夢でも貴方と
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「えっ……、えっ!?」
私は混乱した。
今日は休日で、食料品を買いに出掛けていた。
そして帰ってきて部屋の扉を開けたらジンベエがいたのだ。
「何で!?」
ドサリと食料品の入ったエコバッグが床に落ちる。
「そりゃあこっちの台詞じゃい。」
彼は煙管をふかしながら私のダブルベッドの上に座っている。
「てか、えっ、ジンベエって本当に存在したんだ。」
「そっちこそじゃろうが。」
お互い、夢の中に出てくる人物が、本当に存在していたことに驚く。
心のどこかで"この人は夢が作り出した人物だ"と、2人とも思っていたからだ。
鳴海はぺたぺたと歩いてジンベエの手にペトリと触れてみた。
実体だ。確かにここに存在している。
自分の頬をつねってみても、痛みがある。
夢ではないことは明白だった。
「ははは。まさか。じゃあなに、違う世界から来たってこと?」
「むぅ。それじゃあ、やはりここはお前さんの住んどる世界ということか。」
ジンベエは冷静に状況を分析した。
そしてベッドから立ち上がり、窓の外の世界を見て驚く。
自分のいた世界ではあり得ない文明がそこに広がっていたからだ。
「どうしよう、こんなこと他の誰にも知られちゃならない。」
鳴海は焦って、窓のカーテンを閉めた。
暗くなった部屋の電気をパチリとつける。
「ジンベエ。こうならったら、貴方が元の世界に帰れるまではここで生活してもらうけど、良い?」
「それは助かるが……お前さんはそれで良いんか? 仮にも年頃の女が魚人と言えど男を住まわせることになるんじゃぞ?」
「それは大丈夫。ジンベエのこと信頼してるし。それよりジンベエの存在がこの世界で知れ渡ったら、大変なことになる。だから本当に申し訳ないけど、この部屋からは帰れるまで出られないと思って。」
申し訳なさそうに言う彼女に、ジンベエは頷く。
「構わん。恩にきる。」
ジンベエは夢の中で鳴海からこの世界のことを聞いていた。
ここでは魚人が架空の生物であることも、海賊が身近な存在でないことも知っている。
おそらく自分の存在がこの世界に知れ渡れば、最悪の事態になるだろうことも理解していた。
だから鳴海の提案に有り難く乗ったのだった。
「それにしても、前から思ってたけど本当に大きいね。ジンベエのサイズの服はこの世界にないから、私が適当に作ろうかな。」
「服までせわになるわけにはいかん。これ一枚で十分じゃ。」
彼は今自身が着ている着物を握ってそう言った。
が、鳴海がそれに意を唱える。
「そうは言っても、洗い替えがいるでしょ? 簡単なものしか作れないけど……それでも良い?」
「………。何から何まですまん。」
ジンベエは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「気にしないで。」
鳴海はにっこりと笑う。
そして床に落ちたままのエコバッグを持つと冷蔵庫へと向かった。
食料品を冷蔵庫の中に適当に入れて行く。
「(今日の晩御飯が2人分になっちゃったけど、カレーを多めに作る予定だったからちょうど良かった。)」
そんな事を思いながら空になったエコバッグを畳み、バッグの中に戻した。
ジンベエは彼女の様子を観察するように見ている。
しかし当の本人はそれに気づかない。
「よし、やりますか。」
彼女はそう言って机の上にあるミシンのコンセントを差し込んだ。
鳴海は趣味でたまに洋裁をしており、家にあった大きな布を適当に使ってジンベエの服を作りだそうとしているのだ。
「ジンベエ。ちょっと体のサイズ測らせてくれない? 服作るのに大体のサイズ知っときたくて。」
「構わん。よろしく頼む。」
彼は鳴海に近づき両手を少々上げる。
メジャーを持った彼女がジンベエのウエスト辺りを測る。
小さな紙に、小さくメモをしたと思うと、次は肩周りを測ろうとする。
が、鳴海には高くて彼の肩まで届かない。
ジンベエは察してその場に座った。
「ごめん、ありがとう。」
鳴海は苦笑いして彼に礼を言う。
「気にするな。」
そっけなく、だが少しの優しさを孕んだ声が一人暮らしの部屋に響いた。
鳴海は、それに不思議な感覚を抱く。
つい昨日まで一人暮らししていたはずなのに、今は二人暮らしの準備をしているのだから。
ジンベエの体を測り終えると、彼女は型紙を使わずに、直線縫いだけで出来るゆったりとした服を作っていく。
それは数時間もかからずに出来上がった。
ジンベエは予想外に短時間で出来上がったそれに驚く。
「かたじけない。」
「いいの、いいの。もう1着ずつくらい会った方が良いだろうから、今度また布買ってくるよ。」
「いや、2着あれば充分じゃ。」
「そう? まぁ、今の季節なら洗濯物早く乾くし2着でも大丈夫かな?」
「うむ。そこまで世話になるわけにもいかん。」
「そんなに気にしなくていいのに。こう言っちゃ何だけど、結構適当に作ってるからね?」
鳴海はくすくすと笑いながら言う。
「そうは言ってもじゃ。若い娘にこうも世話になるのは忍びなくてのう。」
「じゃあ、今度私が困った時には助けてよ。」
「もちろんじゃ。お前さんには恩ができた。」
ジンベエも、その鋭い目つきを柔らかくして鳴海を見た。
「(夢の中の時からおもっておったが、変わった人間じゃ。)」
そんな事を思われているとはつゆ知らず、彼女は晩御飯の支度をし始めた。
その日は2人でカレーを食べて、風呂に入って眠りにつくのだった。
