生き残りの私達
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8歳の頃、海軍に両親が殺されて私は研究施設に入れられた。
毎日毎日、モルモットとして実験される日々。
それもこれも、私がヴァンパイア族なんかに生まれたから。
普通の人間に生まれてたなら良かったのに。
そんな風に卑屈になっていた私に、転機が訪れたのは15歳の頃。
同じ施設に私より少し年下の男の子が実験体として入ってきたらしい。
それから数日して、ある研究員達の話を盗み聞きした。
「聞いたか? 例の新しいモルモット。随分と威勢が良いらしいぜ。」
「くくっ、最初のうちだけだろ。」
「炎の耐久実験だったか……。」
「バケモンだよな、ありゃあ。」
私は興味本位で自分の部屋を抜け出して、その男の子に会いに行った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
男の子の部屋は案外すぐに見つかった。
私の部屋とそれほど離れていなかったからだ。
コンコンとノックをして無駄に重たい鉄製の扉を開ける。
「誰だ!?」
男の子は床に座ったまま、警戒してこちらを睨む。
「初めまして。私は鳴海。アンタと同じモルモット。」
モルモット、その言葉に少しだけ警戒心を緩めたらしい彼はその目つきを変える。
「……。何の用だ。」
「別に? ずっとここに1人だったから、誰かと話してみたくて。隣、いい?」
「好きにしろ。」
ぶっきらぼうに言う男の子。
年頃の男の子はみんなこんな感じなんだろうか。
そんなことを思っていれば、彼が私に問いかける。
「………お前、ここに来てどれくらい経つ。」
「もう7年くらいになるかな。」
「くそっ! こんな場所に何年もいられるか!!」
そう言って床を殴る彼を横目で見つつ、私は気になったことを聞く。
「アンタ、名前は?」
少しの沈黙の後、彼は口を開いた。
「……アルベル。」
「アルベル……じゃああだ名はアルだね。」
「はぁ? 勝手にあだ名なんか付けんな。」
「良いじゃん別に。」
ふふふ、と笑う私に拍子抜けしたような顔をするアルベル。
「お前、何で実験なんかされてんだ? 見たところちょっとデカいだけの普通の人間じゃねぇか。」
「今は普通の姿にしてるからね。私はヴァンパイア族の生き残り。本当の姿になったら羽が生えるし牙も生えるよ?」
「へぇ。じゃあ人の生き血を飲むのか。」
「ううん、輸血パックを月に一回もらってる。生き血なんてほとんど飲んだことないよ。」
「なんだ、思ったより普通だな。」
「アルはどんな種族なの?」
「俺は……ルナーリア族っていう一族の、生き残りだ。」
「ふぅん。聞いたことない。」
「興味ないなら聞くな。」
「別にないわけじゃないよ。」
くすりと2人で笑い合う。
思ったよりも気が合いそう、それが彼に対して感じた第一印象だった。
それから私たちは数日に一回、お互いの部屋を行ったり来たりするようになった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
その日の実験は私にとって過酷なものだった。
日光の下を歩けないヴァンパイア族なのに、太陽光照射の耐久実験の日だったのだ。
この実験は何度もしているが、何度やっても慣れない1番嫌いな実験だ。
「いやぁあ"ぁあ"ぁあ!!」
全身に火傷を負い続けて叫び声を上げる。
そのうちに声も出なくなってきた。
体がこのまま焼き尽くされるのではないかと、何度も死を覚悟した。
永遠にも感じられる時間を耐え抜いた私は文字通り自室に投げ捨てられた。
そしてトレイに乗ったパンとスープと輸血パックがごとりと置かれる。
しかし私にはそれに手を伸ばす気力がない。
まだ全身がヒリヒリするし、叫びすぎて体力も尽きている。
虚しくて久しぶりに涙が流れた。
流れる涙をそのままに、ダラリと床に寝そべっていると、部屋の扉が開いた。
