千草の再会

※赤錆の連繋-ura-のその後
※赤錆の連繋をお読みになってからの方が
　よりお楽しみいただけるかと思います
※更に、露草の慈愛もお読み頂いた後の方が
　よりお楽しみいただけるかと思います


…カァーッ、カァー
遠く煉獄家の方面から、
要がこちらへ向かってくる鳴き声が聴こえた。


「ずいぶん、早かったこと…。」

要の足から、文を受け取りながら
そう呟く。

「覚悟スルンダナ、澪、年貢ノ納メドキダ！」
「それは、悪事を働いたものが罪を償う時に言うのよ。私が罪人みたいじゃないの。」


バンバンバンッ

「っ…、ぁ、あ義姉上っ…、義姉上！…っ、あけますよっ！？」


まだ文も見ない状態で
表の戸が叩かれ、千寿郎の声が聞こえた。

「…え！ちょっと、早すぎない！？」
「センジュロ俺ヨリ先ニ家出タ。途中ノ山デ追イ越シタ！」


バタバタバタッ

「ぅ…っ義姉上、こちらですかっ？…、…！？！？」

あぁもうすでに千寿郎の声が泣き声交じりだ。
と思いながら、
要を肩に乗せたまま、庭から
千寿郎が入って来た部屋の中を見る。

想像通り、その顔は涙に濡れているが
驚きで涙も引っ込んだ様子で、
目を見開いてこちらを凝視している。
主に、私の膨れた腹を。

似通ってはいるものの、
受ける印象が全く異なる兄弟だったが、
驚いた時の顔は本当にそっくりだな、と澪は思った。

「な…ぅ、ど…っ、」
「久しぶりね、千寿郎。元気そうでなによ」
「っ失礼します！ち、父上を呼んでまいります！！！」


バタバタバタバタッ

入って来た時以上の慌ただしさで
あっという間に出ていってしまった。

「…展開は想定通りだけれど、あの慌ただしさは想定以上ね。」

『今から、そちらへ参ります！』
とだけ走り書きされた手元の文を見ながら、
どんな状況であれ、挨拶はきちんとするように
言って聞かせなくては、とため息を吐いた。


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翌日、
千寿郎を伴ったお義父様が
ほとほとと弱々しく戸を叩いたのを

「ご無沙汰しております、お義父様。」

とにこやかな笑顔で迎え入れた。