【短編集】
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ルフィが海賊王になった後の賑やかな宴の中、私とジンベエは付き合いだした。
私が喧騒から離れたところで1人飲んでいる時に、彼の方から気持ちを伝えに来てくれたのだ。
航海しながらお互いずっと意識し合っていたのはなんとなく分かっていたけど、いざ気持ちを打ち明けられるととても恥ずかしくて、けれどそれ以上にすごく嬉しかったのを覚えている。喜びのあまり抱きついたほどだ。
しかし、だ。今の私はメンタルが最強に下を向いていた。まるでお通夜のように。ネガティブホロウでも喰らったかのように。
「もし、生まれ変われるのなら……、ヒトデになりたい。」
「切実ね。」
隣のロビンが楽しそうに私を見ている。そう、完全に楽しんでいるのだこの女は。私が後ろ向きになっている様を見て。
なぜそんなに後ろ向きかって?
だってそうなるでしょ。目の前で女の魚人や女の人魚に囲まれているジンベエを見れば。
今は満を持して地上に移動した魚人島へ、麦わらの一味全員でお祝いに来ているのだ。
島に着いた瞬間から、ジンベエは昔の仲間や顔見知りの人々に囲まれていた。それはそれは楽しそうに話す彼を見て、最初は私も良い気分だった。
ところが場所を移して女性の多いショッピング街のようなところを歩いていれば、多くの美人人魚や美人魚人が彼を囲い出した。
そりゃあモテるだろう。えぇ、おモテになるでしょう。なんてったってあのジンベエ親分ですもの。彼を狙う女がいたって何ら不思議はない。しかも、さすがは同じ種族同士。よくお似合いになる。
彼女達からしたら、私がジンベエと付き合ってることは驚き以外の何者でもないだろう。
そんなことを考えていれば、そりゃあ後ろ向きにもなる。ヒトデにだって生まれ変わりたくもなるだろう。
「きゃ〜、親分お付き合いしてる方がいるの〜?」
「そんな〜、どこの誰と〜?」
「もしかして同じ海賊の人間とか〜?」
ギクリ。
居心地が悪くなった私は近くにいたゾロの腕を掴んでその場を離れた。
サンジは血の涙を流しながらジンベエを羨んでいて使い物にならないからだ。
「おい、良いのか? アレ。」
そう言うゾロの視線の先にはジンベエに抱きつく美人な人魚が。
ジンベエはそれを優しく引き剥がしているが、「私も〜!」などと言っている女共が何人もいる。彼は困り顔で「分かった分かった、順番じゃ」などど言っている。
この鈍感が。
さすがにカチンと来た私は当てつけのようにゾロの腕に自身のそれを絡ませた。
「良いの! こっちはこっちで楽しませてもらうから! 買い物付き合ってよね、ゾロ!」
「俺は何も楽しくねぇけどなソレ!!」
ただの荷物持ちになる事を察したゾロが噛み付くように言い返してくるが、知るか。
こうなったらやけ食いならぬやけ買いだ。そんな事を思いながらショッピングに繰り出した。
腕を絡ませた私達の後ろ姿をジンベエが見ていたとも知らずに。
その日の夜。
麦わらの一味は竜宮城へ招かれ宴を楽しんでいた。ひとしきり食べて飲んで、ある程度満足した私は皆の元から少し離れて休んでいた。
ふと思い出すのは今日のショッピング街でのジンベエのこと。あの後、彼はどうしたのだろう。
まさか、あの中の女の誰かと一緒にどこか行ったりとか……、などとあり得ない妄想が膨らむ。
するとたちまち私の心の中にはモヤモヤが広がる。
「あ〜、もうっ!」
言いながら、座り込んで自分の髪の毛を掻き混ぜる。
「どうしたんじゃ。あまり良い気分には見えんのう。」
ふと目の前で声がする。周りの音楽などの喧騒で、彼の足音にも気づかなかったらしい。見上げれば、高い位置にジンベエの顔が。
彼は私の近くに歩み寄り隣に腰掛けた。
「別に……。」
素直になれない私はぶっきらぼうに答える。
すると彼はため息をついた。
私は思わず体を固める。喉の奥がキュッとなった。愛想をつかされただろうか。やっぱり同じ種族の方が良いと思われただろうか。急に不安になるのを止められない。
「実はワシも良い気分になりきれんくてのう。少し話を聞いてはくれんか。」
唐突にジンベエが私に話しかける。
「良いけど……。」
目を合わせずにそう言えば、彼は話し出した。
「お前さん、昼にゾロと腕を組んでどこかに行ってしもうたじゃろ。年甲斐もなく妬いてしもうてのう。あまりワシ以外の男にくっつかんでくれんか。」
