生き残りの私達
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百獣海賊団に勝利した私達はゾロとルフィが寝ている和室に案内されている。
そこで私は仲間の皆に探していた親友が見つかったことを報告した。
「再会出来たから、もう良いの。私に、これからもこの船で旅を続けさせて。」
「それはルフィも大歓迎じゃろうが……。」
ジンベエが釈然としない顔で言う。
「鳴海ちゃん、後悔してないかい? その親友ってのは……大看板のキング、なんだろ?」
サンジの言葉に少しだけ考える私。そして口を開く。
「……。後悔があるとするなら、アルが変わる前に、もっと早く探しに行かなかった事かな。」
「……そうかい。」
サンジがタバコを燻らせながらつぶやいた。
「これで良かったのか?」
チョッパーが心配そうに私を見て問いかける。
「もちろん。あのタイミングで海に出たからこそ得た仲間が居るし、私はルフィを海賊王にさせたいもの。」
「そうか。」
少しだけ安心したようなチョッパーに、笑いかける。
「うぉーん!! 泣かすじゃねぇか、オメェ!」
フランキーが涙と鼻水をダラダラと垂らしながら言う。
「鳴海がそれで良いなら、私達は何も言わないわ。」
「そうね。本当にアンタがそれで良いなら。」
ロビンとナミはそう言ってくれた。鋭い2人は、きっと私達がただの親友なんかじゃないことに気付いているだろう。
それでも彼女達は深くを聞いてはこなかった。
その優しさに、少しだけ救われた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
今は宴の真っ只中。
1人でしっぽり飲んでいると、隣にゾロが腰を下ろした。
「良かったのかよ。アイツ。」
アイツ、とは十中八九アルベルのことだろう。
私は少しの間を空けて答える。
「……うん。私達は進む道も、信じる男も違った。それだけよ。」
「なら、シャキッとしやがれ。」
ゾロの厳しめな慰めに、思わず笑いが溢れる。
「ふふ、うん。」
「そんなことより。お前、俺らに嘘つきやがったな?」
顔を顰めながら言ってくるゾロに問いかける。
「嘘?」
「"親友"だなんて、嘘っぱちじゃねぇか。ありゃあそれ以上の関係だろ。」
「………。何よ、見てたの?」
私がイタズラっぽく笑ってゾロを見れば、彼は噛み付くように答えた。
「見てねぇよ何も!! つうか、むしろ何してたんだよ!?」
「良いでしょ別に。ベロチューの1つや2つや3つや4つ……。」
「いや、しすぎだろ!? 未練タラタラか!!」
「キスしたからって未練があるわけじゃないのよ、お子様ね。」
「知るか、誰がお子様だ。心配して損したぜ。」
「あら、ありがとう。心配してくれて。」
「ったく。」
そう言って手に持ってる酒の入った瓢箪をグビっと飲むと、彼は立ち上がってルフィ達の元に戻って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
それから数日。
わたし達は次の島に行くことになった。
その後もたくさんの戦いを経て、ついにルフィは海賊王になった。
彼が海賊王になった後も、私達は旅を続けた。
仲間の故郷や、お世話になった人たちに会いに行く旅だ。
ある島へ向かっている航海の途中、新聞が船に届く。
ロビンがいつものように受け取って読みはじめる。
私は彼女の近くで海を見ていた。
するとロビンが私に深刻そうな顔で話しかける。
「鳴海。」
「何?」
彼女は新聞記事を私に見せてこう言った。
「元百獣海賊団のキングが、インペルダウンを脱獄したそうよ。」
「っはぁ!?」
私は思わず大きな声を上げ新聞を見る。
大きな見出しではないが、下の方にしっかり彼の顔写真が載っていた。
「嘘でしょ……協力者でもいない限り、あそこから脱獄なんて……。」
「でも、協力者の存在は新聞には載っていないわ。1人で脱獄したのか、それとも政府が協力者の存在を隠しているのか……分からないけれど。」
私は無言で新聞を彼女に返す。
「(アルベル……。アンタ今、どこで何してるの?)」
俯きながら、手をぎゅっと握りしめる。
「鳴海? 大丈夫?」
ロビンが心配そうに私に声をかける。
「えぇ。私が心配したところで、何もしてあげられないしね………。ちょっと、サンジに紅茶でも頼んでくるわ。」
「それが良いわ。」
そう言って、私はその場を後にした。
それから数日、私は心ここに在らずの日々を過ごした。
しかし1週間ほどでそれも落ち着いた。
