生き残りの私達
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それからというもの、私は皆が寝静まった頃にアルベルのホテルに行って彼と行為を繰り返した。
王宮で秘密裏に行われた、ドレスローザで縁ができた人たちとの宴の日を除いて。
そうして、あっという間に出航の日の朝が来る。
出航は今日の昼。
私は昨夜、アルベルと別れを済ませて来た。
それだというのに、未練たらしく西の街を眺める私に、ルフィが言う。
「鳴海。お前、そろそろ決めろよ。」
「何を?」
唐突な言葉に、私は振り返ってルフィを見る。
「このまま俺達と旅を続けるか、船を降りてアイツと暮らすかーー」
その言葉に、一瞬頭の中が真っ白になるも、すぐに平静を装う。
「き、決まってるじゃん、このまま旅をーー」
しかしルフィは私の言葉を遮った。
「ーーそれとも、アイツも船に乗せて、一緒に旅するか!!」
「……!?」
思わず息を呑む。
ゾロがルフィに近づき胸ぐらを掴んで言う。
「おい、ルフィ! 何言ってんだ! ケジメつけたからって、アイツがしてきたことは変わらねぇぞ!」
騒ぎを聞きつけたクルーの皆が甲板に出て来た。
「だから何だよ。アイツは過去にちゃんとケジメ付けた男だ。未来は、どうにでも変えられる。」
その言葉に、ぬぐっとゾロが言葉に詰まる。
私は揺れる気持ちに戸惑いを隠しきれない。
アルベルと一緒にこの船で旅?
そんなの、したいに決まってる。
何度そんな夢を抱いたことか。
「……。でも……、私の、そんなわがままで……皆を嫌な気持ちにさせたくはーー」
私の震える声を、再びルフィが遮る。
「俺たちが! そんくらいで! 嫌な気持ちになると思ってんのか!!」
その表情は真面目そのもの。覇気すら感じられる。
「お前が今週、ずっと夜になるとアイツのとこに行ってたのは知ってる。」
先ほどよりはやや落ち着いた声色でルフィが言った。
「!!」
私は驚く。ナミやロビンに気づかれるならまだしも、ルフィにまで気づかれているとは思わなかったからだ。
「俺たちに隠すのは、俺たちに言えねぇことでも企んでるからかよ?」
私を睨みながら言うルフィの言葉に、私は肩がびくりと跳ねる。
「……! それは違う! 確かに夜は会いに行ってたけど! それは皆に知られたら恥ずかしいからってだけのことで! 決して皆を裏切る気持ちなんてない!!」
「俺たちを裏切るって何だよ。」
その表情は麦わら帽子で見えない。
「だから、そんな事考えてないって!」
「お前が好きな奴と一緒に居たいと思うことが!! 俺達を裏切る事になんのかよ!?」
その言葉に、私は一瞬言葉を詰まらせる。
「それは、でも……、だって……!」
わたしは再びだんだん声が震えてくる。
瞳も潤んできた。
ルフィが私にどんな言葉を求めているのか、混乱してよくわからない。
「だってじゃねぇ!! 言えよ!! お前の本心を!! アイツとも、俺たちとも、一緒に居てぇって!!!」
その言葉に、ついに私の瞳からポロリと涙が溢れた。
「……本当に、言っていいの…? そんなわがまま…。」
私の問いかけに、ルフィは大きく息を吸って答える。
「……良いに、決まってんだろ!!」
ボロボロと涙が流れてくる。
ゾロのため息と、皆が微笑む気配を感じ取った。
私はサニー号の芝生に膝をつき、土下座をする。
そして芝生に頭を擦り付けた。
「……どうか……どうかお願い、します……!! アルベルを、この船に乗せて下さい…!! 私は、皆ともアルベルとも、一緒に居た"い"っ!!!」
「当たり前だ。……良いよな、ゾロ?」
「……ったく。女に土下座までされちゃあ、仕方ねぇだろ。」
ゾロの言葉に、私は頭を上げて彼を見る。
「ただし。おめぇアイツの躾はしっかりしろよ。この船は海賊王の船だ。そのクルーとして相応しくない行動とったら、俺が問答無用で船から降ろすぞ。」
その言葉を聞き、私は頷く。
「……! 分かった。」
「ししし! そうと決まれば、迎えに行くぞ。全員で!!」
ルフィの言葉に、皆が笑う。
ナミとロビンが私に近寄り、両脇から私を支えて立ち上がらせてくれる。
「ほら、立ちなさいよ、鳴海。」
「ふふふ、良かったわね、鳴海。」
「うん。ありがとう……!」
私は溢れた涙を拭く。
船の見張りを買って出たフランキーを残し、私たちは西の街へ繰り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