その言葉に少しの喜びが込み上げる。ただ心の底から喜べないのは、昼のジンベエと女達の光景が焼き付いて離れないから。
「じゃあ、私の話も聞いて。」
「む? 何じゃい。」
ジンベエがこちらに視線をやる気配がする。私はその視線に気付かないフリをして話出す。
「ジンベエだって、昼に美人の人魚や魚人とハグしてた。あれ、凄く嫌だった。私より同じ種族の方が良いのかな、とか、思ったりするし、人魚になんて私は到底かなわないし。」
言い終わって、涙が出そうになるのをグッと堪えていると、何と隣の男は笑い出した。
「ワッハッハ!」
私は呆気に取られる。
「は?………え、ちょっと! こっちは真剣に話てるんだけど!?」
「何じゃ、同じことを思うておったか! ワシも魚人より人間の男の方が良くなったのかと思ってしまったわい。」
その言葉にハッとする。
そうか、私もジンベエに不安な思いをさせていたのか。……彼も、不安に思ってくれたのか。
心の中のモヤモヤが少しだけ晴れた気がした。
私は彼の着物の裾を掴む。
「ねぇ。もう、他の男とベタベタしないから、ジンベエも他の女とハグとかしないで。」
下を向きながら、思いの外拗ねたような言い方になってしまった。
「うむ。分かった。次からは断ろう。」
ジンベエはそれを気にした様子もなく、嬉しそうに頷いた。私はそこでようやく彼を見上げてみる。ジンベエは私を見てニコニコ笑っている。
「何よ。そんなに嬉しそうにして。」
私はまたもや拗ねた様に彼に問う。
「いや、同じ気持ちだったことが、ことの他嬉しくてのう。」
その言葉を聞いて、昼ぶりに私の笑顔が戻った。私は立ち上がって、座るジンベエの前に立ちその太い首に手を回した。右手で彼の黒い癖毛を弄る。そしてジンベエの目を真っ直ぐ見て言った。
「ねぇ、今チューして良い?」
少し離れた場所では仲間が宴を楽しんでいる。あそこから、ここは丸見えだ。
「お前さんなら、いつでもどこでも、構わんわい。」
しかし彼は優しい眼差しでそう言った。その言葉に、眼差しに、暖かい気持ちが溢れ出てくる。私は周りを気にせず彼に口付けた。
それはイチャつく私たちに気づいたウソップからのヤジが飛ぶまで続くのだった。
私が喧騒から離れたところで1人飲んでいる時に、彼の方から気持ちを伝えに来てくれたのだ。
航海しながらお互いずっと意識し合っていたのはなんとなく分かっていたけど、いざ気持ちを打ち明けられるととても恥ずかしくて、けれどそれ以上にすごく嬉しかったのを覚えている。喜びのあまり抱きついたほどだ。
しかし、だ。今の私はメンタルが最強に下を向いていた。まるでお通夜のように。ネガティブホロウでも喰らったかのように。
「もし、生まれ変われるのなら……、ヒトデになりたい。」
「切実ね。」
隣のロビンが楽しそうに私を見ている。そう、完全に楽しんでいるのだこの女は。私が後ろ向きになっている様を見て。
なぜそんなに後ろ向きかって?
だってそうなるでしょ。目の前で女の魚人や女の人魚に囲まれているジンベエを見れば。
今は満を持して地上に移動した魚人島へ、麦わらの一味全員でお祝いに来ているのだ。
島に着いた瞬間から、ジンベエは昔の仲間や顔見知りの人々に囲まれていた。それはそれは楽しそうに話す彼を見て、最初は私も良い気分だった。
ところが場所を移して女性の多いショッピング街のようなところを歩いていれば、多くの美人人魚や美人魚人が彼を囲い出した。
そりゃあモテるだろう。えぇ、おモテになるでしょう。なんてったってあのジンベエ親分ですもの。彼を狙う女がいたって何ら不思議はない。しかも、さすがは同じ種族同士。よくお似合いになる。
彼女達からしたら、私がジンベエと付き合ってることは驚き以外の何者でもないだろう。
そんなことを考えていれば、そりゃあ後ろ向きにもなる。ヒトデにだって生まれ変わりたくもなるだろう。
「きゃ〜、親分お付き合いしてる方がいるの〜?」
「そんな〜、どこの誰と〜?」
「もしかして同じ海賊の人間とか〜?」
ギクリ。
居心地が悪くなった私は近くにいたゾロの腕を掴んでその場を離れた。
サンジは血の涙を流しながらジンベエを羨んでいて使い物にならないからだ。
「おい、良いのか? アレ。」
そう言うゾロの視線の先にはジンベエに抱きつく美人な人魚が。