「おい、大丈夫か?」
そこに居たのはアルベルだった。
「……ア……ル…。」
喉が枯れたせいでまともに彼の名を呼ぶことも出来ない。
彼は私の体を見て目を見開いた。
「……!酷い火傷じゃねぇか!」
そう言いながらこちらに駆け寄り私の体を起き上がらせる。
「大丈夫か? この輸血パック飲めば回復するんだよな? 今飲ませてやる。」
アルベルは輸血パックの封を切り、私の口元に近づけた。
私はアルに体を預けたまま、ぼたぼたとそれを溢しながらも何とか飲み干す。
火傷はみるみるうちに治っていったが、傷付いた心はそう簡単には治らない。
私はアルベルにしなだれかかったまま彼の首元に頬を寄せた。
彼は一瞬だけ体を固くしたが、私の背中に腕を回してくれる。
「お前の叫び声がこっちまで聞こえてきた。」
「……そっか。」
「……何されたんだ?」
聞きづらそうにしながらも問いかけてくる彼に、私は正直に話す。
「太陽光の……照射実験。」
「はぁ!? そんなことしたら、お前死んじまうじゃ……!?」
「うん……何回も死ぬかと思った。」
アルがギリっと歯を噛み締める音がした。
「アイツら許せねぇ!!」
そう言って走り出そうとする彼の腕を私は掴む。
「待って! ここに居てよ! 1人は、嫌だ。」
またしても流れてくる涙をそのままに私はアルベルに懇願した。
彼は少しだけ迷う素振りを見せたものの、結局私のそばに戻ってくる。
そうして隣に座ったアルベルは手を繋いでくれた。
無言でそうしていると、だんだんと眠くなってくる。
私が船を漕ぎ出すと、彼は優しく私に話しかけた。
「おい、眠いなら横になれよ。」
「……膝枕して。」
「仕方ねぇなぁ。ほらよ。」
そう言ってあぐらをかいた彼の太ももに頭を乗せる。
お世辞にも寝心地が良いとは言えない膝枕。
それでも、残酷すぎる実験の後に感じる人の温もりが私を安心させた。
「アル、いつか、こんな所……絶対……出よう…ね…。」
眠りに落ちながらアルベルに言う。
「あぁ、絶対だ。」
アルベルは私の手を握りしめる力を強めたのだった。
毎日毎日、モルモットとして実験される日々。
それもこれも、私がヴァンパイア族なんかに生まれたから。
普通の人間に生まれてたなら良かったのに。
そんな風に卑屈になっていた私に、転機が訪れたのは15歳の頃。
同じ施設に私より少し年下の男の子が実験体として入ってきたらしい。
それから数日して、ある研究員達の話を盗み聞きした。
「聞いたか? 例の新しいモルモット。随分と威勢が良いらしいぜ。」
「くくっ、最初のうちだけだろ。」
「炎の耐久実験だったか……。」
「バケモンだよな、ありゃあ。」
私は興味本位で自分の部屋を抜け出して、その男の子に会いに行った。
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男の子の部屋は案外すぐに見つかった。
私の部屋とそれほど離れていなかったからだ。
コンコンとノックをして無駄に重たい鉄製の扉を開ける。
「誰だ!?」
男の子は床に座ったまま、警戒してこちらを睨む。
「初めまして。私は鳴海。アンタと同じモルモット。」
モルモット、その言葉に少しだけ警戒心を緩めたらしい彼はその目つきを変える。
「……。何の用だ。」
「別に? ずっとここに1人だったから、誰かと話してみたくて。隣、いい?」
「好きにしろ。」
ぶっきらぼうに言う男の子。
年頃の男の子はみんなこんな感じなんだろうか。
そんなことを思っていれば、彼が私に問いかける。
「………お前、ここに来てどれくらい経つ。」
「もう7年くらいになるかな。」
「くそっ! こんな場所に何年もいられるか!!」
そう言って床を殴る彼を横目で見つつ、私は気になったことを聞く。
「アンタ、名前は?」
少しの沈黙の後、彼は口を開いた。
「……アルベル。」
「アルベル……じゃああだ名はアルだね。」
「はぁ? 勝手にあだ名なんか付けんな。」
