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「高槻鳴海、お前はシズネと少し部屋の外で待っていろ。シズネ、私はネジにことの全てを話す。その間、その子を頼むぞ。」

「はっ!」

部屋の外に出て、シズネさんと2人きりになる。
先ほど刃物を突きつけられたのもあり、なんだか気まずい。
それにさっきから彼女は、私を観察しつつ警戒しているような気がする。
無言の空間も相まって居心地が悪い。

そのまましばらく待っていれば、ネジくんが先ほどの部屋から出てきた。
そしてこちらへ近づき、その白い眼で私の方を見る。私はやや体を固くした。

「高槻鳴海さん、でしたね。貴方の話は全て火影様から聞きました。これから貴方の警護と監視を務める日向ネジです。早速ですが、行きましょう。家へ案内します。」

「……分かりました。よろしくお願いします。」

私よりずっと年下の彼に、何故か敬語を使ってしまった。
彼の不思議な目と、そしてその態度がとても落ち着いているからだろう。

彼の後ろを歩きながら、ふと不思議に思ったことを彼に聞く。

「あの、家って…、私、手持ちのお金が少ないから家賃払えないんだけど…、仕事とか、今後どうすれば……?」

「おそらく貴方がいた世界とこちらの世界では硬貨や紙幣も違うでしょう。よって今の貴方は無一文ということです。しかし火影様から当分の生活費を預かってきたので心配は無用です。」

「生活費……!? いや、それは申し訳なさすぎる…。」

「家賃のことも大丈夫です。貴方にはこれから俺と同じ家で生活してもらいますから。」

「……まじですか。」

「大マジです。でなければ四六時中貴方を監視できませんからね。」

「まぁ、たしかに。」

「部屋はいくつもあるので、そこも心配は無用です。」

どうやら広い家に住んでいるらしい。
しかし家族は良いのだろうか。
私は思ったことをそのまま問う。

「でも、ご家族とかは…?」

「俺に家族はいませんから、ご心配なさらず。」

「…そう。」

しまった。余計なこと聞いた。
また気まずい空気になってしまった。
私は自分の聞いたことを後悔しながら彼の後をついていく。

しばらく歩いていると前から来た3人組が私たちに話しかけた。

「ネジじゃなぁい! 火影様に呼ばれた件はもう良いの? っていうか、その人はどちら様?」

お団子ヘアの女の子がネジくんに問いかけるが、彼がそれに答える前に大きな声がそれを遮る。

「なんと!! ネジよ!! 青春しているではないか!!」

「ガイ先生! この人はまさか! ネジの恋びーー」

「勘違いするな。」

緑の全身タイツを履いた2人組の言葉をピシャリと否定するネジくん。
それにしても、すごい格好だな……。

「ちょうど良い。お前達にも話しておく。人目があるから俺の家へ行くぞ。」

そうして5人で彼の家へ行くこととなった。
道中、ネジくんと知り合いの彼らが世間話をしていたから沈黙に気まずくなることもなく家へ着く。

そして私はその家を見て驚いた。

「でっか……。」

しかしネジくんの知り合いの彼らは当たり前のように家の中へ入っていく。
どうやら何度も来ているらしい。
その自然な行動に、彼らの仲がいいのが見てとれた。

私も彼らに続いて家の中へお邪魔させてもらった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


全員でちゃぶ台を囲み、向き合う。
この中で1番年上らしい全身タイツの男性が早速口を開いた。

「して、ネジよ。火影様に呼ばれた上、お前の方から我らをここへ招いたということは、何か大事な話があるのだな? 我々以外には聞かせられないような。」

その言葉に私は驚く。
まるで以心伝心だ。

「そうだ。」

当たり前のようにそう言うネジに、女の子がスッキリしたような声を上げる。

「やっぱりね〜! これでようやく色々聞けるわ! ねぇ、貴方お名前は? 私はテンテン!」

「私はーー」

「この人は高槻鳴海。あの高槻一族の末裔だ。」

私の言葉を遮ってネジが答える。

「高槻一族というと、大昔に滅んだ一族ではなかったか? たしか、千住やうちはが争っていた時代の一族だろう。」

年長の彼の言葉に、ネジくんが話を続ける。

「あぁ。俺も今日までそう思っていた。が、滅んではいなかった。彼らはその飛眼という瞳力を使って異世界へ身を潜めていらしい。」

「異世界!?」

驚くテンテンちゃん。

「こことは別の世界…という、ことですか?」

もう1人のタイツの男の子が戸惑いがちに聞く。

「そういうことだ。にわかには信じられんが、火影様はそう確信しておられる。しかしスパイとしての疑いもあるため俺が今日から護衛兼監視を務めることになった。この事は他言無用だ。わかったな?」

