【短編集】
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それは皆が寝静まった夜のことだった。
私は甲板で、見張り台から死角になるところで1人うずくまっていた。そうして何分たっただろう。
泣き腫らした目は誰にも見せられないほどになっている。しかしふと男部屋の方から足音が聞こえる。まずい、そう思った時には時すでに遅し。
「どうしたんじゃ、こんな夜中に。」
暗闇から姿を表したのはジンベエだった。
「……そっちこそ。」
私はぶっきらぼうに答える。
彼はそれを気にする素振りもなく口を開いた。
「ワシはちょいと風に当たりにのう。お前さん、何かあったんか?」
彼の問いかけに私は顔を背ける。
「あっちに行って。私は大丈夫だから。」
「そうは言ってもじゃな。こんな状態のお前さんを放ってはーー」
「あっち行ってよ!! こんな姿、誰にも見せたくなかったのに……っ!! なんで来んの……!?」
完全なる八つ当たりだった。
「見てしまったもんは仕方なかろう。どれ、何があったか話してみい。」
彼は私の隣にドカリと座った。ここを去る気はないらしい。1人になる事を諦めた私は、少しの沈黙の後、ポツリポツリと話出す。
「……ジンベエには、まだ言ってなかったけど……、私は今まで、平和な異世界で平凡に生きてきた。だから特別な技術や能力なんて持ってない。」
話し出したら、タガが外れたように次から次へと言葉がこぼれ落ちていく。
「ナミは航海士、ロビンは考古学、チョッパーは医者でサンジはコック、他の皆も、この船で役割を持ってる! でも私は……! 私には何もない……! この船のために私が出来る事なんて、この悪魔の実能力で戦うことくらいなの! それなのに、今日の戦闘でゾロに庇われた……! 遅れをとった!! こんなんじゃ、いつか皆に要らないってーー」
「鳴海!」
ジンベエが私の言葉を遮って、名を呼んだ。
「お前さん、それを本気で言っとりゃあせんじゃろうな?」
私は言葉に詰まる。
「この船に、そんな理由で仲間を不必要じゃと言う奴が、本当におると思っとるんか?」
「……頭ではわかってる。そんなはずないって。でも心が追いつかないの。こんなに良い仲間が出来たのに、いつもどこか不安で、寂しくて、心細い。たまに、それが溢れてどうしようもなくなる時がある。」
一呼吸おき、震える声をそのままに話し続ける。
「この世界で、私には、皆だけなの。ここ以外、帰れる場所なんてどこにもない。だからいつか失うんじゃないかって考えて怖くなる。」
「鳴海。違う世界から来たと言うたな。そりゃあ心細かったろう。不安にもなったろう。じゃがな。……仲間っちゅうもんは、助け合って航海していくもんじゃ!」
私はその言葉にハッとさせられる。
「今日ゾロに助けられたなら、次はお前さんが違う形でゾロを助ければよかろう。」
海を見ながら話していたジンベエが、私の方へ顔を向け、こちらをややの覗き込みながら話出す。
「……鳴海。お前さんの中にある不安や孤独を消すことは、もしかしたらこの船の誰にも出来はせんのかもしれん。それでも、それらを跳ね返せるだけの力が、お前さんにはあるはずじゃ! 今までのお前さんを見とって、そう思う。それでも、どうしてもまた心細くなった時は、ワシのところに来い。いつでも言うてやるわい。そんなことでお前さんを独りにする仲間はおらんと! そんなことはワシがさせんと!」
その言葉を聞きながら、私はボロボロと涙を溢す。
そして大きく頷いた。
「……っ!……う"ん"!!」
ジンベエがその大きな手で私の涙を拭う。
「ほれ、もう泣くな。大丈夫じゃ。」
その声があまりにも優しくて、私は安心する。
「さぁ、女部屋の前まで送ってやろう。暖かくして寝るんじゃぞ。」
彼は言いながら私を抱き抱える。私は戸惑いながらもジンベエの着物にしがみつく。
ふわりと、海の香りが鼻腔をくすぐった。その香りに再び安心感を覚え、ゆっくりと眠気が襲ってくる。
ジンベエが女子部屋の前で私を下ろした。私は名残惜しく感じながらも、ジンベエに"おやすみ"と言って部屋に入る。
扉を閉めて、胸に手を当てた。少しだけ胸が高鳴る。
