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夜。
よく行くお店に、私はドレークとディナーに来ていた。
ディナーといっても居酒屋のような場所なので、お酒とつまみを出してもらいながら談笑しているのだが。
「君もこういう場所に来るんだな。女性はもっと洒落た所が好きなものと思っていた。」
「実はここ良く来るの。堅苦しくなくて、気楽でいいでしょう?」
「あぁ。いい店だ。」
少しの沈黙の後、彼は頬杖をつきながらこちらを見やり、私に問いかけた。
「船に乗るのを前向きに考えると言っていたが、まだ迷っているのか?」
「んー? まぁ、ねぇ。」
私は言葉を濁しながらつまみのナッツに手を伸ばす。
「何か不安なことでも?」
その鋭い質問に、ヘラリと笑って返す。
「いやぁ、そんなことはないけど。」
「………。……何が君をそうさせるんだ?」
意味深に聞いてくるドレークに、私は彼を見た。
「そうさせる…って?」
「君とは友のような距離感で話せるのに、たまにとても遠くに感じる。まるで見えない壁を俺との間にわざと作っているようだ。」
ギクリ。何故この男は核心をつくようなことを言ってくるのだろう。
確かに壁を作ってるのかもしれない。"秘密"という壁を。
この際、彼にも話してしまおうか。
そんな考えが一瞬過ぎるも、いや、と踏みとどまる。
でも、少しだけなら……。
お酒の勢いのせいか、私は気付けば言うつもりのない言葉を口走っていた。
「誰にも言えない、秘密があるの。」
言いながら、私は俯く。
「……。それは昔の仲間は知っていることなのか?」
「彼らだけは。」
「そうか。ならば俺も彼らと同等の信頼を得られるよう努力しよう。いつか話したいと思った時に話してくれれば良い。だから、船に乗ってくれないか。」
私はそれに答えられないでいた。
彼はそんな私をいまだに見つめながら、話し続ける。
「俺たちは略奪をしない。海賊じゃないからな。だから貧乏な旅になる。皆で金を出し合ってどうにかやりくりしている。そんな船だ。それでも良ければ乗ってくれ。」
「……私なんかが、乗っても良いの? 出来る事と言えば、怪我の治療と戦闘と簡単な料理。掃除は嫌いだし家計簿だってつけれないほど金勘定は苦手。」
「それだけできれば充分だ。だから"私なんか"、なんて言わないでくれ。」
彼はそう言って笑った。
私はその暖かい言葉に涙が出そうになる。
「ありがとう。」
ドレークの目を見て、それだけ言う。
「俺たちは3日後の夜出航する。それまでに決めて、共に旅をしてくれるなら港に停めてある船に来てくれ。赤旗が目印だ。」
「分かった。」
「さ、この話は終わりだ。何か楽しい話をしよう。」
そうして私たちは楽しい夕食を終えたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ついにこの島を出港する日になった。
俺たちは島で調達した物資を船に積んでいる最中だった。
仲間の1人が俺に言う。
「船長〜、もう夕方ですよ〜?」
「だから何だ。手を動かせ。」
「鳴海さん、来ねぇじゃないですか……。」
「まだ夜になってないからな。」
いたって冷静沈着にそう言う俺に、違う仲間が来て言う。
「船長、押しが足らなかったんじゃないですか?」
「そうですかいのう? 私は良い感じだとおもっちょりましたけんど……。」
「いやいや、ドレーク船長、女には奥手だからなぁ〜。押しが足りないのは充分あり得る。」
「でも、鳴海さんは前向きに考えるって言ってくれましたよ! ね! ドレークさん!」
「うるさいぞ、お前ら! 良いから仕事しろ!!」
俺は思わず声を荒げて仲間を注意する。
こっちだって今か今かと彼女の到着を待ちわびているというのに。こいつらは人の気も知らないで、全く。
俺が鳴海に惚れていることは、何故かこいつらにはバレている。
それどころか俺と彼女をくっつけようとおせっかいを焼いてくることもあるくらいだ。
先日、彼女の家に押しかけたコビーとひばりがいい例だ。
だがそのおかげで鳴海が船に乗る事を反対する奴は1人もいない。
それは単純に有り難かった。
彼女をこの島で見つけた時、チャンスだと、そう思った。
麦わら達が解散し、行方が分からなくなった彼女。
しかし今なら。
海兵と海賊という立場もなくなり、何も気にせず鳴海にアプローチが出来る。
船に乗せれば共に過ごす時間も増やせる。
そう思ったのだが、もうすぐ日没だ。
日が沈みかけ、ダメだったか……と落胆したその時。
「あ! 鳴海さん!!」
コビーの声に振り返って港を見る。
そこには息を切らして立ちすくむ鳴海がいた。
「ごめんドレーク! 荷造りに手間取っちゃって! 私も船に乗せてくれる!?」
「……あぁ! もちろんだ!!」
そう言って船から彼女に手を伸ばせば、なんと鳴海は船の側面を垂直に走り俺の手を掴んだ。
そしてこの船に飛び乗る。
その身のこなしに"おお"と歓声が上がる。
「初めまして! 鳴海と言います! 今日からこの船でお世話になります、宜しくお願いします!!」
そう言って彼女は深々と頭を下げた。
「やりましたね船長!」
「海賊王の元クルーが仲間だなんて、心強すぎる!」
「しかも、可愛い!」
「いや、どちらかと言えば綺麗系だろ!?」
「船長、頑張って!」
「お前ら失礼だぞ!!」
訳の分からない歓迎の言葉を述べる仲間達に、俺は注意をする。彼女はヘラリと笑って見せた。
