夢でも貴方と
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仕事終わりに、ビールを買って家路に着く。
カツカツとヒールを鳴らす。
もう慣れた一人暮らしの部屋に着き扉を開くと、誰に言うでもなく"ただいま"と呟く。
パチリと部屋の電気をつけた。
部屋着に着替えて、軽い晩御飯をビールで流し込み、お風呂に入って寝る。
いつもと変わらない1日。
しかしこの後、鳴海の身にいつもと違う出来事が起きた。
ふわふわとした感覚。
ゆっくりと目を開くと、ただ白い空間が広がっている。
さっき鳴海はいつも通り布団に入った。
その事実が、つまりここは夢の中だと物語っている。
ぼーっと突っ立っていれば、後ろから声がした。
「おい。」
鳴海は反射的に声の方を振り返った。
するとそこには彼女の倍ほどの身長がありそうな巨大が見える。
しかしその体は青く、口からは大きな牙が2本。
人間ではないのは明白だった。
特徴的な眉の下の目つきは、さながらヤのつく職業の人のようだ。
着物を着ているから余計にそう見えるのかもしれない。
金と黒のオールバックも雰囲気を醸し出していた。
それにしてもあまりにも恰幅が良い。
鳴海はその風貌にやや圧倒されながらも、興味深々で彼を見る。
「誰……? え、っていうか、でっか……。」
「人間か。」
「貴方は?……人間、じゃないよね?」
こんなセリフ、生きてて言うことになるとは夢にも思わなかった鳴海。
「見て分からんか。魚人だ。」
「魚人……。……魚人てでっかいんだ。」
「人によるわい。」
呆然と魚人の男を見る鳴海に、彼は目つきを鋭くして問いかける。
「お前さん、能力者か何かか? ワシは確かに自室で寝たはずじゃ。この空間は何じゃ。」
「能力者? なにそれ。私はごく普通の一般人だけど。」
「……? 能力者を知らんのか?」
「超能力のこと?」
いまいち噛み合わない会話に魚人の男ージンベエーは困惑を覚えた。
「私もいつも通りベッドに入って寝たら、ここに居た。つまりは、ここ夢の中でしょ? 貴方は私の夢が作り出した人物ってことじゃない?」
「ワシにはワシの人生がある。お前さんの作り出したもんなわけなかろう。」
「……じゃあ、……もしかして、私たち夢を共有してる………? え、でも待って。魚人なんて発見されたらすごいニュースになると思うんだけど……、日本語ってことは貴方、日本に住んでるの?」
「ニホン? どこじゃそれは。どの海にある。」
ジンベエは思った。
ーー魚人が発見されただけで騒ぎになるとは、そんなに魚人差別の根強い島なんか。ーー
「どの……って、太平洋と日本海……?」
「タイヘ……? ワシが聞いとるのは東西南北、どの海かじゃ。」
「強いて言うなら、東?」
「強いて、とはなんじゃ。イーストブルーのどこかはっきり言わんかい。」
「いや、イーストブルーって、なに?」
今度こそお互い固まった。
互いの常識がまったく通じない相手に、困惑するしかない2人。
「ちょっと待て。話を整理する。お前さんは能力者じゃない。そうじゃな?」
「うん、たぶん。」
「お前さんはニホンという聞いたこともない島におって、イーストブルーも能力者も知らん。」
ジンベエの言葉に、鳴海は頷く。
「……ワシとは住む世界が違うとしか思えん。」
「……! 確かに。異世界なら魚人がいるのも納得できる。」
鳴海はハッとして言う。
ジンベエが困ったように頭を押さえた。
「はぁ、一体どうなっとる。」
「でも、夢ならそのうち覚めるから大丈夫じゃない?」
楽観的な鳴海にジンベエは呆れる。
「それはそうじゃが、誰かの能力でこうなった可能性もある。そうじゃと、この空間から出られん場合もあるかもしれん。」
「ふ〜ん。能力、ねぇ。」
そう言いながら、彼女はジンベエを見る。
「何じゃ、その目は。」
「いや、その能力者っていうのが、いまいちピンとこなくてさ。」
「能力者というのは、悪魔の実を食べた者の事を言う。通称、"悪魔の実の能力者"じゃ。その実を食べたものはカナヅチになることと引き換えに超人的な能力を得る。」
「悪魔の実!? そんなのがあるんだ……。それって、いくつもあるの?」
「稀なものではあるが、まぁ、色んな実があるわい。」
「へぇ! 面白そう! 貴方は食べてないの? その悪魔の実……あ、……っていうか、お名前は? 私は鳴海っていうの。 挨拶が遅れてごめんなさい。」
「気にせんでええ。ワシは海峡のジンベエ。悪魔の実は食うとらん。」
ジンベエは、彼女への警戒心を少しだけ緩めた。何故ならこの目の前の女があまりにも隙がありすぎるからだ。
まるで戦いなど知らない生活をしているであろうことは明白だった。
2人は互いの世界の常識について話をする。
互いが異世界の人間であるという事実は信じ難いが、ここは夢の中。
その非現実的な感覚が彼らの緊張感と正常な判断力を緩めた。
