過去と未来と貴方と私
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
過去から鳴海が帰ってきたと同時に、ワシの頭の中には今まで忘れておった記憶が次々と流れ込んできた。
「!?……?……?」
ワシが混乱しとる中、クルーの皆は鳴海に駆け寄ってそれぞれ声をかける。
ーー「ジンベエ、色々ありがとう。未来でまた会おうね。」
最後、彼女はそう言ってワシの頬にキスをした。
「待っとれ。すぐ行くわい。」ーー
あれから12年の間、ワシは鳴海を探し続けた。
しかし魚人島で再び彼女に会った時、ワシは鳴海をあの時の人間の女だとは思いもせんかった。
なぜなら記憶は薄れ、もう顔も思い出せんほどになっておったからだ。
ずっと鳴海と言う名前に聞き覚えがあった。
その名を聞くたび、呼ぶたび、胸に何かがつかえるような感覚があった。
そして今、全ての点と点が、線になる。
そうか、そういうことじゃったか。
随分と待ったのは、自分の方だった。
彼女に再会出来たことは良い。
だが問題は自分が既に彼女と一線を超えてしまっておることじゃ。
ワシらは仲間。
それなのに、ワシはもう鳴海をただの仲間としては見れんだろう。
「ただいま! ジンベエ!」
彼女の言葉にハッとして、何か言わねばと頭を働かせる。
「……!……お、おぉ。無事で良かったわい……。」
自分で言っといて、よくもまぁ言えるな、と思うわい。
彼女に簡単に手を出しておいて。
その日の夜。
鳴海と見張り台で話し、これからも仲間のまま付き合っていくことになった。
それに納得した反面、いい歳してワシはこの感情の昂りを抑えられる気がせんかった。
しかし決まったことにごねるつもりなど毛頭ない。
彼女には待ってもらう。
ルフィを海賊王にする、その日まで。
その日が来たら、必ずワシの命は鳴海に捧げる。
そう決めてからというもの。
ワシはスッキリとした気持ちで鳴海と向き合うことができた。
しかし彼女はどこか危なっかしいところがある。
そのせいで何時も目が離せん。
悪魔の実の能力者ゆえ、海に落ちれば溺れてしまう。彼女が落ちた時は真っ先にワシが海に飛び込んだ。
鳴海が夜の見張りの時はよく毛布を届けに行ったり、温かい飲み物を渡したり。
そしてそのまま2人でゆっくり世間話をしたりもした。
ある島でいかにも彼女に下心のある男に連れていかれそうになった時は流石に焦ったもんじゃい。
すぐさま駆け寄って彼女を抱き寄せ、思わず男に睨みを効かせてしもうたわい。
そんな事をしておったら、サンジやロビン、ナミに気付かれてしもうたらしい。
サンジにはある島で話したが、ロビンやナミに唐突に鳴海との事を聞かれた時は驚いたもんじゃ。
それは島に着いた時の船の見張りが、丁度ワシとロビン、ナミになった時の話じゃ。
「ねぇジンベエ。ちょっと話があるんだけど。」
そう言うナミに、ワシは疑問符を浮かべる。
「む? なんじゃい、藪から棒に。」
「ダイニングでゆっくり話ましょ。ロビンがお茶淹れてくれてるから。」
そう言われるがままワシはダイニングテーブルに行き、定位置に座る。
その目の前にナミとロビンが座った。
ワシはロビンに手渡された紅茶に礼を言い、それを口に含む。
「鳴海のことなんだけど。」
「んぐ!」
ナミの言葉に思わず咽せそうになる。
「あぁ、鳴海からは話は聞いてるから大丈夫。ってゆうか、ほぼロビンが盗み聞きして知ってたから。」
「まぁ、人聞きの悪い。」
「本当のことでしょ。」
「ぬ、盗み聞き……。」
ワシは流石に言葉を失った。まさか盗み聞きされているとは夢にも思わんかった。
恐るべし麦わらの一味。
