夢でも貴方と
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ある日の夜のこと。
仕事終わりに、2人分のお酒を買って家路に着く。
カツカツとヒールを鳴らす。
いつもと違ったのは、背後に誰かの気配を感じたこと。背中に冷や汗が伝う。
もうすぐ私の部屋のあるマンションだ。
私は道の角を曲がり、マンションまでの一本道を走り出した。
急いでエレベーターに乗り"閉める"ボタンを連打する。
階段で追いかけられている可能性もある。私の部屋はエレベーターから出て少し離れている。
その距離をダッシュして家の鍵を開けようとするも、手が震えてうまく鍵が開けられない。
なんとか鍵を開けて中に入った瞬間、私は乱暴に扉を閉めて鍵を閉め、玄関に座り込んだ。
ジンベエがいつもと違う雰囲気に気づいたのか、玄関へ顔を覗かせた。
「どうしたんじゃ。今日はやけに慌てて……!」
私の姿を見て驚いた顔をした彼は、言葉を全て言うことなくこちらに急いで近寄ってきた。
「どうした! 顔色が真っ青じゃ!」
「なんか………、誰かに、追われてた気がして……。」
「何?」
ジンベエは眼光を鋭くした。
まるでマフィアやヤクザを彷彿とさせるその目つき。しかし私はそれを恐れるどころか、安心感さえ覚えた。
「体が震えとる。」
彼は私の背中を優しい手つきで撫でる。
「そんなとこに座っとると余計に冷える。中に入るぞ。」
「……うん。」
そう言って立ち上がった瞬間、家のインターホンが鳴り響いた。
そのタイミングに私はビクリと体を跳ねさせて、思わずジンベエの着物にしがみつく。
「と、とりあえず、インターホン出てみる……。」
ジンベエは無言でこちらを見守ってくれている。
"ピッ"という機会音とともに、"はい"と返事をすれば、元気の良い声がインターホン越しに聞こてきた。
「宅配便でーす!」
思わず"はぁ"と安堵のため息が出る。
そういえば、ジンベエのために簡単なレシピ本をポチったんだった。
そんな事を思いながら玄関に行こうとすれば、ジンベエが私の腕を掴んだ。
「ワシが出る。」
「え!? だめだよ! 通報されたらジンベエ見つかっちゃう!」
「しかしだな、お前さんを追ってきた奴という可能性もある。」
その言葉に若干肝が冷えるのを感じる。
しかし宅配便の人は制服をちゃんと着ていた。
確かに注文もした。
それでもジンベエの言うことも一理ある。
少し考えて、私は彼の目を見た。
「わかった。じゃあ、危険だと思ったらジンベエのこと呼んでも良い?」
彼は海賊だ。多くの戦いを経験しているし、体も大きい。そんじょそこらのチンピラなら目つきだけで逃げ出すだろう。
そう思い提案するが、彼はあまり納得していないようだ。
「………。」
「私が呼ぶまでは出てきちゃだめだよ、絶対。ジンベエまで危なくなっちゃう。」
私の言い分を聞き、彼は目つきをさらに険しくさせた。
「ワシのことなどどうでも良い!」
「良くない!」
私も彼に食ってかかる。
しばし睨み合い、私の本気度が伝わったのか、ジンベエはしぶしぶ頷いた。
「わかった。だが、少しでも危ないと思ったらすぐに駆けつけるぞ。」
「……うん。ありがとう。」
ジンベエは玄関近くの脱衣所に待機してくれることになった。
私はドクドクと脈打つ鼓動を感じながら、玄関の扉を開けた。
「はーい。」
「久しぶりだなぁ、鳴海。」
その男の顔を見て、私は冷水を浴びた気分になる。
どうして、なんで。身体が震える。
いや、それよりこの扉を閉めなければ。
本能のままに、勢いよくドアノブを引っ張った。
しかし男はドアの隙間にスニーカーを挟んで扉をこじ開けた。
「おいおい、久しぶりに会ってその態度はねぇだろ?」
男が玄関へと入って来る。
私は後ずさった。
「何の用?」
「つれねぇなぁ。なぁ、俺らもう一回やり直そうぜ。」
「何の冗談? 笑えない。今すぐ帰って。」
私の冷たい言葉に男は顔色を変えた。
「あぁ!? てめぇ、誰に口聞いてんだ!?」
ドカリ
私は肩を思い切り突き飛ばされて後ろに体を投げ出される。
尻餅をつき手のひらで体を支えたせいで、お尻も手のひらも痛い。
「お前みたいなやつが1人で生きていけるわけーー」
そう、その台詞。
今まで何度も聞いたその言葉。
それが言い終わる前に、ジンベエの声が玄関に響き渡った。
「おい。」
男が私の奥にいるジンベエを見る。
「女に手をあげるとは、男の風上にもおけんな。」
目の前の男が混乱している。