こうして唐突に、彼らの二人暮らしが始まる。
私は混乱した。
今日は休日で、食料品を買いに出掛けていた。
そして帰ってきて部屋の扉を開けたらジンベエがいたのだ。
「何で!?」
ドサリと食料品の入ったエコバッグが床に落ちる。
「そりゃあこっちの台詞じゃい。」
彼は煙管をふかしながら私のダブルベッドの上に座っている。
「てか、えっ、ジンベエって本当に存在したんだ。」
「そっちこそじゃろうが。」
お互い、夢の中に出てくる人物が、本当に存在していたことに驚く。
心のどこかで"この人は夢が作り出した人物だ"と、2人とも思っていたからだ。
鳴海はぺたぺたと歩いてジンベエの手にペトリと触れてみた。
実体だ。確かにここに存在している。
自分の頬をつねってみても、痛みがある。
夢ではないことは明白だった。
「ははは。まさか。じゃあなに、違う世界から来たってこと?」
「むぅ。それじゃあ、やはりここはお前さんの住んどる世界ということか。」
ジンベエは冷静に状況を分析した。
そしてベッドから立ち上がり、窓の外の世界を見て驚く。
自分のいた世界ではあり得ない文明がそこに広がっていたからだ。
「どうしよう、こんなこと他の誰にも知られちゃならない。」
鳴海は焦って、窓のカーテンを閉めた。
暗くなった部屋の電気をパチリとつける。
「ジンベエ。こうならったら、貴方が元の世界に帰れるまではここで生活してもらうけど、良い?」
「それは助かるが……お前さんはそれで良いんか? 仮にも年頃の女が魚人と言えど男を住まわせることになるんじゃぞ?」
「それは大丈夫。ジンベエのこと信頼してるし。それよりジンベエの存在がこの世界で知れ渡ったら、大変なことになる。だから本当に申し訳ないけど、この部屋からは帰れるまで出られないと思って。」
申し訳なさそうに言う彼女に、ジンベエは頷く。
「構わん。恩にきる。」
ジンベエは夢の中で鳴海からこの世界のことを聞いていた。
ここでは魚人が架空の生物であることも、海賊が身近な存在でないことも知っている。
おそらく自分の存在がこの世界に知れ渡れば、最悪の事態になるだろうことも理解していた。
だから鳴海の提案に有り難く乗ったのだった。
「それにしても、前から思ってたけど本当に大きいね。ジンベエのサイズの服はこの世界にないから、私が適当に作ろうかな。」
「服までせわになるわけにはいかん。これ一枚で十分じゃ。」
彼は今自身が着ている着物を握ってそう言った。
が、鳴海がそれに意を唱える。
「そうは言っても、洗い替えがいるでしょ? 簡単なものしか作れないけど……それでも良い?」
「………。何から何まですまん。」
ジンベエは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「気にしないで。」
鳴海はにっこりと笑う。
そして床に落ちたままのエコバッグを持つと冷蔵庫へと向かった。
食料品を冷蔵庫の中に適当に入れて行く。
「(今日の晩御飯が2人分になっちゃったけど、カレーを多めに作る予定だったからちょうど良かった。)」
そんな事を思いながら空になったエコバッグを畳み、バッグの中に戻した。
ジンベエは彼女の様子を観察するように見ている。
しかし当の本人はそれに気づかない。
「よし、やりますか。」
彼女はそう言って机の上にあるミシンのコンセントを差し込んだ。
鳴海は趣味でたまに洋裁をしており、家にあった大きな布を適当に使ってジンベエの服を作りだそうとしているのだ。
「ジンベエ。ちょっと体のサイズ測らせてくれない? 服作るのに大体のサイズ知っときたくて。」
「構わん。よろしく頼む。」
彼は鳴海に近づき両手を少々上げる。
メジャーを持った彼女がジンベエのウエスト辺りを測る。
小さな紙に、小さくメモをしたと思うと、次は肩周りを測ろうとする。
が、鳴海には高くて彼の肩まで届かない。
ジンベエは察してその場に座った。
「ごめん、ありがとう。」
鳴海は苦笑いして彼に礼を言う。
「気にするな。」
そっけなく、だが少しの優しさを孕んだ声が一人暮らしの部屋に響いた。
鳴海は、それに不思議な感覚を抱く。
つい昨日まで一人暮らししていたはずなのに、今は二人暮らしの準備をしているのだから。
ジンベエの体を測り終えると、彼女は型紙を使わずに、直線縫いだけで出来るゆったりとした服を作っていく。
それは数時間もかからずに出来上がった。
ジンベエは予想外に短時間で出来上がったそれに驚く。
「かたじけない。」
「いいの、いいの。もう1着ずつくらい会った方が良いだろうから、今度また布買ってくるよ。」
「いや、2着あれば充分じゃ。」
「そう? まぁ、今の季節なら洗濯物早く乾くし2着でも大丈夫かな?」
「うむ。そこまで世話になるわけにもいかん。」
「そんなに気にしなくていいのに。こう言っちゃ何だけど、結構適当に作ってるからね?」
鳴海はくすくすと笑いながら言う。
「そうは言ってもじゃ。若い娘にこうも世話になるのは忍びなくてのう。」
「じゃあ、今度私が困った時には助けてよ。」
「もちろんじゃ。お前さんには恩ができた。」
ジンベエも、その鋭い目つきを柔らかくして鳴海を見た。
「(夢の中の時からおもっておったが、変わった人間じゃ。)」
そんな事を思われているとはつゆ知らず、彼女は晩御飯の支度をし始めた。
その日は2人でカレーを食べて、風呂に入って眠りにつくのだった。
こうして唐突に、彼らの二人暮らしが始まる。