ネジくんのその言葉に彼らは頷く。
そしてテンテンちゃんが不思議そうに問うた。

「でも、何で異世界で身を潜めてた一族の1人が、急にこちらの世界に戻ってきたの?」

「これも最重要機密事項なのだが、どうやら今から約一年後、この世界に危機的状況が訪れるらしい。
その未来を変えるため、この世界に戻ってきたのが彼女だということだ。本人にその自覚はないらしいが。」

ネジくんがこちらをチラリと見ながら言う。

「ですが、そもそもなぜその高槻一族は、異世界なんかへ身を隠したんですか? しかも、異世界にいるのにこの世界の未来が分かっていたかのように聞こえます。鳴海さんは未来予知か何かの力でもあるんですか?」

タイツの男の子の疑問に、ネジくんが答える。

「彼女に予知能力があるのかは俺も知らん。が、初代高槻にはあったらしい。かなり強い未来予知の力が。おそらく何百年も先の未来が見えていたのだろう。しかしその能力の強さが危険すぎたため、やむなく異世界へ隠れたのだ。」

「未来予知の能力が危険……て、つまりどういうこと?」

テンテンちゃんが問いかける。

「考えてもみろ。一族全員がそんな能力をもっていたとして、1人でも敵に捕まったとする。そうすれば敵に未来を知られることになる。それが敵にとって良い未来だろうが悪い未来だろうが、相手はそれを最大限利用してくるだろう。敵にとって悪い未来ならそれを覆そうと。良い未来ならもっと良い結果を、とな。」

「つまり、相手に悪用されることを恐れて隠れた、ってわけね。」

納得した様子のテンテンちゃんに、ネジくんが頷く。

「なるほど。敵の悪用から一族を守るためにした決断が、異世界への移動だったわけだな。」

タイツの年長の彼がうんうんと首を動かしながら言う。
私は自分の先祖の話を聞いているのに、それを現実として受け止めきれないでいる。
まるで何かの物語の中へ迷い込んでしまったかのような感覚だ。

「それで、鳴海さんは何が出来るの? そんな凄い一族の末裔なら、何が得意分野があるんでしょ?」

テンテンちゃんがズイっと私の方へ身を乗り出した。

「それが……、私は向こうの世界で普通に働いて普通に生きていただけだから、忍術だってできないし、予知能力だってないと思うんだけどね…。」

私は苦笑いしながら答える。

「そうなの?」

意外そうなテンテンちゃん。
ふとネジくんがこちらを見て口を開いた。

「いや。火影様の話では、こちらの世界に来た時に目が赤く発光し頬に彼岸花の紋様が浮かび上がっていたと聞きました。」

「あ、それは確かにさっきも聞いたかも。」

私はさっきの一室での綱手さんの話を思い出していた。

「それは高槻一族の飛眼の特徴。つまり、貴方が自分で術を発動したということです。チャクラも余るほどあります。訓練すれば色々と出来るようになるでしょう。それを見越して、火影様は俺に貴方の教育係も任されたのでしょうから。」

ネジくんの話が、どうにも自分ではしっくりこない。

「いや、あのね。私、そもそもこっちに来たきっかけが、電車に轢かれそうになったからなの。」

「電車、とは?」

タイツの男の子がたずねる。

「え。えーっと、つまり、落ちたら絶対に死ぬところに、誰かに突き落とされたの。」

「突き落とされた?」

今度は年長の彼が私に問いかけた。

「はい。あれは確かに、人為的なものでした。だから私がやったというより、誰かにここへ飛ばされたとしか思えなくて。」

「いや、その話を聞いて確信しました。」

私の話を聞いた直後、ネジくんが話し出した。

「貴方は自分の力でここへ来た。火事場の馬鹿力というやつです。おそらく貴方を突き飛ばした奴は、貴方の正体を知っていた。その上で、貴方の能力を開花させるために貴方を身の危険を感じさせる場所に突き落とした。貴方を突き飛ばした奴に心当たりはありませんか?」

「全くない。私だって自分のこと分かってなかったのに。」

「……。」

辺りに沈黙が流れた。
しかし、ネジくんは不思議だ。聡明だからか、彼の言っていることが全て本当のことのように思えてくる。

もしかしたら、本当に私はこの世界のーー。

「そうだ! 挨拶がまだでしたね! 僕はロック・リー! よろしくお願いします!」

彼の言葉にハッとして、急いで笑顔を作る。

「あ、よろしく。リーくん。」

「リーよ!! ここにきて的確な状況判断だ!! 確かにまだ俺の名を名乗っていなかったな!! 俺はマイト・ガイ! 宜しく頼む、異世界から来たお嬢さん。」

彼は手をこちらに差し出した。握手を求めているのだろう。
一応握っておく。

「先程もネジくんから紹介がありましたが、高槻鳴海です。よろしくお願いします。」

その後、皆んなでお茶を飲みながらしばらく雑談したのだった。
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