そんなワシを差し置いて、ナミが話し出す。
「それでね、ジンベエ。話ってゆうのは、鳴海のことよ。鳴海って私たち女の中で1番強いから、どうしても戦闘では無茶をしがちなの。」
「私たちを庇ってくれることも、よくあるわ。」
ロビンの言葉に頷くナミ。そしてナミは言葉を続ける。
「そのくせ危なっかしいところもあるじゃない? だから私たち、鳴海が心配なの。ジンベエがルフィを海賊王にするために命を賭ける覚悟なのは知ってる。それは鳴海も理解してる。だけど、鳴海に何かあった時は……、ううん。何か起こる前に、ジンベエには鳴海を守ってほしいなって。」
「勝手な事を言ってるのは分かるわ。でも彼女、私達なためなら死んでも良いって言った事があるの。貴方たち、本当に似てるわ。情が深いのは鳴海の良いところよ。でも、たまに行き過ぎていると感じることもある。」
ロビンが一呼吸おき、再び口を開く。
「貴方達の関係に口を出す気はないわ。ただ、鳴海のことを特別に思ってるなら、守ってあげて。」
黙って話を聞いとったワシは、しばしの沈黙の後口を開く。
「鳴海にも聞いたがの。本当にワシで良いんかいな?」
「ジンベエだから、言ってるのよ。」
ナミの言葉に胸が熱くなる。
「……そう言う事なら、任せんしゃい。鳴海も、ルフィも、必ずワシが守る!」
そう言ったワシを見て、2人は微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからの航海はそりゃあ大変なことだらけじゃった。
冒険、戦闘、様々な事件に巻き込まれつつ、麦わら海賊団は激進した。
その間にワシの鳴海への気持ちは募るばかり。
何度手を出しそうになったことか。
しかしサンジに言った通り、男に二言はない。
何度もあの日の夜を思い出しては下半身に熱が集中しそうになったが、その度に記憶を無理やりかき消して抑えてきた。
そして遂に、ルフィが海賊王になる時がきた。
「鳴海。お前さんさえ良ければ、ワシと結婚してくれはせんか?」
彼女は少しばかりごねたが、結局は結婚の申し出に頷いてくれた。
ワシは鳴海を横抱きにして、宴に盛り上がっているルフィ達の元へと行く。
「ちょ、ジンベエ! 何してるの!?」
鳴海は恥ずかしそうにしているが、ワシはそれを無視する。
「ルフィ! それにみんなも聞いてくれ! ワシは今までルフィを海賊王にさせるためにこの命を使うてきた! そしてルフィ! お前さんは見事、海賊王になってみせた! ルフィ、ワシはこれから、この鳴海の為に命を使うても良いじゃろうか?」
「……!!」
ルフィは真面目な顔でジンベエの話を聞き、やがて笑顔になった。
「好きにしろ。お前の人生だ、ジンベエ!」
「かたじけない!!」
ワシはルフィに頭を下げ、鳴海を抱きしめる手を強める。
そして頭を上げて、仲間を見る。
「ワシらは、結婚しようと思うとる!」
「「「って、え〜〜〜〜!? 結婚〜〜〜〜〜!?」」」
仲間の皆が驚いてワシらを見る。
皆んな目が飛び出ておる。
「ワハハハハ! そんなに驚くことかいな!」
「いや、いろいろすっ飛ばして急に結婚は驚くわよ!」
ナミの言葉に皆が頷く。
「鳴海さんが……、俺の女神が……! おのれジンベエぇぇええ!」
サンジが悔しそうに呟く。
「へぇ、まぁ良いんじゃねぇか。」
ゾロは上機嫌だ。
「良いわけあるかぁ! クソマリモォォオ!」
「あぁ!? やんのか!? エロコック!」
いつものように2人の喧嘩が勃発し、皆が笑い合う。
その間、仲間の各々が祝福の言葉を述べるのだった。
こんな良い仲間と、良い嫁さんを持てて、ワシは幸せモンじゃのう。
そうして、ワシらの冒険の幕は降りるのだった。
9/9ページ