過去と未来と貴方と私
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その日の夜。
私は見張り台で夜の見張りをしていた。
今は皆が寝静まった頃だろう。
サンジあたりは、明日の食事の仕込みでもしているかもしれないが。
私は見張りをしながら、過去のジンベエは髪の毛が短くて、アレはアレでカッコよかったなぁ、などと思っていた時だ。
「鳴海。」
ジンベエの声が下から聞こえた。
覗き込めば、ハシゴを登ってきているジンベエがいた。
「ジンベエ! どうしたの? こんな時間に。」
彼は私と同じ視線のところに来ると、ハシゴに立ったまま見張り台の淵に頭を押しつけた。
「すまんかった!」
そう、彼は私に頭を下げたのだ。
「1ヶ月もすりゃあ戻れたもんを、ワシはお前さんに手ぇ出してしもうた! 責任はとる!!」
私は思わず笑いが込み上げる。
「あっははは! なに? 責任って。結婚でもするつもり?」
「ぐぬぅ、そ、それは……。」
「良いよ、そんなの。責任感とか義務感とかで付き合って欲しくない。どうせなら、ちゃんと好き合って付き合いたい。」
ジンベエはそれに何も応えない。
「分かるよ。私たちはルフィを海賊王にする。それまで恋愛なんてしてる暇なんてないよね。そもそも、ジンベエにだって選ぶ権利はあるし。」
「選ぶとかどうとか、そんな事は言っとりゃあせん! もうワシはお前さんのことを、ただの仲間としては見れん! 一線を超えたんじゃ。 ワシは……ーー」
「ジンベエ。」
私は彼の言葉を遮って言葉を続ける。
「それって、私のこと、少しは意識してくれてるってことで良いの?」
「ぬぅ、……意識するほか、あるまい。」
ジンベエは俯きながらそう呟いた。
その言葉に嬉しくなる。
「私もだよ。」
それを聞き、彼は顔を上げた。
「じゃあさ。ルフィが海賊王になった時にまだ、お互いただの仲間として見れなかったら、その時は私と付き合ってみない?」
「……お前さんはそれで良いんかい。」
いつかのように、ジンベエは私をまっすぐ見据える。
それに、私は笑顔で答える。
「もちろん!」
「……分かった。ルフィが海賊王になるまでは、ワシらは仲間っちゅうことだな。」
「そ。それまではキスもセックスもなし。どう?」
「むぅ……ええじゃろう。」
「決まりね。」
私たちの関係についての話は、そこで終わった。
ここに来る時は思い詰めた顔だったジンベエも、今ではスッキリした顔をしている。
「今夜は冷える。ホットミルクでも持ってこよう。待っとれ。」
「ありがとう。」
ジンベエの申し出に私は笑顔で礼を言う。
ここまでの話を、ロビンに聞かれていたとも知らずに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから数週間が経った。
私とジンベエはただの仲間に戻った。
……はずだった。
しかし彼はどうやら私に仲間以上の扱いをしてくれているような気がしてならない。
私が海に落ちたら真っ先に助けに来てくれたり、夜の見張りの時は必ずと言って良いほど温かい飲み物を持ってきてくれたり、島で変な男が寄ってきたらサンジより早く駆けつけて男に威嚇したり。
ほとんどの仲間はそれに気づいてはいないが、鋭いロビンとナミ、サンジあたりは気付いているようだ。
ある島でロビンとナミとお茶をしている時だった。
「それで? 鳴海は本当にこれで良いの?」
ロビンが唐突に私に話しかける。
「え? 何が?」
そう聞きながら、私は紅茶を口に含む。
「ジンベエのことよ。」
「んぐっ!」
思わず咽せそうになる。
「そうそう! 何か、最近のアンタとジンベエおかしいわよ? 何かあったんでしょ!?」
ナミの言葉に、思わず大きな声で誤魔化す。
「は、はぁ!? 何もないよ! 別に!」
「ごめんなさいね。前に、貴方とジンベエが見張り台で話してるの、私聞いちゃったの。」
ロビンの爆弾発言に、私は冷や汗が流れ出す。
「ま、前って……いつの……。」
「あなたが過去に行った時の話しをしてたでしょ? その時よ。」
私は机の上で手を組みそこに額を乗せる。
「……つまり。ロビンは全部知ってるってことね?」
「まぁ、そうなるわね。」
「ちょっと! 何の話してんのよ!? 鳴海が過去に行ったのと、何か関係がーー」
ナミがはっとして、言葉を止める。
そしてゆっくりとこちらを向き、言う。
「まさか、そうなの?」
ナミも気付いてしまったようだ。
「はぁ。」
私のため息はナミに肯定と取られた。
「嘘でしょ!? まさかあんた! ジンベエとしたの!?」
「過去のね! 過去のジンベエとだからね! それに、戻ってきてからはしてないし、今は普通の仲間としてーー」
「いやいや、それ無理あるから!」
私の言葉を遮って、ナミがバッサリと言う。
私はグッと言葉を詰まらせる。
「ジンベエの方は貴方のこと、ただの仲間として見れてないようだけど?」
ロビンの言葉に、ナミは"うんうん"と大きく頷いている。
「そうは言われても、私たち、ルフィが海賊王になるまではお互い仲間として接するって、約束してるんだけど。」
「アンタはそれで良いの!?」
ナミの問いかけに私は考える。
「……良いの! ルフィが海賊王になるまでは、ジンベエにとっての1番はルフィでしょ? 私は2番目の女になるなんて、ごめんよ。だから、ルフィが海賊王になったあと、ちゃんと正式に1番の女にしてもらうんだから。もちろん、その時ジンベエにその気があるなら、だけどね。」
「なるほどね。そういうこと。」
「鳴海らしいわね。」
ナミとロビンが微笑んで言う。
「でも驚いたなぁ。アンタとジンベエが、ねぇ。」
意味ありげな顔でこちらを見るナミ。
「何。良いでしょ別に。これからも皆に迷惑はかけるつもりはないし。」
「迷惑だなんて思ってないわよ。ただ、ちょっと意外だっただけ。」
「まぁ、それは私もだけどね。」
まさか自分がジンベエとこんな関係になるなんて思っていなかった。
「そう? 私は2人、お似合いだと思うけど?」
ロビンの言葉に少々、顔が赤くなるのを感じる。
「そ、それは、嬉しいけど。」
その後も、その日の三人は恋バナで盛り上がるのだった。