そうして、俺たちはこの島を出港するのだった。
よく行くお店に、私はドレークとディナーに来ていた。
ディナーといっても居酒屋のような場所なので、お酒とつまみを出してもらいながら談笑しているのだが。
「君もこういう場所に来るんだな。女性はもっと洒落た所が好きなものと思っていた。」
「実はここ良く来るの。堅苦しくなくて、気楽でいいでしょう?」
「あぁ。いい店だ。」
少しの沈黙の後、彼は頬杖をつきながらこちらを見やり、私に問いかけた。
「船に乗るのを前向きに考えると言っていたが、まだ迷っているのか?」
「んー? まぁ、ねぇ。」
私は言葉を濁しながらつまみのナッツに手を伸ばす。
「何か不安なことでも?」
その鋭い質問に、ヘラリと笑って返す。
「いやぁ、そんなことはないけど。」
「………。……何が君をそうさせるんだ?」
意味深に聞いてくるドレークに、私は彼を見た。
「そうさせる…って?」
「君とは友のような距離感で話せるのに、たまにとても遠くに感じる。まるで見えない壁を俺との間にわざと作っているようだ。」
ギクリ。何故この男は核心をつくようなことを言ってくるのだろう。
確かに壁を作ってるのかもしれない。"秘密"という壁を。
この際、彼にも話してしまおうか。
そんな考えが一瞬過ぎるも、いや、と踏みとどまる。
でも、少しだけなら……。
お酒の勢いのせいか、私は気付けば言うつもりのない言葉を口走っていた。
「誰にも言えない、秘密があるの。」
言いながら、私は俯く。
「……。それは昔の仲間は知っていることなのか?」
「彼らだけは。」
「そうか。ならば俺も彼らと同等の信頼を得られるよう努力しよう。いつか話したいと思った時に話してくれれば良い。だから、船に乗ってくれないか。」
私はそれに答えられないでいた。
彼はそんな私をいまだに見つめながら、話し続ける。
「俺たちは略奪をしない。海賊じゃないからな。だから貧乏な旅になる。皆で金を出し合ってどうにかやりくりしている。そんな船だ。それでも良ければ乗ってくれ。」
「……私なんかが、乗っても良いの? 出来る事と言えば、怪我の治療と戦闘と簡単な料理。掃除は嫌いだし家計簿だってつけれないほど金勘定は苦手。」
「それだけできれば充分だ。だから"私なんか"、なんて言わないでくれ。」
彼はそう言って笑った。
私はその暖かい言葉に涙が出そうになる。
「ありがとう。」
ドレークの目を見て、それだけ言う。
「俺たちは3日後の夜出航する。それまでに決めて、共に旅をしてくれるなら港に停めてある船に来てくれ。赤旗が目印だ。」
「分かった。」
「さ、この話は終わりだ。何か楽しい話をしよう。」
そうして私たちは楽しい夕食を終えたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ついにこの島を出港する日になった。
俺たちは島で調達した物資を船に積んでいる最中だった。
仲間の1人が俺に言う。
「船長〜、もう夕方ですよ〜?」
「だから何だ。手を動かせ。」
「鳴海さん、来ねぇじゃないですか……。」
「まだ夜になってないからな。」
いたって冷静沈着にそう言う俺に、違う仲間が来て言う。
「船長、押しが足らなかったんじゃないですか?」
「そうですかいのう? 私は良い感じだとおもっちょりましたけんど……。」
「いやいや、ドレーク船長、女には奥手だからなぁ〜。押しが足りないのは充分あり得る。」
「でも、鳴海さんは前向きに考えるって言ってくれましたよ! ね! ドレークさん!」
「うるさいぞ、お前ら! 良いから仕事しろ!!」
俺は思わず声を荒げて仲間を注意する。
こっちだって今か今かと彼女の到着を待ちわびているというのに。こいつらは人の気も知らないで、全く。
俺が鳴海に惚れていることは、何故かこいつらにはバレている。
それどころか俺と彼女をくっつけようとおせっかいを焼いてくることもあるくらいだ。
先日、彼女の家に押しかけたコビーとひばりがいい例だ。
だがそのおかげで鳴海が船に乗る事を反対する奴は1人もいない。
それは単純に有り難かった。
彼女をこの島で見つけた時、チャンスだと、そう思った。
麦わら達が解散し、行方が分からなくなった彼女。
しかし今なら。
海兵と海賊という立場もなくなり、何も気にせず鳴海にアプローチが出来る。
船に乗せれば共に過ごす時間も増やせる。
そう思ったのだが、もうすぐ日没だ。
日が沈みかけ、ダメだったか……と落胆したその時。
「あ! 鳴海さん!!」
コビーの声に振り返って港を見る。
そこには息を切らして立ちすくむ鳴海がいた。
「ごめんドレーク! 荷造りに手間取っちゃって! 私も船に乗せてくれる!?」
「……あぁ! もちろんだ!!」
そう言って船から彼女に手を伸ばせば、なんと鳴海は船の側面を垂直に走り俺の手を掴んだ。
そしてこの船に飛び乗る。
その身のこなしに"おお"と歓声が上がる。
「初めまして! 鳴海と言います! 今日からこの船でお世話になります、宜しくお願いします!!」
そう言って彼女は深々と頭を下げた。
「やりましたね船長!」
「海賊王の元クルーが仲間だなんて、心強すぎる!」
「しかも、可愛い!」
「いや、どちらかと言えば綺麗系だろ!?」
「船長、頑張って!」
「お前ら失礼だぞ!!」
訳の分からない歓迎の言葉を述べる仲間達に、俺は注意をする。彼女はヘラリと笑って見せた。
そうして、俺たちはこの島を出港するのだった。