「……なっ…!? なんだお前…! 何モンだ!?」
「お前に名乗る名などないわ! 今すぐ消えろ!!」
ジンベエの眼光の鋭さに、男は息を呑んだ。
「ひっ!! ば、化け物……!!」
その言葉に、私はピクリと反応する。
「何ですって!? ちょっと! 謝りなさーー」
「良い。言わせておけ。」
私が言い終わる前に男は逃げ、ジンベエが私の肩に手を置きそう言った。
「でも! アイツ酷いこと言った!! 私が許せない!!」
「そもそも、アレが普通の反応じゃ。」
「そんな……。」
悲しいことを言うジンベエに、私まで悲しくなった。
そしてふと、思いだす。
「ていうか、私が呼ぶまで出てきちゃダメって言ったじゃん……そういえば。」
「お前さんがあんな目に遭って黙っておれるワシじゃと思うか。」
彼は反省の色ひとつ見せず堂々と言い切った。
まったく格好いい魚人だ。
「ふふ。ありがとう。助かった。」
「うむ。」
安心したら擦りむいた手のひらの痛みが襲ってきた。
いたた……と言う私に、ジンベエが口を開いた。
「どれ、立てるか。向こうで手当てしてやろう。」
「うん。」
ジンベエは私に手を差し出した。
私はその手を取って、いまだ震える足で何とか立ち上がる。
そのまま手を繋いで部屋に戻ると、彼は私をベッドへと誘導した。
「救急箱が、そこに……。」
私はジンベエに指で指し示す。
「これじゃな。」
棚の下の段に収まっているそれを取り出すと、彼はそれを私の隣に置いた。
私は中にあるものを指さして言う。
「これが消毒液。」
「これか。……ちとしみるぞ。」
「ん。」
手のひらにポタリポタリとこぼれ落ちるそれは、少しだけヒリヒリとする。
ジンベエが絆創膏をつまみ、やりずらそうにしながらそれを開けた。
そして不器用ながらも私の掌にそれを貼ってくれる。その手つきが思いの外優しくて、私は我慢していた涙が溢れ出てきた。
それにジンベエがギョッとする。
「なっ! そ、そんなに痛かったか!? すまん!」
オロオロしている彼に、首を振る。
「そうじゃなく"て"……。」
ジンベエは私の顔を見て、険しい表情になった。
「あの男か。 お前さん、あやつと付き合うておったんか?」
その問いかけに頷く。
私は思わず、ジンベエに話し出してしまうのだった。
私と彼の、馬鹿みたいな話を。
仕事終わりに、2人分のお酒を買って家路に着く。
カツカツとヒールを鳴らす。
いつもと違ったのは、背後に誰かの気配を感じたこと。背中に冷や汗が伝う。
もうすぐ私の部屋のあるマンションだ。
私は道の角を曲がり、マンションまでの一本道を走り出した。
急いでエレベーターに乗り"閉める"ボタンを連打する。
階段で追いかけられている可能性もある。私の部屋はエレベーターから出て少し離れている。
その距離をダッシュして家の鍵を開けようとするも、手が震えてうまく鍵が開けられない。
なんとか鍵を開けて中に入った瞬間、私は乱暴に扉を閉めて鍵を閉め、玄関に座り込んだ。
ジンベエがいつもと違う雰囲気に気づいたのか、玄関へ顔を覗かせた。
「どうしたんじゃ。今日はやけに慌てて……!」
私の姿を見て驚いた顔をした彼は、言葉を全て言うことなくこちらに急いで近寄ってきた。
「どうした! 顔色が真っ青じゃ!」
「なんか………、誰かに、追われてた気がして……。」
「何?」
ジンベエは眼光を鋭くした。
まるでマフィアやヤクザを彷彿とさせるその目つき。しかし私はそれを恐れるどころか、安心感さえ覚えた。
「体が震えとる。」
彼は私の背中を優しい手つきで撫でる。
「そんなとこに座っとると余計に冷える。中に入るぞ。」
「……うん。」
そう言って立ち上がった瞬間、家のインターホンが鳴り響いた。
そのタイミングに私はビクリと体を跳ねさせて、思わずジンベエの着物にしがみつく。
「と、とりあえず、インターホン出てみる……。」
ジンベエは無言でこちらを見守ってくれている。
"ピッ"という機会音とともに、"はい"と返事をすれば、元気の良い声がインターホン越しに聞こてきた。
「宅配便でーす!」
思わず"はぁ"と安堵のため息が出る。
そういえば、ジンベエのために簡単なレシピ本をポチったんだった。
そんな事を思いながら玄関に行こうとすれば、ジンベエが私の腕を掴んだ。
「ワシが出る。」
「え!? だめだよ! 通報されたらジンベエ見つかっちゃう!」
「しかしだな、お前さんを追ってきた奴という可能性もある。」
その言葉に若干肝が冷えるのを感じる。
