さんは…図書館、ですか?」
「うん、そう。よく分かったね。」
「お一人でしたので…」
「情けないことに、家だとなかなか夏休みの課題に集中出来なくて。千寿郎くんはもう夏休みの宿題は終わった?」
「僕は、残りは自由研究の工作だけです!」
「さすが千寿郎くんだね~。」
「いえ、それほど量も多くなかったですし…澪さんたちは大変ですよね。兄上から聞きました!高等部に上がったら中等部より授業内容が細かくてテスト勉強も大変だし、夏休みの課題も多くなったので大変だと。」
「…うん、そうだねぇ…。」
あの杏寿郎が…?と少し違和感を感じながら、曖昧に頷く。
確かに中等部の頃より、科目も細かく分かれ専門性も深くなってきたが
ああ見えて意外と(?)杏寿郎は計画的な性格だ。
明朗快活で、大胆、悪く言えば大雑把な性格に見られがちだが、
それは他人に対して大らかで懐が広いだけであって、
こと自分自身に関してはそんなことはなく、
いろんなことを見極め見通しながら、
何事もきちきちっと進めるタイプだ。
先を読む力は幼い頃から父親に指導されていた剣道を通して身に付いたのだろうし、
物事をきっちり進めるのは母親である瑠火さんの教育の賜物だろう。
そんな杏寿郎がテスト勉強が大変…?
課題が多くて大変…?
どちらも計画的に進めて、
大変な状態にならないようにしていると思うのだけど…
「だから、最近全然澪さんが道場の稽古の見学にいらっしゃらないのも忙しいから致し方ないんだと仰って…」
っまさかの私のせいだった!
なるほど、ごめんね煉獄くん!
「あ、あははー…そうなんだよね!なかなか余裕がなくて…っ」
内心で冷や汗をかきながら、答える。
それほど頻繁、というわけではなかったけれども、
杏寿郎と千寿郎の父、槇寿郎が開いている道場に、
澪が顔を出すこともあった。
…3月までは。
それは杏寿郎と話をしたりメッセージを送り合う中で、
何となく自然と見学に行く話になることもあったし、
杏寿郎の試合を一緒に応援する際に直接千寿郎から誘われることもあった。
きっと澪が全然道場に出向かなくなった理由を、
無邪気に聞かれた際に杏寿郎が「高等部に上がったら勉強が忙しい」と答えたのだろう。
「澪さーん!!」
夏休みも半ばを過ぎた頃、そろそろ残りの日数を考えると本腰を入れねば…と
夏休みの課題を進めていた澪は
自室ではどうにも集中しきれなかったため、
むせかえるような炎天下に心を折られそうになりながらも公立図書館に出向いた。
図書館内は暑すぎず冷えすぎず静謐で、
思惑通り集中して課題を進めることができた。
行き帰りの暑さに耐えた甲斐があったというものだ、と充足感を感じながら
少しだけ傾いてきた陽の中を帰ろうとしていたらどこかから澪のことを呼ぶ声が聞こえる。
辺りを見回すと、公立公園の出口付近でこちらに向かって大きく手を振っている少年が見えた。
「…千寿郎くん?」
「澪さんっお久しぶりです!」
「本当に久しぶりだね。今日は…公園で遊んでたの?」
「友人と、この先の公立プールに行っていました!」
千寿郎の指差す方向を見ながら、なるほど…と思う。
この公立公園はとても敷地面積が広く、
子どもたちが遊べる普通の公園と
野球やサッカーなどが行えるグラウンド、
澪が今しがた行っていた図書館
通年利用できる室内プール等がすべて敷地内に併設されている。
特に室内プールは小さいながらスライダーも設置されているため、
子どもたちには大人気だ。
澪も小学生の頃は何度も友人と行った記憶がある。
もう1度、千寿郎の方に視線を戻すと
プールから出てきたばかりなのだろう、
いつもフワフワと炎のように揺れる髪が
今はしっとりと落ち着いている状態だった。
「そっか、楽しかった?」
「はいっ!」
「ふふふっ、良かったね。」
杏寿郎も感情表現は豊かな方であるが、
長男ということもあってか
中学生の頃からどちらかと言うと
周囲よりも落ち着いている印象がある。
千寿郎も同じく、
小学生にしては言動がとても大人びていると思うことばかりであるが
今のように身体中で喜びを表してくれているところを見ると、
その子どもらしい素直さに澪も自然と笑みが零れた。
「澪さんは…図書館、ですか?」
「うん、そう。よく分かったね。」
「お一人でしたので…」
「情けないことに、家だとなかなか夏休みの課題に集中出来なくて。千寿郎くんはもう夏休みの宿題は終わった?」
「僕は、残りは自由研究の工作だけです!」
「さすが千寿郎くんだね~。」
「いえ、それほど量も多くなかったですし…澪さんたちは大変ですよね。兄上から聞きました!高等部に上がったら中等部より授業内容が細かくてテスト勉強も大変だし、夏休みの課題も多くなったので大変だと。」
「…うん、そうだねぇ…。」
あの杏寿郎が…?と少し違和感を感じながら、曖昧に頷く。
確かに中等部の頃より、科目も細かく分かれ専門性も深くなってきたが
ああ見えて意外と(?)杏寿郎は計画的な性格だ。
明朗快活で、大胆、悪く言えば大雑把な性格に見られがちだが、
それは他人に対して大らかで懐が広いだけであって、
こと自分自身に関してはそんなことはなく、
いろんなことを見極め見通しながら、
何事もきちきちっと進めるタイプだ。
先を読む力は幼い頃から父親に指導されていた剣道を通して身に付いたのだろうし、
物事をきっちり進めるのは母親である瑠火さんの教育の賜物だろう。
そんな杏寿郎がテスト勉強が大変…?
課題が多くて大変…?
どちらも計画的に進めて、
大変な状態にならないようにしていると思うのだけど…
「だから、最近全然澪さんが道場の稽古の見学にいらっしゃらないのも忙しいから致し方ないんだと仰って…」
っまさかの私のせいだった!
なるほど、ごめんね煉獄くん!
「あ、あははー…そうなんだよね!なかなか余裕がなくて…っ」
内心で冷や汗をかきながら、答える。
それほど頻繁、というわけではなかったけれども、
杏寿郎と千寿郎の父、槇寿郎が開いている道場に、
澪が顔を出すこともあった。
…3月までは。
それは杏寿郎と話をしたりメッセージを送り合う中で、
何となく自然と見学に行く話になることもあったし、
杏寿郎の試合を一緒に応援する際に直接千寿郎から誘われることもあった。
きっと澪が全然道場に出向かなくなった理由を、
無邪気に聞かれた際に杏寿郎が「高等部に上がったら勉強が忙しい」と答えたのだろう。