「３年だ。３年かけて君を強くする。」

ジンベエとの出会いから今までの私の話を聞いたライデンさんは、私の目を真っ直ぐ見てそう言った。

「３年も……！？」

3年も彼に会えないのか。せっかくこの世界に来たのに。

「でも私、会いたい……！　今すぐにでも……ジンベエに会いたい！」

涙ながらにそう言う私に、彼は不敵に笑って言う。

「安心しろ。死ぬ気で修行してたら3年なんてあっという間だ。海峡のジンベエはここと同じグランドラインに居る。だが彼の元まで行くには、それなりに力をつけてもらわねば、すぐ死ぬぞ。」

死。その言葉に、少々体を固くする私。
ライデンさんの言うとおり、今のままでは能力の制御すらままならないのに、そんな状態でジンベエに会っても彼に迷惑をかけるかもしれない。

しかし気になる事もある。

「あの、何故そこまで親身にして下さるんです？　パティさんにも言いましたが、私は何もお返しできません。」

「異世界から来た人間には、個人的に思うところがあってね。」
　
ライデンさんはふと瞼を下げて微笑みながら言った。

「君を強くする。そのかわり、君は死ぬ気でこの世界を生き抜くことが出来るか……！？」

彼は眼光を鋭くして私に問いかける。

「この問にに頷くことができるなら、それが俺への見返りとなるだろう。」

しばし考えて、私は覚悟を決めた。

「分かりました。よろしく……お願いします。」

そう言って頭を下げる。

「ふっ、良いだろう。まずは基礎体力をつける。それと同時進行で悪魔の実の能力のコントロールと体術を教える。」

「……はい！」

こうして、私の修行の日々が始まるのだった。

ふと気づいたように、ライデンさんが私を見て言った。

「そうだ、良いものを持ってきてやろう。少し待っていなさい。」

その言葉に頷けば、彼は寝室から出て行った。
しばらくして戻ってきた時、ライデンの右手には一枚の紙が握られていた。
彼は私にそれを差し出した。

「ほら。君が会いたいのは、このジンベエで間違いないね？」

そこには"dead or alive"と数字の書かれた紙。
そしてその紙の一面には、私の知っているジンベエと少し雰囲気の変わった彼の姿が載っていた。
髪型が変わっているが、間違いない。
これはジンベエだ。

「………！はい…！」

私はその紙を抱きしめて、涙を堪える。


ーージンベエ。私、この世界まで来たよ。貴方に会いに。ーー


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それから一年ほど経ち、ライデンさんとぺティさんと朝食を食べながら新聞を読んでいる時だった。
思わず持っているスプーンを落としそうになる。

「こんなことって……！！」

ガチャリとスプーンを食器に置きくと、ライデンさんがこちらを見て言う。

「どうした？」

ぺティさんも不思議そうに私の方を見ている。

「ジンベエが……、投獄されたって……！！」

私は立ち上がって、ライデンさん達にその新聞の記事を見せる。
しかしライデンさんは特に驚いた様子もなくそれを見た。

「ついにそうなったか。」

「ついにって……？」

状況名の見込めない私に変わってライデンさんが言う。

「俺が情報通なのは知ってるだろう？　少し前、海軍が決めたある海賊の死刑に、ジンベエが強く反対しているとの情報が入った。こうなる心配はしていたが、まさかあの海峡ジンベエが王下七武海の称号を剥奪されるとはな。いや、仁義を重んじる彼らしいと言うべきか。」

「投獄なんて…！　それじゃあ、いくら私が鍛えたって、会えないじゃん……！」

私は体から力が抜けて、フラリと椅子に座る。

「あら、修行で鍛えて彼を助けに行くって選択肢もあるわよ？　全国的指名手配者になるのは間違いないけど。」

語尾にハートをつけながらぺティさんが言う。

「まぁ、もし本当にそうするなら私も協力しよう。とにかく、今は強くなることだけ考えろ。」

「……はい。」

私は俯きながら頷く。



それからしばらくして、ある海賊の死刑に反対する勢力と海軍の頂上戦争が起こる。
脱獄したジンベエがそこで戦っていたことを、私はライデンさんの情報によって知るのだった。

すぐにでもその戦争に駆けつけたいところだったが、まだ私では彼の力になれないとわかっていた。

それから2年間、私は死ぬ気で修行に励むのだった。