会話はだんだんと和やかなものになっていく。
この日から、2人は夢の中で毎日出くわすようになるのだった。
カツカツとヒールを鳴らす。
もう慣れた一人暮らしの部屋に着き扉を開くと、誰に言うでもなく"ただいま"と呟く。
パチリと部屋の電気をつけた。
部屋着に着替えて、軽い晩御飯をビールで流し込み、お風呂に入って寝る。
いつもと変わらない1日。
しかしこの後、鳴海の身にいつもと違う出来事が起きた。
ふわふわとした感覚。
ゆっくりと目を開くと、ただ白い空間が広がっている。
さっき鳴海はいつも通り布団に入った。
その事実が、つまりここは夢の中だと物語っている。
ぼーっと突っ立っていれば、後ろから声がした。
「おい。」
鳴海は反射的に声の方を振り返った。
するとそこには彼女の倍ほどの身長がありそうな巨大が見える。
しかしその体は青く、口からは大きな牙が2本。
人間ではないのは明白だった。
特徴的な眉の下の目つきは、さながらヤのつく職業の人のようだ。
着物を着ているから余計にそう見えるのかもしれない。
金と黒のオールバックも雰囲気を醸し出していた。
それにしてもあまりにも恰幅が良い。
鳴海はその風貌にやや圧倒されながらも、興味深々で彼を見る。
「誰……? え、っていうか、でっか……。」
「人間か。」
「貴方は?……人間、じゃないよね?」
こんなセリフ、生きてて言うことになるとは夢にも思わなかった鳴海。
「見て分からんか。魚人だ。」
「魚人……。……魚人てでっかいんだ。」
「人によるわい。」
呆然と魚人の男を見る鳴海に、彼は目つきを鋭くして問いかける。
「お前さん、能力者か何かか? ワシは確かに自室で寝たはずじゃ。この空間は何じゃ。」
「能力者? なにそれ。私はごく普通の一般人だけど。」
「……? 能力者を知らんのか?」
「超能力のこと?」
いまいち噛み合わない会話に魚人の男ージンベエーは困惑を覚えた。
「私もいつも通りベッドに入って寝たら、ここに居た。つまりは、ここ夢の中でしょ? 貴方は私の夢が作り出した人物ってことじゃない?」
「ワシにはワシの人生がある。お前さんの作り出したもんなわけなかろう。」
「……じゃあ、……もしかして、私たち夢を共有してる………? え、でも待って。魚人なんて発見されたらすごいニュースになると思うんだけど……、日本語ってことは貴方、日本に住んでるの?」
「ニホン? どこじゃそれは。どの海にある。」
ジンベエは思った。
ーー魚人が発見されただけで騒ぎになるとは、そんなに魚人差別の根強い島なんか。ーー
「どの……って、太平洋と日本海……?」
「タイヘ……? ワシが聞いとるのは東西南北、どの海かじゃ。」
「強いて言うなら、東?」
「強いて、とはなんじゃ。イーストブルーのどこかはっきり言わんかい。」
「いや、イーストブルーって、なに?」
今度こそお互い固まった。
互いの常識がまったく通じない相手に、困惑するしかない2人。
「ちょっと待て。話を整理する。お前さんは能力者じゃない。そうじゃな?」
「うん、たぶん。」
「お前さんはニホンという聞いたこともない島におって、イーストブルーも能力者も知らん。」
ジンベエの言葉に、鳴海は頷く。
「……ワシとは住む世界が違うとしか思えん。」
「……! 確かに。異世界なら魚人がいるのも納得できる。」
鳴海はハッとして言う。
ジンベエが困ったように頭を押さえた。
「はぁ、一体どうなっとる。」
「でも、夢ならそのうち覚めるから大丈夫じゃない?」
楽観的な鳴海にジンベエは呆れる。
「それはそうじゃが、誰かの能力でこうなった可能性もある。そうじゃと、この空間から出られん場合もあるかもしれん。」
「ふ〜ん。能力、ねぇ。」
そう言いながら、彼女はジンベエを見る。
「何じゃ、その目は。」
「いや、その能力者っていうのが、いまいちピンとこなくてさ。」
「能力者というのは、悪魔の実を食べた者の事を言う。通称、"悪魔の実の能力者"じゃ。その実を食べたものはカナヅチになることと引き換えに超人的な能力を得る。」
「悪魔の実!? そんなのがあるんだ……。それって、いくつもあるの?」
「稀なものではあるが、まぁ、色んな実があるわい。」
「へぇ! 面白そう! 貴方は食べてないの? その悪魔の実……あ、……っていうか、お名前は? 私は鳴海っていうの。 挨拶が遅れてごめんなさい。」
「気にせんでええ。ワシは海峡のジンベエ。悪魔の実は食うとらん。」
ジンベエは、彼女への警戒心を少しだけ緩めた。何故ならこの目の前の女があまりにも隙がありすぎるからだ。
まるで戦いなど知らない生活をしているであろうことは明白だった。
2人は互いの世界の常識について話をする。
互いが異世界の人間であるという事実は信じ難いが、ここは夢の中。
その非現実的な感覚が彼らの緊張感と正常な判断力を緩めた。
会話はだんだんと和やかなものになっていく。
この日から、2人は夢の中で毎日出くわすようになるのだった。