夢でも貴方と
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次の日の朝。
私は寝苦しさで目覚める。横を見ればジンベエがすやすやと寝息をたてていた。
「(……やってしまった。)」
そう、昨日私たちは体を重ね合った。
私が酔った勢いでつい彼を誘ってしまったのだ。
しかし後悔はない。
だが告白はジンベエに遮られた。つまり彼は私を好きじゃないということ?
でも、昨日はすごく優しく抱いてくれた。
そういえば、"いつ元の世界に帰るか分からないのに、無責任なことを言ってお前さんを縛りたくない"みないなこと言ってたな。
それはつまり、私への気持ちはあるけど、いつか彼が消えた時に私が引きずらないように、という意味だろうか。
ジンベエは気のない相手を抱くような男には見えない。
もし、彼も私と同じ気持ちになってくれてるのなら、嬉しいな。
私は彼の腕に擦り寄り、もう一度眠りにつくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから私たちは、恋人のような時間を過ごした。私から彼にじゃれついたり、晩酌の際のスキンシップが増えたり。
そして幾度となく体を重ねた。
ジンベエから私に触れてくれることが、私は凄く嬉しかった。
仕事から帰れば頭をポンポンしてくれたり、嬉しいことがあったときは、天井につくくらいまで高い高いしてくれたり。
私たちは幸せな時間を過ごした。
しかし3か月後。
唐突に別れはやってきた。
それは一緒に晩酌している時だった。
彼の体がゆらゆらと揺れ始めたのだ。
まるで空間ごと揺らめいているような。
「ジンベエ!?」
ほろ酔い気分は一気に冷めて、彼に手を伸ばすも、それは空を切る。
「うそ……! 待って、やだやだ待って!!」
「……時間がきたか。」
「そんな!」
落ち着き払ったジンベエとは裏腹に、私は彼を捕まえようと必死に手を伸ばす。
「鳴海。」
「待ってよジンベエ! ねぇ! 行かなーー」
「聞け、鳴海!」
私の言葉を遮って大きな声で彼が私の名を呼んだ。
「これは言うつもりはなかったんじゃがのう。」
揺らめいているせいで彼の表情はよく分からない。
それでも声色で、彼が戸惑っているのが良くわかった。
「気が変わった。お前さんをこのまま手放してやりたくなくなったわい。例えそれで、お前さんを縛る鎖になったとしても。」
「……ジンベエ?」
私はよく分からないまま、彼の名前を呼ぶ。
「鳴海。忘れるな。ワシが惚れた女はこの生涯でただ1人。お前さんだけじゃ。」
私がその言葉に涙を流した時、空間とともに、彼は、消え去った。
「ジンベエ……?」
返事は帰ってこない。
私は泣いた。喉が枯れるまで。わんわん泣いた。
こんなに泣いたのは、私の人生で後にも先にも、この日だけだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれからの私は抜け殻のように過ごしていた。
仕事だけは何とか行って、何とか帰って来る。
家ではいつもジンベエのことを思い出す。そしてそのまま涙する日もたくさんあった。
職場の人から何度「やつれた」と言われたことか。
でも自分の食事にすら気を遣えないほど、私は弱っていた。
そして、ジンベエが元の世界に帰って8か月が経った、ある日。
私は事故に遭う。
仕事の帰り道、ボーっと歩いていたら赤信号の横断歩道を通ってしまったらしい。
「(あ、しまった。)」
そう思った直後には、トラックが自身の体に突撃していた。
一瞬、意識が飛ぶ。
再び重い瞼を開けると、そこは血の海。
臓物のようなものまで飛び散っている。
辺りから悲鳴や泣き声が聞こえた。
「おい! だれか救急車!」
「いや、もうあれは無理だろう……。」
「もしもし! 事故です!」
そうか、私は死ぬのか。
ぼーっとする頭で現状を理解する。
「(ジンベエ。出来るならもう一度、貴方に会いたかった…。)」
マフィアのような目つきも、飛び出た牙も、私を優しく撫でる水かきのついた手も、全部全部、大好きだった。
死ぬ間際まで彼のことを考える自分を嘲笑する。
彼はもう、どこかの広い海で自由に海賊をしていることだろう。
きっと、私のことなど忘れて。
瞳から涙がこぼれ落ちる。
私は重たい瞼を閉じて、ゆっくりと意識を手放していく。
その最中、不思議な声を聞きながら。
ーー「良いでしょう。もしも貴方が生きていたら、貴方の望みを叶えてあげる。」ーー
私は寝苦しさで目覚める。横を見ればジンベエがすやすやと寝息をたてていた。
「(……やってしまった。)」
そう、昨日私たちは体を重ね合った。
私が酔った勢いでつい彼を誘ってしまったのだ。
しかし後悔はない。
だが告白はジンベエに遮られた。つまり彼は私を好きじゃないということ?
