過去と未来と貴方と私
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船長室に着くと、ジンベエはふぅと息を吐く。
そうか、この船には人間をよく思ってない魚人達もいるんだ。
だから私を人目につかない所へと連れてきてくれたのか。
「それじゃあ、本当にお前さんはたまたまこの船に飛ばされただけの無害な人間なんじゃな?」
彼は私に向き直り問いかける。
「うん。悪魔の実能力者なのは確かだけど、この船には何もするつもりはないよ。」
「……そうか。それで、帰る方法は分かっとるんか。」
その問いに思わず私は固まる。
「……あ。いや〜、なんというか………………、わかりません。」
つい嘘をついてしまった。
「なんじゃい、今の間は。」
「あっはははは、いやぁ本当、ご迷惑おかけします。」
笑って誤魔化そうにも苦しすぎるか。
「まだこの船に乗せるとは言うとらん。」
「えぇ!それは困る! お願いジンベエ! 私ここに居なきゃいけない理由があるの!」
「……それは帰る方法と関係しとるんか?」
「それは………。」
グッと押し黙る私に、ジンベエは"はぁ"とため息をつく。
「まぁ、いい。乗船は許可する。その代わりこの部屋から出るな。約束できるか?」
「……! 分かった。」
「飯はその都度、ワシが適当に理由つけて持ってきてやる。幸いこの部屋にはシャワーがついとる。生活にはこと足らんじゃろう。」
「ありがとう! 本当に助かります!」
私はジンベエに思い切り頭を下げる。
再び彼はため息をついた。
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それからというもの、ジンベエとの時間が格段に増えた。
私は未来の話を、ジンベエは今までの冒険の話をしたりながらお互いに時間を潰すこともあった。
夜寝る時は私が大きなソファで。
ジンベエは自分のベッドで。
初めはベッドを貸してくれると言ってくれたが、流石に申し訳なさすぎてソファで寝させてもらうことにした。
私がタイヨウの海賊団の船に飛ばされてから1週間が経とうとしていた。
今はソファでなんとなく寝る前の読書をしている。
ジンベエから借りた魚人島の歴史の本だ。
そんな私の向かいには、ベッドに座るジンベエ。
彼はさっきから私を見ながら何か考えているようだ。
気づかないふりをしながら本を読む。
「鳴海。お前さん、前は誤魔化しとったが、本当は知っとるんじゃろう? 未来へ帰る方法を。」
「へっ!?」
思わぬ問いかけに思わず本を落とした。
「なっ、何、何で急にそんなこと…っ!」
「お前さん、嘘が下手だのう。」
「そっ、んなことは、ない。と思う。」
「いや、下手じゃ。それで? 帰る方法は何じゃい。言うてみい。」
「いや、それは……。」
「何じゃい。何か後ろめたいことでもあるんか。」
ジンベエの眼光が鋭くなる。
彼の言う意味とは全く違うが、後ろめたさはかなりある。
私を過去に飛ばした男の言ったことが本当なら、私はジンベエと肉体関係を持たねばならないからだ。
「後ろめたいっていうか…、申し訳ないっていうか……。」
ジンベエの頭の上に疑問符が浮かぶ。
「後ろめたいことがないなら、言うてみい。乗り掛かった船じゃ。ワシにできることなら手助けしよう。」
さすが、親分と呼ばれているだけのことはある。
もともと面倒見が良いのだろう。
そして何より誠実だ。
私はジンベエのそういうところが前から好きだった。
私だけではない。仲間のみんなもそうだろう。
だからと言ってセックスするのは別かというと、私はそうでもない。
魚人としたことはないが、ジンベエとなら別にしたって良いと思ってる。
だが問題は彼の方だ。
彼も彼の仲間も、散々人間に嫌な思いをさせられてきたのに、人間の女とそんなことしたくないだろう。
未来のジンベエならまだしも、今は未来の時よりも人間と魚人の関係が難しい頃だ。
「……はぁ。」
私は思わずため息を吐く。
「何じゃい、そのため息は。そんなにワシが頼りないんか。」
「違う。そうじゃない。さっきも言ったけど、ジンベエに申し訳なくって。」
「何をそんなに遠慮しておる。今更のことじゃろうが。」
「でも私が帰る方法は、ジンベエにとって予想外だろうし、何より嫌悪を感じると思う。」
「そんなに深刻なんか。」
「まぁ、ね。それでも聞いてくれるっていうなら、言うけど。」
「ううむ。……分かった。手助けしてやれるかは別として、とりあえず言うてみい。」
私はしばし口を噤む。
そして意を決して口を開いた。
「私とジンベエが、セックスするれば未来に帰れる。」
「…………はぁ〜〜〜〜!?!?!?」
ジンベエの大声が船内に響き渡るのだった。