珊瑚の祈り
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珊瑚の祈り_1
煉獄家に暮らし始めてから、あとふた月ほどで一年になる。
私は、このお正月で十一に、杏寿郎さんは十三になった。
千寿郎も四つになってお喋りも上手になってきた。
日々はあっという間に巡っていく。
「もう少しで完成ですね。」
「…はいっ!」
今、私とお義母様が飾っているのは、
私が実家から持って来た七段雛だ。
朱毛氈を敷いた雛壇に、
桐箱から取り出した雛人形を並べていく。
去年は、瀬尾家で通いの女中さんと一緒に飾った。
今年は、お義母様と一緒に飾ることが出来て、楽しい。
ここ数日はお義母様のお身体の調子も良く、
それだけで心が浮き立つ。
「これ、千寿郎。そんな風に掴んではなりませんよ。」
「っ、ごごめんなさい…。」
「大丈夫よ、千寿郎。私も五つの時、壊してしまったことがあるの。でも、人形の司がすぐに直して下さって節会までには間に合ったもの!」
「…とは言え、気を付けるに超したことはありませんからね。」
「はい、ははうえ!」
飾られた雛人形を見ていると、心が弾む。
「ほぉ…見事なものだな。」
「はい!とても華やかですね、父上!」
雛人形を飾り終わった頃、
お山まで鍛錬に行っていたお義父様と杏寿郎さんが帰ってきて、
雛壇を飾り付けたお部屋に近い庭先から部屋の中を覗き込んでいた。
「お義父様!杏寿郎さん!お帰りなさい。」
「おかえりなさい!」
「お戻りなさいませ。お湯を使われますか?」
「あぁ…頼む。」
「うわぁ…杏寿郎さん、どろどろですね…。」
「うわぁ。あにうえ、どろどろ!」
近頃、お庭での素振りや道場での打ち合いだけでなく
お義父様と杏寿郎さんは氏神様の裏手にある
煉獄家所有のお山で鍛錬することが増えた。
昨年、菜の花畑に野掛けに行ったあの山だ。
煉獄家の使う炎の呼吸は道場やお庭で使う訳にはいかないからだって。
うっかりお家が燃えてしまったら大変だものね。
まだまだ杏寿郎さんは炎の呼吸の型を扱えないみたいだけど、
今年中には壱の型を使えるようにするのだと意気込んで頑張っている。
杏寿郎さんが頑張れば頑張る分だけ、
道着や袴が汚れたり破れたりすることも多くて
私もお洗濯や繕い物が大変だ。
「…杏寿郎、あなたはそのまま家には上がらずお湯を使うようになさいね。」
「はい!心得ております、母上!」
「お義母様、私、湯の準備をしてまいりますね。」
「ありがとう、澪。それでは私は先に夕飯の支度をしましょう。」
「…さて、では湯の準備が整うまでの間、庭で素振りを見てやろう。…千寿郎、お前もやるか?」
「はい!」
「では道場から千寿郎の分も含め、竹刀を持って参ります!」
千寿郎が仲間に入れてもらえるとあって、
嬉しそうに庭に向かって駆け出すのと同時に
杏寿郎さんは道場に向かって駆け出した。
「旦那様…。ほどほどになさって下さいね。」
「(ぎくっ)あぁ分かってるさ!…も、桃の節句は来月だったな。当日は菱餅も準備せねばな。」
「(ため息)…はい。蛤もお忘れなさいませんよう。」
「あぁ、分かった。」
「あの…っ、ありがとうございます!いろいろとご準備下さって…」
「…当然のことだ。澪が気にすることではない。」
「旦那様の仰る通りです。…この家で、初めての桃の節句ですね。楽しみですこと。」
「そういえば瑠火、あれはもう渡したのか?」
「あぁいえ。当日に渡そうと思っております。」
「?あの…」
「父上!千寿郎!お待たせしました!!」
あれとは何だろう?と思って尋ねようとしたら、
杏寿郎さんが道場から竹刀を持って、戻ってきた。
「!いけない…お湯の準備を!」
「澪!ゆっくりで良いぞ!これからまた鍛錬だからな!!」
「…杏寿郎。お湯が整うまでの合間の鍛錬なのですからね、本末転倒せぬように。」
「分かっております、母上!!」
「旦那様…?」
「も、もちろんだ!さぁ、早速見てやろう!杏寿郎、千寿郎そこに並びなさい。」
「お湯の準備が終わりましたら、お手伝いに参りますね!お義母様!」
「よろしく頼みますね、澪。」
お湯の準備に、夕飯の支度に…と忙しなく動いている間に
私はすっかり「あれ」の話も忘れてしまっていた。
ちなみに、その日は私が「お湯の準備が整いましたよ」とお伝えしても、
案の定杏寿郎さんがあと少し、あと少しと