私と彼は、既に違う道を進む者同士。
彼には彼の生き方がある。
そう自分に言い聞かせ、私は良い仲間に囲まれたことを噛み締めるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
それから数ヶ月。
今、私達は愛と情熱と妖精の国、"ドレスローザ"に来ていた。
ここには1週間ほど滞在するつもりでいる。
船を降りた私達は、初日は自由行動をする計画だ。
だから今はナミとロビンとショッピングの真っ最中。
「鳴海、あなたの好きそうな服があるわよ?」
「ほんとう?」
「ええ、ほら。」
ロビンに言われて彼女の指差す方を見てみると、背中が大きく開いたワンピースが飾られていた。
確かに私好みのワンピースだ。
ナミが試着室からひょっこり顔を出して言う。
「それ、私も思ったのよ! 鳴海に良さそうって! 背中が開いてるから翼も出せるし!」
「本当、試着させて貰おうかな。」
私は店員に許可を得て、試着室に入った。
サイズはぴったり、翼の出し入れも問題ない。
これは"買い"だわ。
せっかくだからこのまま着て観光の続きを楽しもう。
そう思って試着室から出ると、ナミも大量の服を持って隣の試着室から出てきた。
「私はこれ全部買うわ!」
嬉しそうに言うナミに微笑む。
「私もこのワンピース買う事にした。着たまま行こうかな。」
「良いわね、私もトップスを一つ買うわ。」
ロビンがそう言い、3人でお会計を済ませ店を出た時だった。
ナミの持ってた子電伝虫が鳴る。
「あら? 何かしら。」
そう言いながら子電伝虫をガチャリと取るナミ。
『おい、ナミ!! そこに鳴海はいるか?』
どうやら船番のゾロからのようだ。
「いるけど……一体どうしたの?」
私の方を見て言う彼女に電伝虫越しにゾロが言う。
『鳴海に今すぐ戻るよう伝えろ。"親友"が来てるってな。』
その言葉に私は息を呑む。
まさか。
ガチャリ、と言う音ともに子電伝虫が切れる。
「あっ、ちょっとゾロ!? もう! ほんっと勝手なんだから。」
「それより、早く行った方が良さそうね。」
ナミとロビンがこっちを見る。
「私達も一応、同行しましょ、ナミ。」
「当ったり前よ! 行くわよ、鳴海!」
「あ、ありがとう、2人とも。」
そうして私達はショップバッグを持ちながら船まで全力疾走するのだった。
海岸に着き、船が見えてくる。
すると船に大きな人影が見える。
この距離でもしっかり分かる、あれはアルベルだ。
「あれって!」
ナミやロビンも気づいたようだ。
私は思わず翼を出して最速で船に行く。
ナミとロビンが何か言ってるけど、よく聞こえない。
船に着地して、彼に向き直る。
私は思わずその名を呼んだ。
「アルベル……!!」
彼は私を視界に入れると、ふっと表情を和らげた。
不思議なことにアルベルは私達の船に大人しく座っている。
ゾロは刀に手をやって警戒しているが、戦った形跡はない。
彼はワノ国で戦った時と雰囲気が変わっている。
あの頃のようなハードな服ではなく、Tシャツに黒のパンツというラフな格好にマントを羽織っている。
ゾロに切られた右翼はサイボーグのような鉄の羽根がついていた。
「アンタ、何しに来たのよ!?……っていうか、脱獄した時は大丈夫だったの!? 一体どうやってあそこから出たのよ!? それに、その翼はどうやってーー」
「おいおい、質問なら一つずつにしてくれ。」
彼はクツクツと笑いながら左手を上げた。
「ならコイツも来たことだし、一つずつと行こうじゃねぇか。」
ゾロが私の前に出て言う。
「ここに何しに来た。」
「鳴海に会いに。」
アルベルは即答する。
「何のために。」
「会いたいと思うのに理由が必要か?」
その言葉にゾロが黙っていると、ナミとロビンが船に上がってきた。
「キングね。一体どうやって私達の居場所を突き止めたの?」
ロビンの問いかけに彼は素直に答える。
「海賊王の行った島は分かりやすい。お前らはどうやら、いい事をするのが好きなようだからな。島の人間に聞けば喜んで話すさ。そうやってお前らの大体の航路を予想した。そしてここ、ドレスローザに目星をつけた。半分賭けだったがな。」
「なるほどね。それで、何のために?」
「そうだな、強いて言えばーー」
彼はロビンから私に目を向けると、ゾロでも目で追えないほどの速さで私の前へ来た。
「なっ!?」
驚いて振り向くゾロ。
「ーーこうするためだ。」
そう言い、彼はふわりと私を抱きしめた。
「なに人前でイチャついてんだ!! まだ話は終わってねぇぞ!!」
ゾロが噛みつきそうな顔でアルベルに言う。
