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私たちが初めて言葉を交わした日。
それはロマンチックでも何でもなかった。
あの頃の私たちは敵同士だったから。
時は数年前に遡る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ワノ国。鬼ヶ島への討ち入り三日前。仲間達は九里の編笠村で作戦を確認している頃だ。
私は訳あって、仲間と別行動をしていた。
今は目的を果たしえびす町をプラプラと歩いている。
その時、どこか見覚えのある後ろ姿がボロ屋に入っていくのが見えた。
「(あの人は、たしかシャボンディに居たーー)」
私は前の世界の職業柄、つい気配を消してその後ろ姿を追った。
ボロ屋から聞こえる声に聞き耳を立てる。
「俺だ、コビー。」
「(コビー…!? コビーって確か、ルフィの友達の海兵じゃ……!?)」
『あ……待ってください、場所を変えます。そうだ……海。」
「霧。」
合言葉のようなものを言い合うと、彼らは最近の世界情勢について話し出した。
王下七武海が撤廃されただとか、そのため元王下七武海達を打捕するために世界中に海兵が駆り出されているとか、その結果人手不足でワノ国には干渉できないだとか、そんな話をしていた。
「(なるほど。元海兵の海賊の裏の顔は、海軍の諜報員、ってとこか。)」
私は自分たちの作戦にとって大して重要でもない情報を手に入れてしまった。
コビー君はルフィの友達で、とても良い子だと聞いている。そんな彼がこのディエス・ドレークという上官を慕っているのは、会話を聞くだけで容易く想像できた。
つまりはこのディエス・ドレークという男もまた、自分なりの正義を持った芯のある善人なのかもしれない。
何となく、私の勘がそう言っていた。
彼らはその後も話をしばらく続けて、電伝虫を切った。
ドレークがふぅっと息を吐く音がして、少しの静寂の後、彼が扉に向かってくるのが分かった。
このままでは私が一部始終聞いていたことがバレるだろう。
隠れても良かった。
しかし私はそれを敢えてしなかった。
少しだけ、気になってしまったのだ。
この男が、どんな男なのか。
ドレークは扉を開けた瞬間、目を見開き横を向いた。
そこにボロ屋にもたれかかっている私が居たからだ。
「……!? 誰だ!?」
彼は戦闘の構えをとった。
当たり前だろう。危険な任務中に、突然完全に気配を消した人間が横に立っていたら。
「そんなに警戒しなくていいよ。今の話、別に誰にも言うつもりはないし。なんなら興味もない。」
「(……聞かれていた!? ……くそっ、殺すしかないか……!? しかしこの女、どこかで……ーー)」
「私は麦わらの一味の鳴海。よろしく赤旗のドレークさん。それとも海兵のドレークさん?」
「麦わらの……!?……たしかに、あの一味にはお前のような女がいたな。しかし何のつもりだ。バラすつもりがないだと?」
「ないない。たまたま見かけて追ってみたの。まさか諜報でカイドウの部下してるとは思わなかったけど。」
「……。どういうつもりだ? 黙っていることがお前に何かメリットをもたらすとは思えんが。」
「逆に、話すメリットがない。仮に内輪揉めを狙ったとしても、私がカイドウやカイドウの部下にアンタのことを告げ口したって、敵の言っていることを信じるバカがいるとは思えない。……いや、まぁ下っ端なら多少は居るかもしれないけど……、上に行けば行くほど、私なんかの言葉にいちいち反応しないでしょ。」
「だろうな。だからと言ってお前が黙っている保証などどこにもない。」
「だから、私を殺す?」
彼は明らかにどうすべきか迷っている瞳をしていた。
「はは、優しいんだね、海兵さん。それじゃ、ちゃんと気をつけてお仕事してね。」
忍びの世界だったら瞬殺されるか、こちらがしていたか、どちらかだろう。
こんな優しい人が海軍にいるなら、海軍もまだ捨てたもんじゃないかもね。
そんな事を思った。
その後、カイドウとの戦いで孤軍ゆえ麦わら一味と共に闘わせてくれとお願いに来た彼を、ルフィと私だけが受け入れていた。
他の仲間は彼の事情も素性も知らないから彼を拒否していたっけ。そりゃあ私も仮に仲間の立場だったら怪しくて信用なんてできなかったけど。
私は知ってしまっていたから。
彼の優しい部分を。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出会いはあまりにも唐突だった。
俺の秘密を握られたことがきっかけで初めて彼女と口を聞いた。