鍛錬の時間を延ばすものだから
最後にはお義母様のお叱り声がお庭に響いた。
煉獄家に暮らし始めてから、あとふた月ほどで一年になる。
私は、このお正月で十一に、杏寿郎さんは十三になった。
千寿郎も四つになってお喋りも上手になってきた。
日々はあっという間に巡っていく。
「もう少しで完成ですね。」
「…はいっ!」
今、私とお義母様が飾っているのは、
私が実家から持って来た七段雛だ。
朱毛氈を敷いた雛壇に、
桐箱から取り出した雛人形を並べていく。
去年は、瀬尾家で通いの女中さんと一緒に飾った。
今年は、お義母様と一緒に飾ることが出来て、楽しい。
ここ数日はお義母様のお身体の調子も良く、
それだけで心が浮き立つ。
「これ、千寿郎。そんな風に掴んではなりませんよ。」
「っ、ごごめんなさい…。」
「大丈夫よ、千寿郎。私も五つの時、壊してしまったことがあるの。でも、人形の司がすぐに直して下さって節会までには間に合ったもの!」
「…とは言え、気を付けるに超したことはありませんからね。」
「はい、ははうえ!」
飾られた雛人形を見ていると、心が弾む。
「ほぉ…見事なものだな。」
「はい!とても華やかですね、父上!」
雛人形を飾り終わった頃、
お山まで鍛錬に行っていたお義父様と杏寿郎さんが帰ってきて、
雛壇を飾り付けたお部屋に近い庭先から部屋の中を覗き込んでいた。
「お義父様!杏寿郎さん!お帰りなさい。」
「おかえりなさい!」
「お戻りなさいませ。お湯を使われますか?」
「あぁ…頼む。」
「うわぁ…杏寿郎さん、どろどろですね…。」
「うわぁ。あにうえ、どろどろ!」
近頃、お庭での素振りや道場での打ち合いだけでなく
お義父様と杏寿郎さんは氏神様の裏手にある
煉獄家所有のお山で鍛錬することが増えた。
昨年、菜の花畑に野掛けに行ったあの山だ。
煉獄家の使う炎の呼吸は道場やお庭で使う訳にはいかないからだって。
うっかりお家が燃えてしまったら大変だものね。
まだまだ杏寿郎さんは炎の呼吸の型を扱えないみたいだけど、
今年中には壱の型を使えるようにするのだと意気込んで頑張っている。
杏寿郎さんが頑張れば頑張る分だけ、
道着や袴が汚れたり破れたりすることも多くて
私もお洗濯や繕い物が大変だ。
「…杏寿郎、あなたはそのまま家には上がらずお湯を使うようになさいね。」
「はい!心得ております、母上!」
「お義母様、私、湯の準備をしてまいりますね。」
「ありがとう、澪。それでは私は先に夕飯の支度をしましょう。」
「…さて、では湯の準備が整うまでの間、庭で素振りを見てやろう。…千寿郎、お前もやるか?」
「はい!」
「では道場から千寿郎の分も含め、竹刀を持って参ります!」
千寿郎が仲間に入れてもらえるとあって、
嬉しそうに庭に向かって駆け出すのと同時に
杏寿郎さんは道場に向かって駆け出した。
「旦那様…。ほどほどになさって下さいね。」
「(ぎくっ)あぁ分かってるさ!…も、桃の節句は来月だったな。当日は菱餅も準備せねばな。」
「(ため息)…はい。蛤もお忘れなさいませんよう。」
「あぁ、分かった。」
「あの…っ、ありがとうございます!いろいろとご準備下さって…」
「…当然のことだ。澪が気にすることではない。」
「旦那様の仰る通りです。…この家で、初めての桃の節句ですね。楽しみですこと。」
「そういえば瑠火、あれはもう渡したのか?」
「あぁいえ。当日に渡そうと思っております。」
「?あの…」
「父上!千寿郎!お待たせしました!!」
あれとは何だろう?と思って尋ねようとしたら、
杏寿郎さんが道場から竹刀を持って、戻ってきた。
「!いけない…お湯の準備を!」
「澪!ゆっくりで良いぞ!これからまた鍛錬だからな!!」
「…杏寿郎。お湯が整うまでの合間の鍛錬なのですからね、本末転倒せぬように。」
「分かっております、母上!!」
「旦那様…?」
「も、もちろんだ!さぁ、早速見てやろう!杏寿郎、千寿郎そこに並びなさい。」
「お湯の準備が終わりましたら、お手伝いに参りますね!お義母様!」
「よろしく頼みますね、澪。」
お湯の準備に、夕飯の支度に…と忙しなく動いている間に
私はすっかり「あれ」の話も忘れてしまっていた。
ちなみに、その日は私が「お湯の準備が整いましたよ」とお伝えしても、
案の定杏寿郎さんがあと少し、あと少しと
鍛錬の時間を延ばすものだから
最後にはお義母様のお叱り声がお庭に響いた。