「良いじゃん別に。」
ふふふ、と笑う私に拍子抜けしたような顔をするアルベル。
「お前、何で実験なんかされてんだ? 見たところちょっとデカいだけの普通の人間じゃねぇか。」
「今は普通の姿にしてるからね。私はヴァンパイア族の生き残り。本当の姿になったら羽が生えるし牙も生えるよ?」
「へぇ。じゃあ人の生き血を飲むのか。」
「ううん、輸血パックを月に一回もらってる。生き血なんてほとんど飲んだことないよ。」
「なんだ、思ったより普通だな。」
「アルはどんな種族なの?」
「俺は……ルナーリア族っていう一族の、生き残りだ。」
「ふぅん。聞いたことない。」
「興味ないなら聞くな。」
「別にないわけじゃないよ。」
くすりと2人で笑い合う。
思ったよりも気が合いそう、それが彼に対して感じた第一印象だった。
それから私たちは数日に一回、お互いの部屋を行ったり来たりするようになった。
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その日の実験は私にとって過酷なものだった。
日光の下を歩けないヴァンパイア族なのに、太陽光照射の耐久実験の日だったのだ。
この実験は何度もしているが、何度やっても慣れない1番嫌いな実験だ。
「いやぁあ"ぁあ"ぁあ!!」
全身に火傷を負い続けて叫び声を上げる。
そのうちに声も出なくなってきた。
体がこのまま焼き尽くされるのではないかと、何度も死を覚悟した。
永遠にも感じられる時間を耐え抜いた私は文字通り自室に投げ捨てられた。
そしてトレイに乗ったパンとスープと輸血パックがごとりと置かれる。
しかし私にはそれに手を伸ばす気力がない。
まだ全身がヒリヒリするし、叫びすぎて体力も尽きている。
虚しくて久しぶりに涙が流れた。
流れる涙をそのままに、ダラリと床に寝そべっていると、部屋の扉が開いた。
「おい、大丈夫か?」
そこに居たのはアルベルだった。
「……ア……ル…。」
喉が枯れたせいでまともに彼の名を呼ぶことも出来ない。
彼は私の体を見て目を見開いた。
「……!酷い火傷じゃねぇか!」
そう言いながらこちらに駆け寄り私の体を起き上がらせる。
「大丈夫か? この輸血パック飲めば回復するんだよな? 今飲ませてやる。」
アルベルは輸血パックの封を切り、私の口元に近づけた。
私はアルに体を預けたまま、ぼたぼたとそれを溢しながらも何とか飲み干す。
火傷はみるみるうちに治っていったが、傷付いた心はそう簡単には治らない。
私はアルベルにしなだれかかったまま彼の首元に頬を寄せた。
彼は一瞬だけ体を固くしたが、私の背中に腕を回してくれる。
「お前の叫び声がこっちまで聞こえてきた。」
「……そっか。」
「……何されたんだ?」
聞きづらそうにしながらも問いかけてくる彼に、私は正直に話す。
「太陽光の……照射実験。」
「はぁ!? そんなことしたら、お前死んじまうじゃ……!?」
「うん……何回も死ぬかと思った。」
アルがギリっと歯を噛み締める音がした。
「アイツら許せねぇ!!」
そう言って走り出そうとする彼の腕を私は掴む。
「待って! ここに居てよ! 1人は、嫌だ。」
またしても流れてくる涙をそのままに私はアルベルに懇願した。
彼は少しだけ迷う素振りを見せたものの、結局私のそばに戻ってくる。
そうして隣に座ったアルベルは手を繋いでくれた。
無言でそうしていると、だんだんと眠くなってくる。
私が船を漕ぎ出すと、彼は優しく私に話しかけた。
「おい、眠いなら横になれよ。」
「……膝枕して。」
「仕方ねぇなぁ。ほらよ。」
そう言ってあぐらをかいた彼の太ももに頭を乗せる。
お世辞にも寝心地が良いとは言えない膝枕。
それでも、残酷すぎる実験の後に感じる人の温もりが私を安心させた。
「アル、いつか、こんな所……絶対……出よう…ね…。」
眠りに落ちながらアルベルに言う。
「あぁ、絶対だ。」
アルベルは私の手を握りしめる力を強めたのだった。