ジンベエはそれを優しく引き剥がしているが、「私も〜!」などと言っている女共が何人もいる。彼は困り顔で「分かった分かった、順番じゃ」などど言っている。
この鈍感が。
さすがにカチンと来た私は当てつけのようにゾロの腕に自身のそれを絡ませた。
「良いの! こっちはこっちで楽しませてもらうから! 買い物付き合ってよね、ゾロ!」
「俺は何も楽しくねぇけどなソレ!!」
ただの荷物持ちになる事を察したゾロが噛み付くように言い返してくるが、知るか。
こうなったらやけ食いならぬやけ買いだ。そんな事を思いながらショッピングに繰り出した。
腕を絡ませた私達の後ろ姿をジンベエが見ていたとも知らずに。
その日の夜。
麦わらの一味は竜宮城へ招かれ宴を楽しんでいた。ひとしきり食べて飲んで、ある程度満足した私は皆の元から少し離れて休んでいた。
ふと思い出すのは今日のショッピング街でのジンベエのこと。あの後、彼はどうしたのだろう。
まさか、あの中の女の誰かと一緒にどこか行ったりとか……、などとあり得ない妄想が膨らむ。
するとたちまち私の心の中にはモヤモヤが広がる。
「あ〜、もうっ!」
言いながら、座り込んで自分の髪の毛を掻き混ぜる。
「どうしたんじゃ。あまり良い気分には見えんのう。」
ふと目の前で声がする。周りの音楽などの喧騒で、彼の足音にも気づかなかったらしい。見上げれば、高い位置にジンベエの顔が。
彼は私の近くに歩み寄り隣に腰掛けた。
「別に……。」
素直になれない私はぶっきらぼうに答える。
すると彼はため息をついた。
私は思わず体を固める。喉の奥がキュッとなった。愛想をつかされただろうか。やっぱり同じ種族の方が良いと思われただろうか。急に不安になるのを止められない。
「実はワシも良い気分になりきれんくてのう。少し話を聞いてはくれんか。」
唐突にジンベエが私に話しかける。
「良いけど……。」
目を合わせずにそう言えば、彼は話し出した。
「お前さん、昼にゾロと腕を組んでどこかに行ってしもうたじゃろ。年甲斐もなく妬いてしもうてのう。あまりワシ以外の男にくっつかんでくれんか。」
その言葉に少しの喜びが込み上げる。ただ心の底から喜べないのは、昼のジンベエと女達の光景が焼き付いて離れないから。
「じゃあ、私の話も聞いて。」
「む? 何じゃい。」
ジンベエがこちらに視線をやる気配がする。私はその視線に気付かないフリをして話出す。
「ジンベエだって、昼に美人の人魚や魚人とハグしてた。あれ、凄く嫌だった。私より同じ種族の方が良いのかな、とか、思ったりするし、人魚になんて私は到底かなわないし。」
言い終わって、涙が出そうになるのをグッと堪えていると、何と隣の男は笑い出した。
「ワッハッハ!」
私は呆気に取られる。
「は?………え、ちょっと! こっちは真剣に話てるんだけど!?」
「何じゃ、同じことを思うておったか! ワシも魚人より人間の男の方が良くなったのかと思ってしまったわい。」
その言葉にハッとする。
そうか、私もジンベエに不安な思いをさせていたのか。……彼も、不安に思ってくれたのか。
心の中のモヤモヤが少しだけ晴れた気がした。
私は彼の着物の裾を掴む。
「ねぇ。もう、他の男とベタベタしないから、ジンベエも他の女とハグとかしないで。」
下を向きながら、思いの外拗ねたような言い方になってしまった。
「うむ。分かった。次からは断ろう。」
ジンベエはそれを気にした様子もなく、嬉しそうに頷いた。私はそこでようやく彼を見上げてみる。ジンベエは私を見てニコニコ笑っている。
「何よ。そんなに嬉しそうにして。」
私はまたもや拗ねた様に彼に問う。
「いや、同じ気持ちだったことが、ことの他嬉しくてのう。」
その言葉を聞いて、昼ぶりに私の笑顔が戻った。私は立ち上がって、座るジンベエの前に立ちその太い首に手を回した。右手で彼の黒い癖毛を弄る。そしてジンベエの目を真っ直ぐ見て言った。
「ねぇ、今チューして良い?」
少し離れた場所では仲間が宴を楽しんでいる。あそこから、ここは丸見えだ。
「お前さんなら、いつでもどこでも、構わんわい。」
しかし彼は優しい眼差しでそう言った。その言葉に、眼差しに、暖かい気持ちが溢れ出てくる。私は周りを気にせず彼に口付けた。
それはイチャつく私たちに気づいたウソップからのヤジが飛ぶまで続くのだった。
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