でも、昨日はすごく優しく抱いてくれた。
そういえば、"いつ元の世界に帰るか分からないのに、無責任なことを言ってお前さんを縛りたくない"みないなこと言ってたな。
それはつまり、私への気持ちはあるけど、いつか彼が消えた時に私が引きずらないように、という意味だろうか。
ジンベエは気のない相手を抱くような男には見えない。
もし、彼も私と同じ気持ちになってくれてるのなら、嬉しいな。
私は彼の腕に擦り寄り、もう一度眠りにつくのだった。
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それから私たちは、恋人のような時間を過ごした。私から彼にじゃれついたり、晩酌の際のスキンシップが増えたり。
そして幾度となく体を重ねた。
ジンベエから私に触れてくれることが、私は凄く嬉しかった。
仕事から帰れば頭をポンポンしてくれたり、嬉しいことがあったときは、天井につくくらいまで高い高いしてくれたり。
私たちは幸せな時間を過ごした。
しかし3か月後。
唐突に別れはやってきた。
それは一緒に晩酌している時だった。
彼の体がゆらゆらと揺れ始めたのだ。
まるで空間ごと揺らめいているような。
「ジンベエ!?」
ほろ酔い気分は一気に冷めて、彼に手を伸ばすも、それは空を切る。
「うそ……! 待って、やだやだ待って!!」
「……時間がきたか。」
「そんな!」
落ち着き払ったジンベエとは裏腹に、私は彼を捕まえようと必死に手を伸ばす。
「鳴海。」
「待ってよジンベエ! ねぇ! 行かなーー」
「聞け、鳴海!」
私の言葉を遮って大きな声で彼が私の名を呼んだ。
「これは言うつもりはなかったんじゃがのう。」
揺らめいているせいで彼の表情はよく分からない。
それでも声色で、彼が戸惑っているのが良くわかった。
「気が変わった。お前さんをこのまま手放してやりたくなくなったわい。例えそれで、お前さんを縛る鎖になったとしても。」
「……ジンベエ?」
私はよく分からないまま、彼の名前を呼ぶ。
「鳴海。忘れるな。ワシが惚れた女はこの生涯でただ1人。お前さんだけじゃ。」
私がその言葉に涙を流した時、空間とともに、彼は、消え去った。
「ジンベエ……?」
返事は帰ってこない。
私は泣いた。喉が枯れるまで。わんわん泣いた。
こんなに泣いたのは、私の人生で後にも先にも、この日だけだった。
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あれからの私は抜け殻のように過ごしていた。
仕事だけは何とか行って、何とか帰って来る。
家ではいつもジンベエのことを思い出す。そしてそのまま涙する日もたくさんあった。
職場の人から何度「やつれた」と言われたことか。
でも自分の食事にすら気を遣えないほど、私は弱っていた。
そして、ジンベエが元の世界に帰って8か月が経った、ある日。
私は事故に遭う。
仕事の帰り道、ボーっと歩いていたら赤信号の横断歩道を通ってしまったらしい。
「(あ、しまった。)」
そう思った直後には、トラックが自身の体に突撃していた。
一瞬、意識が飛ぶ。
再び重い瞼を開けると、そこは血の海。
臓物のようなものまで飛び散っている。
辺りから悲鳴や泣き声が聞こえた。
「おい! だれか救急車!」
「いや、もうあれは無理だろう……。」
「もしもし! 事故です!」
そうか、私は死ぬのか。
ぼーっとする頭で現状を理解する。
「(ジンベエ。出来るならもう一度、貴方に会いたかった…。)」
マフィアのような目つきも、飛び出た牙も、私を優しく撫でる水かきのついた手も、全部全部、大好きだった。
死ぬ間際まで彼のことを考える自分を嘲笑する。
彼はもう、どこかの広い海で自由に海賊をしていることだろう。
きっと、私のことなど忘れて。
瞳から涙がこぼれ落ちる。
私は重たい瞼を閉じて、ゆっくりと意識を手放していく。
その最中、不思議な声を聞きながら。
ーー「良いでしょう。もしも貴方が生きていたら、貴方の望みを叶えてあげる。」ーー