知っていたのは手配書に載っている写真と賞金額くらいで、他に彼女について知っていることは何もない。
本当に俺の事情を黙っているつもりなのか、最初は怪しんだ。
現にカイドウの幹部達に俺がスパイであることがバレた時、彼女がバラしたのだと思った。
しかし確認すればどうやらそうではないらしい。
つまり、彼女は本当に秘密をバラしていなかったのだ。
孤軍になった俺が麦わら一味と共闘を申し込んだ時、麦わらと彼女だけが俺を受け入れていた。
「いいぞ? 味方で。」
軽いノリでそう言う麦わらに、当然仲間達が待ったをかける。
「良くねぇ!!」
「黙ってろ船長!! このボケ!!」
そのブーイングの嵐の中、物おじせず言ってのけたのだ。彼女は。
「私も良いと思う、味方で。」
「ダメじゃ!!!」
「お前ぇの目は節穴か!?!?」
「何でテメェはたまにポンコツになんだ!?!?」
……仲間からの叱責にそ知らぬ顔をして、心配そうに俺を見ていた。
彼女は戦いが全て終わった後、仲間にバレないよう手負いの俺に少しばかり治療を施してくれた。
もっとも、その治療方法は見たこともないものだったが。
「気をつけて仕事してねって言ったじゃん! 何あっという間に立場追われてんの!?」
隠れて俺に治療をしながらヒソヒソと話しかける彼女に俺も小声で言い返す。
「何故バレたのかは俺にも分からん! だが、カイドウとビッグマムが消えたのは良い方に事が転んだな……。」
「うちの船長に感謝してよね。」
「ふっ、あぁ。それにしてもこの治療方法はなんだ? 体は確かに楽になってきているが……見たことのない治療方だ、能力者か?」
俺の問いかけに彼女は一瞬言葉を詰まらせた。
しかし少しの沈黙の後話し始める。
「………ドレークさんの秘密を私だけ知ってるのもフェアじゃないよね。」
一呼吸おいて、彼女は俺から目を逸らして言った。
「これは悪魔の実の能力じゃない。とだけ言っておく。」
その視線の動きが、これ以上は聞くなと暗に物語っていた。
「……不思議な力だ。」
その後黙って治療を受けた後俺は彼女に向き直って言う。
「麦わらの一味の鳴海、治療については礼を言う。それと、今後も俺のことは他言無用で頼む。」
「大丈夫だよ、別に海軍の動向とか私は全く興味ないから。」
ヘラリと笑って言う彼女に、こちらまで緊張の糸が解けかけた。
「……変わった奴だな。縁があればまたどこかで会おう。」
そう言い俺はマントを翻した。
それはロマンチックでも何でもなかった。
あの頃の私たちは敵同士だったから。
時は数年前に遡る。
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ワノ国。鬼ヶ島への討ち入り三日前。仲間達は九里の編笠村で作戦を確認している頃だ。
私は訳あって、仲間と別行動をしていた。
今は目的を果たしえびす町をプラプラと歩いている。
その時、どこか見覚えのある後ろ姿がボロ屋に入っていくのが見えた。
「(あの人は、たしかシャボンディに居たーー)」
私は前の世界の職業柄、つい気配を消してその後ろ姿を追った。
ボロ屋から聞こえる声に聞き耳を立てる。
「俺だ、コビー。」
「(コビー…!? コビーって確か、ルフィの友達の海兵じゃ……!?)」
『あ……待ってください、場所を変えます。そうだ……海。」
「霧。」
合言葉のようなものを言い合うと、彼らは最近の世界情勢について話し出した。
王下七武海が撤廃されただとか、そのため元王下七武海達を打捕するために世界中に海兵が駆り出されているとか、その結果人手不足でワノ国には干渉できないだとか、そんな話をしていた。
「(なるほど。元海兵の海賊の裏の顔は、海軍の諜報員、ってとこか。)」
私は自分たちの作戦にとって大して重要でもない情報を手に入れてしまった。
コビー君はルフィの友達で、とても良い子だと聞いている。そんな彼がこのディエス・ドレークという上官を慕っているのは、会話を聞くだけで容易く想像できた。
つまりはこのディエス・ドレークという男もまた、自分なりの正義を持った芯のある善人なのかもしれない。
何となく、私の勘がそう言っていた。
彼らはその後も話をしばらく続けて、電伝虫を切った。
ドレークがふぅっと息を吐く音がして、少しの静寂の後、彼が扉に向かってくるのが分かった。
このままでは私が一部始終聞いていたことがバレるだろう。
隠れても良かった。
しかし私はそれを敢えてしなかった。
少しだけ、気になってしまったのだ。
この男が、どんな男なのか。
ドレークは扉を開けた瞬間、目を見開き横を向いた。
そこにボロ屋にもたれかかっている私が居たからだ。
「……!? 誰だ!?」
彼は戦闘の構えをとった。