この日を境に、私にとってジンベエはただの仲間というにはあまりにも特別な存在になっていくのだった。
私は甲板で、見張り台から死角になるところで1人うずくまっていた。そうして何分たっただろう。
泣き腫らした目は誰にも見せられないほどになっている。しかしふと男部屋の方から足音が聞こえる。まずい、そう思った時には時すでに遅し。
「どうしたんじゃ、こんな夜中に。」
暗闇から姿を表したのはジンベエだった。
「……そっちこそ。」
私はぶっきらぼうに答える。
彼はそれを気にする素振りもなく口を開いた。
「ワシはちょいと風に当たりにのう。お前さん、何かあったんか?」
彼の問いかけに私は顔を背ける。
「あっちに行って。私は大丈夫だから。」
「そうは言ってもじゃな。こんな状態のお前さんを放ってはーー」
「あっち行ってよ!! こんな姿、誰にも見せたくなかったのに……っ!! なんで来んの……!?」
完全なる八つ当たりだった。
「見てしまったもんは仕方なかろう。どれ、何があったか話してみい。」
彼は私の隣にドカリと座った。ここを去る気はないらしい。1人になる事を諦めた私は、少しの沈黙の後、ポツリポツリと話出す。
「……ジンベエには、まだ言ってなかったけど……、私は今まで、平和な異世界で平凡に生きてきた。だから特別な技術や能力なんて持ってない。」
話し出したら、タガが外れたように次から次へと言葉がこぼれ落ちていく。
「ナミは航海士、ロビンは考古学、チョッパーは医者でサンジはコック、他の皆も、この船で役割を持ってる! でも私は……! 私には何もない……! この船のために私が出来る事なんて、この悪魔の実能力で戦うことくらいなの! それなのに、今日の戦闘でゾロに庇われた……! 遅れをとった!! こんなんじゃ、いつか皆に要らないってーー」
「鳴海!」
ジンベエが私の言葉を遮って、名を呼んだ。
「お前さん、それを本気で言っとりゃあせんじゃろうな?」
私は言葉に詰まる。
「この船に、そんな理由で仲間を不必要じゃと言う奴が、本当におると思っとるんか?」
「……頭ではわかってる。そんなはずないって。でも心が追いつかないの。こんなに良い仲間が出来たのに、いつもどこか不安で、寂しくて、心細い。たまに、それが溢れてどうしようもなくなる時がある。」
一呼吸おき、震える声をそのままに話し続ける。
「この世界で、私には、皆だけなの。ここ以外、帰れる場所なんてどこにもない。だからいつか失うんじゃないかって考えて怖くなる。」
「鳴海。違う世界から来たと言うたな。そりゃあ心細かったろう。不安にもなったろう。じゃがな。……仲間っちゅうもんは、助け合って航海していくもんじゃ!」
私はその言葉にハッとさせられる。
「今日ゾロに助けられたなら、次はお前さんが違う形でゾロを助ければよかろう。」
海を見ながら話していたジンベエが、私の方へ顔を向け、こちらをややの覗き込みながら話出す。
「……鳴海。お前さんの中にある不安や孤独を消すことは、もしかしたらこの船の誰にも出来はせんのかもしれん。それでも、それらを跳ね返せるだけの力が、お前さんにはあるはずじゃ! 今までのお前さんを見とって、そう思う。それでも、どうしてもまた心細くなった時は、ワシのところに来い。いつでも言うてやるわい。そんなことでお前さんを独りにする仲間はおらんと! そんなことはワシがさせんと!」
その言葉を聞きながら、私はボロボロと涙を溢す。
そして大きく頷いた。
「……っ!……う"ん"!!」
ジンベエがその大きな手で私の涙を拭う。
「ほれ、もう泣くな。大丈夫じゃ。」
その声があまりにも優しくて、私は安心する。
「さぁ、女部屋の前まで送ってやろう。暖かくして寝るんじゃぞ。」
彼は言いながら私を抱き抱える。私は戸惑いながらもジンベエの着物にしがみつく。
ふわりと、海の香りが鼻腔をくすぐった。その香りに再び安心感を覚え、ゆっくりと眠気が襲ってくる。
ジンベエが女子部屋の前で私を下ろした。私は名残惜しく感じながらも、ジンベエに"おやすみ"と言って部屋に入る。
扉を閉めて、胸に手を当てた。少しだけ胸が高鳴る。
この日を境に、私にとってジンベエはただの仲間というにはあまりにも特別な存在になっていくのだった。