私は思わずその背に手を回そうとしてしまった。
そして気づく。
「……!? アル、右腕はどうしたのっ……!?」
そう、彼の右腕は上腕の途中から欠損していた。
風が吹きマントが靡いたことで、その失われた部分が曝け出される。
ゾロ、ナミ、ロビンが驚いた顔をしているのが気配でわかる。
アルベルは私を抱きしめたまま話し出した。
「俺達はやり方を間違えた。多くの人々を苦しめ、搾取した。俺はカイドウさんの右腕として長い時間を過ごした。お前に言われた言葉をインペルダウンで何度も考え、自分がいかに大きな罪を背負っているかを自覚したよ。……だから、今は亡きカイドウさんの右腕だった自分にケジメをつけるためーー」
彼は少しだけ私を離し、目を合わせる。
そして言った。
「ーー自分の右腕を、捨ててきた!」
「!!!」
私達は息を呑む。
彼の表情は憑き物が取れたかのように清々しい。
私は瞳からポロリと涙が溢れた。
「馬っ鹿じゃないの……!? ……そんなんで、罪が償えるわけないじゃない……!! そんなんで、私が許すと思ったの……!?」
「いいや。ただ、これくらいはしないとお前はこうさせてくれないだろ?」
そう言うと、彼は私の頭を掴んでポスリとその胸に押し付ける。
ゾロが刀を鞘に戻す音がした。
ナミとロビンも警戒を解いたようで、微笑んでさえいるようだ。
私はついに、声を上げて泣いた。
「……っ! うわ〜〜〜ん!! アルベルゥ〜、会いたかった〜〜〜!!」
言いながら彼にしがみつく。
「……! あぁ、俺もだ。」
彼も声を震わせて言う。
「……はぁ、ったく。」
ゾロがガシガシと頭を掻く。
「良かったね、鳴海。」
そう呟くナミ。
気付けば辺りは夕方になっている。
そして船にはゾロゾロ仲間達が集まってきた。
例の新聞記事で皆アルベルの素顔を知ったから、彼があのキングであることに気づくのは当たり前のことだ。
「おいおい、こりゃあどういう状況だぁ!?」
フランキーが驚いたように言う。
「んなぁ!? おいおいおい、テメェ、キングじゃねぇか!! 鳴海さんから離れやがれ!! 泣くほど嫌がってんじゃねぇか!!」
サンジの言葉にアルベルは私から手を退けて上にあげるが、私がアルベルにしがみついて離さない。
「どうやら嫌がってはいないようだが?」
勝ち誇ったように言うアルベル。
「何ぃー!? てめぇ生意気な!! 3枚におろしてやる!!」
サンジは今にも蹴りかかりそうだ。
「やめとけグル眉。」
意外にも、それを止めたのはゾロ。
「わざわざケジメつけてコイツに会いに来てんだ。野暮ってもんだろ。」
「へいへいへい、クソマリモ!! お前は!! それで!! 良いのかよ!? 俺達の鳴海さんがあんな奴に……!!」
「別に構わねぇよ。俺らに危害を与えるつもりもないらしいしな。」
「危害を加えるつもりがないなら? 俺も別に構わねぇ!」
隅に隠れていたウソップが出てくる。
「海賊として仁義を通したっちゅうことなら、まぁ、ええかいのう。」
顎に手をやりながら考えるように言うジンベエ。
「ヨホホホ! あら素敵! 胸がドキドキしますね〜、私、ドキドキする胸、無いんですけどぉ!」
「あん? だれだオメェ。」
ルフィだけは、新聞など読まないし人の話も聞かないので、彼が誰か分かっていない。
「お前! 元百獣海賊団のキングだな!?」
私達を見て嬉しそうに言うチョッパーの言葉に驚くルフィ。
「え〜〜〜!! あの黒ずくめの〜〜〜!? オメェこんなとこで何してんだ!?」
「だから!! ケジメつけて鳴海に会いに来てるって言っただろうが!!」
ゾロが再び噛み付くようにルフィに言う。
「何だ、そうなのか。じゃあ良いじゃねぇか。メシ食ってくか?」
「何でそうなんだよ!!」
驚くゾロに、サンジも頷く。
「いや全くだ! こんな野郎に飯を作るなんざ俺はごめんだぜ!」
「そうか?」
頭に疑問符を浮かべるルフィ。
アルベルが私を自身からゆっくりと引き剥がし言う。
「そこまで世話になるつもりはねぇ。目的は果たしたしな。」
そうして彼は船から飛び立とうとする。
私はその温もりが離れていくことに胸が締め付けられる。
思わず彼のマントを掴んだ。
「アル! 自分の目的だけ果たしてさっさと帰るなんて、随分自分勝手じゃない……!」
私はズビズビと鼻水を啜りながら文句を言う。
「お前も俺に、何か用でもあんのかよ?」
飛び立つのをやめたアルベルが、微笑みながら私にもう一度向き直り、私の涙を拭って言う。
「ある! ちょっと待ってて!」
そう言って、私はあるものを取りに女部屋へ行くのだった。