しかし宅配便の人は制服をちゃんと着ていた。
確かに注文もした。
それでもジンベエの言うことも一理ある。
少し考えて、私は彼の目を見た。
「わかった。じゃあ、危険だと思ったらジンベエのこと呼んでも良い?」
彼は海賊だ。多くの戦いを経験しているし、体も大きい。そんじょそこらのチンピラなら目つきだけで逃げ出すだろう。
そう思い提案するが、彼はあまり納得していないようだ。
「………。」
「私が呼ぶまでは出てきちゃだめだよ、絶対。ジンベエまで危なくなっちゃう。」
私の言い分を聞き、彼は目つきをさらに険しくさせた。
「ワシのことなどどうでも良い!」
「良くない!」
私も彼に食ってかかる。
しばし睨み合い、私の本気度が伝わったのか、ジンベエはしぶしぶ頷いた。
「わかった。だが、少しでも危ないと思ったらすぐに駆けつけるぞ。」
「……うん。ありがとう。」
ジンベエは玄関近くの脱衣所に待機してくれることになった。
私はドクドクと脈打つ鼓動を感じながら、玄関の扉を開けた。
「はーい。」
「久しぶりだなぁ、鳴海。」
その男の顔を見て、私は冷水を浴びた気分になる。
どうして、なんで。身体が震える。
いや、それよりこの扉を閉めなければ。
本能のままに、勢いよくドアノブを引っ張った。
しかし男はドアの隙間にスニーカーを挟んで扉をこじ開けた。
「おいおい、久しぶりに会ってその態度はねぇだろ?」
男が玄関へと入って来る。
私は後ずさった。
「何の用?」
「つれねぇなぁ。なぁ、俺らもう一回やり直そうぜ。」
「何の冗談? 笑えない。今すぐ帰って。」
私の冷たい言葉に男は顔色を変えた。
「あぁ!? てめぇ、誰に口聞いてんだ!?」
ドカリ
私は肩を思い切り突き飛ばされて後ろに体を投げ出される。
尻餅をつき手のひらで体を支えたせいで、お尻も手のひらも痛い。
「お前みたいなやつが1人で生きていけるわけーー」
そう、その台詞。
今まで何度も聞いたその言葉。
それが言い終わる前に、ジンベエの声が玄関に響き渡った。
「おい。」
男が私の奥にいるジンベエを見る。
「女に手をあげるとは、男の風上にもおけんな。」
目の前の男が混乱している。
「……なっ…!? なんだお前…! 何モンだ!?」
「お前に名乗る名などないわ! 今すぐ消えろ!!」
ジンベエの眼光の鋭さに、男は息を呑んだ。
「ひっ!! ば、化け物……!!」
その言葉に、私はピクリと反応する。
「何ですって!? ちょっと! 謝りなさーー」
「良い。言わせておけ。」
私が言い終わる前に男は逃げ、ジンベエが私の肩に手を置きそう言った。
「でも! アイツ酷いこと言った!! 私が許せない!!」
「そもそも、アレが普通の反応じゃ。」
「そんな……。」
悲しいことを言うジンベエに、私まで悲しくなった。
そしてふと、思いだす。
「ていうか、私が呼ぶまで出てきちゃダメって言ったじゃん……そういえば。」
「お前さんがあんな目に遭って黙っておれるワシじゃと思うか。」
彼は反省の色ひとつ見せず堂々と言い切った。
まったく格好いい魚人だ。
「ふふ。ありがとう。助かった。」
「うむ。」
安心したら擦りむいた手のひらの痛みが襲ってきた。
いたた……と言う私に、ジンベエが口を開いた。
「どれ、立てるか。向こうで手当てしてやろう。」
「うん。」
ジンベエは私に手を差し出した。
私はその手を取って、いまだ震える足で何とか立ち上がる。
そのまま手を繋いで部屋に戻ると、彼は私をベッドへと誘導した。
「救急箱が、そこに……。」
私はジンベエに指で指し示す。
「これじゃな。」
棚の下の段に収まっているそれを取り出すと、彼はそれを私の隣に置いた。
私は中にあるものを指さして言う。
「これが消毒液。」
「これか。……ちとしみるぞ。」
「ん。」
手のひらにポタリポタリとこぼれ落ちるそれは、少しだけヒリヒリとする。
ジンベエが絆創膏をつまみ、やりずらそうにしながらそれを開けた。
そして不器用ながらも私の掌にそれを貼ってくれる。その手つきが思いの外優しくて、私は我慢していた涙が溢れ出てきた。
それにジンベエがギョッとする。
「なっ! そ、そんなに痛かったか!? すまん!」
オロオロしている彼に、首を振る。
「そうじゃなく"て"……。」
ジンベエは私の顔を見て、険しい表情になった。
「あの男か。 お前さん、あやつと付き合うておったんか?」
その問いかけに頷く。
私は思わず、ジンベエに話し出してしまうのだった。
私と彼の、馬鹿みたいな話を。