皆でワイワイ話しながら、西の街をあるいていると、アルベルの泊まっているホテル"スティーブス"が見えてくる。
ふとそのホテルの入り口をみれば、マントを目深に被ったアルベルらしき人が丁度そこから去ろうとしているところだった。
背が高いからかなり目立っている。
「おいおい、あれって!」
ウソップも彼に気づいたようだ。
私は焦ってかけ出す。
アルベルは背が高いから、その歩幅も大きい。
私は思わず大声で彼の名を呼んだ。
「アルベル!!」
彼は弾かれたようにこちらを振り向く。
そして大股でこちらに近づくと、私の目の前に素早くしゃがんで小声でこう言った。
「おい……!! 公衆の面前で本名を大声で呼ぶな……!! これでも追われてる身なん、だーー」
彼は言葉を言い終わる前に、私の目の異変に気づいたらしい。
私の頬に手を添えて言う。
「ーー……お前、泣いたのか?」
少しだけ心配そうな雰囲気を醸し出しながら私を見るアルベルが、この場にいる私以外の気配を察知して私の後ろに目をやる。
「麦わらの一味が……こんな所に何の用だ?」
アルベルは心底不思議そうに言う。
「オメェ、俺たちの船に乗れよ。」
ルフィがどストレートに言った言葉に、アルベルは目を見開く。
「……!? ……正気か!? 何のためにだ!? 俺は元百獣海賊団の大看板、キングだぞ!?」
「鳴海のために決まってんだろ。」
至極当然のように言うルフィ。
それにアルベルは頭を横に振った。
「いや、仮にお前たちが良くても俺が良くない。俺はお前らの船にはーー」
「勘違いすんな、キング。」
ゾロが彼の言葉を遮って話出す。
「別に俺らはお前がどこで野垂れ死のうが興味もねぇし、関係もねぇがな。俺らの仲間が、土下座して頭下げてまでお前を船に乗せたいって言うから、仕方なくここに来てんだよ。」
「……!!」
それを聞いて私の顔をみるキング。
「ルフィが、本心を言えって言うから。言っちゃった。」
ヘラリと笑って言う私を信じられないとでもいうかの表情で見つめ、彼は俯いた。
その眉はグッと寄せられている。
「……いや、無理だ。俺にはお前達の船に乗る資格がねぇ。俺がしてきた過去は変わらねぇ。」
「でも、これからのことはどうにでも出来る。」
ルフィの言葉を聞き、じっと地面を見ながら何かを考えるようにしているアルベル。
その瞳には迷いが写っていた。
「そんなに悩むこと? 私は別に良いと思うけれど。」
ロビンの言葉にアルベルが顔を上げてそちらを見る。
「お前さん、カイドウの右腕だった過去と決別するために、己の右腕を捨ててまでケジメを付けたんじゃなかったんかい。」
ジンベエの言葉に、アルベルは言う。
「それとこれとは話が違う。どうケジメをつけようと、俺の罪は変わらねぇ。」
「ヨホホ。罪ならこれから償っていけば良いじゃありませんか。」
「そうだぞ! 一回間違ったって、人は変われるだろ!?」
必死に言うチョッパー。サンジがタバコの火を付けながら言葉を発する。
「ったく。男ならさっさと決めやがれ。このクソ野郎。」
「本当に……良いのか……。こんな、夢みないなことがあって……。」
アルベルの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
「ただしだ。鳴海にも言ってあるがな、もし本当に俺たちの船に乗るなら。お前ぇが少しでもおかしな行動を取った時には俺がもう一度お前を叩っ斬ることを覚えとけ。」
「"船を下ろす"から、"叩っ斬る"に変わってるし。」
ゾロの言葉にナミが呆れたように言う。
私はその様子を聞きながら微笑む。
そしてもう一度アルベルに向き直り言った。
「私と一緒に来てくれる? アルベル。」
彼は私を見ると、少しだけ後ろに下がって、なんと道路の真ん中で土下座をした。
「頼む、麦わら海賊団……!! お前達の船に、俺を乗せてくれ……!!」
「よし、決まりだな。」
満足そうにニヤリと笑うルフィ。
そうして私達はドレスローザを出航するため港に向かうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
アルベルを連れて船に戻れば、フランキーが彼を見て言う。
「おう、来たか。歓迎するぜ。」
「礼を言う。」
まっすぐフランキーの顔を見て言うアルベルに、サングラスをクイッと上げニヤリと笑って言うフランキー。
「まぁ、良いってことよ。」
そうして、私たちは"愛と情熱と妖精の国"ドレスローザを出航するのだった。