当たり前だろう。危険な任務中に、突然完全に気配を消した人間が横に立っていたら。
「そんなに警戒しなくていいよ。今の話、別に誰にも言うつもりはないし。なんなら興味もない。」
「(……聞かれていた!? ……くそっ、殺すしかないか……!? しかしこの女、どこかで……ーー)」
「私は麦わらの一味の鳴海。よろしく赤旗のドレークさん。それとも海兵のドレークさん?」
「麦わらの……!?……たしかに、あの一味にはお前のような女がいたな。しかし何のつもりだ。バラすつもりがないだと?」
「ないない。たまたま見かけて追ってみたの。まさか諜報でカイドウの部下してるとは思わなかったけど。」
「……。どういうつもりだ? 黙っていることがお前に何かメリットをもたらすとは思えんが。」
「逆に、話すメリットがない。仮に内輪揉めを狙ったとしても、私がカイドウやカイドウの部下にアンタのことを告げ口したって、敵の言っていることを信じるバカがいるとは思えない。……いや、まぁ下っ端なら多少は居るかもしれないけど……、上に行けば行くほど、私なんかの言葉にいちいち反応しないでしょ。」
「だろうな。だからと言ってお前が黙っている保証などどこにもない。」
「だから、私を殺す?」
彼は明らかにどうすべきか迷っている瞳をしていた。
「はは、優しいんだね、海兵さん。それじゃ、ちゃんと気をつけてお仕事してね。」
忍びの世界だったら瞬殺されるか、こちらがしていたか、どちらかだろう。
こんな優しい人が海軍にいるなら、海軍もまだ捨てたもんじゃないかもね。
そんな事を思った。
その後、カイドウとの戦いで孤軍ゆえ麦わら一味と共に闘わせてくれとお願いに来た彼を、ルフィと私だけが受け入れていた。
他の仲間は彼の事情も素性も知らないから彼を拒否していたっけ。そりゃあ私も仮に仲間の立場だったら怪しくて信用なんてできなかったけど。
私は知ってしまっていたから。
彼の優しい部分を。
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出会いはあまりにも唐突だった。
俺の秘密を握られたことがきっかけで初めて彼女と口を聞いた。
知っていたのは手配書に載っている写真と賞金額くらいで、他に彼女について知っていることは何もない。
本当に俺の事情を黙っているつもりなのか、最初は怪しんだ。
現にカイドウの幹部達に俺がスパイであることがバレた時、彼女がバラしたのだと思った。
しかし確認すればどうやらそうではないらしい。
つまり、彼女は本当に秘密をバラしていなかったのだ。
孤軍になった俺が麦わら一味と共闘を申し込んだ時、麦わらと彼女だけが俺を受け入れていた。
「いいぞ? 味方で。」
軽いノリでそう言う麦わらに、当然仲間達が待ったをかける。
「良くねぇ!!」
「黙ってろ船長!! このボケ!!」
そのブーイングの嵐の中、物おじせず言ってのけたのだ。彼女は。
「私も良いと思う、味方で。」
「ダメじゃ!!!」
「お前ぇの目は節穴か!?!?」
「何でテメェはたまにポンコツになんだ!?!?」
……仲間からの叱責にそ知らぬ顔をして、心配そうに俺を見ていた。
彼女は戦いが全て終わった後、仲間にバレないよう手負いの俺に少しばかり治療を施してくれた。
もっとも、その治療方法は見たこともないものだったが。
「気をつけて仕事してねって言ったじゃん! 何あっという間に立場追われてんの!?」
隠れて俺に治療をしながらヒソヒソと話しかける彼女に俺も小声で言い返す。
「何故バレたのかは俺にも分からん! だが、カイドウとビッグマムが消えたのは良い方に事が転んだな……。」
「うちの船長に感謝してよね。」
「ふっ、あぁ。それにしてもこの治療方法はなんだ? 体は確かに楽になってきているが……見たことのない治療方だ、能力者か?」
俺の問いかけに彼女は一瞬言葉を詰まらせた。
しかし少しの沈黙の後話し始める。
「………ドレークさんの秘密を私だけ知ってるのもフェアじゃないよね。」
一呼吸おいて、彼女は俺から目を逸らして言った。
「これは悪魔の実の能力じゃない。とだけ言っておく。」
その視線の動きが、これ以上は聞くなと暗に物語っていた。
「……不思議な力だ。」
その後黙って治療を受けた後俺は彼女に向き直って言う。
「麦わらの一味の鳴海、治療については礼を言う。それと、今後も俺のことは他言無用で頼む。」
「大丈夫だよ、別に海軍の動向とか私は全く興味ないから。」
ヘラリと笑って言う彼女に、こちらまで緊張の糸が解けかけた。
「……変わった奴だな。縁があればまたどこかで会おう。」
そう言い俺はマントを翻した。