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火影室の屋上にサァッと風が吹き抜ける。
シズネは訝しげに口を開いた。

「しかし、異世界なんて、そんなもの……本当に存在するのでしょうか。」

「たしか……、高槻一族は写輪眼や白眼と並ぶ飛眼という月経限界を持つ一族らしくてな。その目は未来予知と時空間忍術を得意としていたらしい。カカシの万華鏡写輪眼は知っているな?」

「ええ、敵の攻撃を違う時空に飛ばす術ですよね?」

「そうだ。その上位互換といったところか。自分自身を時空間ごと飛ばすこともできたらしい高槻一族なら、空間を超えて、違う世界へも行けたかもしれんな。」

「信じがたい話ですね……。」

その時、シズネと綱手の目の前でひとつの光の玉が輝き出した。

「……!?」

「……なんだ!?」

すかさず臨戦体制をとる綱手とシズネ。

その光が徐々に強くなる。
目を開けるのもやっとになったところで、フッと光は消えた。

と同時に、そこからドサリと人が落ちてきたのだ。

「!?」

「……これは。」

綱手は光と共に現れた人間を観察する。
性別は女。年齢は20歳手前ごろだろうか。

体を縮こませていた女がゆっくりと顔を上げた。
その目は赤く発光し、目の下には彼岸花の紋様が刻まれている。

(あの目は……!)

綱手ははるか昔に祖父に聞いた話を思い出していた。

「え、……あれ!?……どこ、ここ!?」

女は至極驚いた様子で辺りを見渡す。

「動かないで。」

シズネは一瞬で女に近づき、懐に忍ばせていた刃物を喉元に突きつける。

「!!」

その殺気を感じてか、女は体をこわばらせた。

「お前、何者だ?」

綱手が問いかける。
はっと綱手の方を見る女の目の下の紋様は、既に消えていた。

「何者って……えっと、高槻鳴海と申しますが…。」

「高槻…だと!?」

「綱手様…これは…!」

しばし考える素振りをし、綱手はシズネに言う。

「……シズネ、離してやれ。」

「しかし!」

「私が良いと言っている!」

「わ、分かりました。」

シズネはしぶしぶといった様子で女を解放した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


電車に轢かれると思ったら、急に知らない場所にいた。
しかもさっきは喉元に刃物が何かを向けられていたと思う。
何が起こっているのか見当もつかない。

私は目の前にいる2人の女性に、ある一室へと案内された。

2人の関係を見るに、綱手と呼ばれたブロンドの女性が黒髪の女性の上司らしい。
綱手さんは一室の奥にある机と椅子に向かっていく。
そしてドカリと椅子に腰掛け、話出した。
その内容は、私には到底受け入れ難い話だった。
全ての話を聞き、私はパンクしそうな頭をどうにか回らせる。
どうやら綱手さんが話を終えたらしく、少しの沈黙が流れた。

「……つまり。私はそのすごい力を持った高槻一族の末裔で、この世界の未来を変えるためにこの世界に飛ばされた、と?」

話の確認のため彼女に問う。

「いや、飛ばされた…というよりも、お前が自分の力でここに来たのだ。高槻一族のものは時空間忍術に長けていた。何より、お前がここに来た瞬間、お前の目の下に彼岸花の紋様が現れているのを私は見た。」

「彼岸花…?」

思わず聞き返す。
今の私はきっと怪訝な顔をしているだろう。
目の前の綱手さんはそれを気にした様子もなく話を続ける。

「それは、高槻一族が瞳術を発動する時に現れる特徴の一つだ。つまりお前が高槻一族で、自分で術を発動した証拠とも言える。」

「でも、私には予知能力や未来を変える力なんてありません。人違いではないでしょうか。だいたい、私のいた世界には忍術なんてもの存在しませんし、もし仮にここが異世界だとしても、私は戦いの役には立てません。なので……ーー」

私の言葉を遮り、彼女は威厳のある声で黒髪の女性の方を向く。

「シズネ! ネジをここに呼べ!」

「日向ネジですか? わりました。」

シズネと呼ばれた人は頷き部屋から出ていった。
それからしばらくして、再び部屋の扉が開く。
そこにはシズネさんと、長い黒髪に白い眼の少年がいた。

「お呼びですか。火影様。」

その白い眼で、彼は綱手さんに声をかける。

「この者にチャクラが流れているか、見てくれ。」

綱手さんの命令に彼は怪訝な顔をするも、すぐに私に向き直った。
一瞬、彼と目が合う。
私はその眼を、怖いと思った。

「白眼!」

少年が何かを呟くと、彼の目の周りにまるで血管のような筋が浮き出てくる。
その直後、彼は驚いたように目を見開いた。

「これは…!」

「どうした、ネジ。」

"ネジ"なんて変わった名前だなぁ、なんて思いながら、私は彼の言葉を聞いていた。

「チャクラが流れているかどうか、なんてものではありません。ありえないほど大量のチャクラです。あのナルトと同等と言っても過言ではありません。」

「え。いや、そんなはずは……。」

よくわからないが、彼の言葉が私の想像の斜め上をいっていることは間違いない。

「ふむ。これで確かになったな。お前はほぼ間違いなく、異世界に身を隠していたあの一族の末裔と言って良いだろう。」

「いや、だから……。」

しどろもどろになる私を差し置いて、綱手さんは大きな声を出す。

「日向ネジ!お前に長期の任務を言い渡す!」

ネジと呼ばれた彼は彼女に向き直った。
綱手さんは話を続ける。

「お前には、この高槻一族の末裔である、高槻鳴海の護衛兼監視を任せる!」

「高槻一族……!……かしこまりました。」

ネジくんは何かを察したようで、おとなしく命令に従うようだ。
しかし私としては"監視"という言葉にいい気はしない。
それを感じとったらしい綱手さんが、口を開く。

「悪いが、お前が敵国のスパイではないと決まったわけではないからな。それも含めてネジをお前につける。しばらく息苦しい生活になるかもしれんが、お前がスパイではなかった場合、お前を守るためにもなる。我慢してくれ。」

「……はぁ。でも私、こちらの世界どころか忍者なんてものには本当に心当たりないんですが……。」

「お前にはチャクラがちゃんと流れている。それはお前がもともとこの世界の人間という証拠だ。ネジ!この子に忍術と体術を教えてやれ。それと目の使い方のコツもな。」

「しかし火影様、良ろしいのですか?」

ネジくんが綱手さんに問いかけた。

「構わん。スパイなら忍術を教えていく過程でボロが出るだろうし、仮にコイツがスパイだったとしても、たかが小娘1人にやられる木の葉ではない。」

綱手さんはニヤリと不敵に笑い、そう言った。
その自信と威厳は、女の私から見ても格好良い。

「それからシズネ。あとで高槻一族に関する書物をかき集め、その子に渡してやれ。自分が何者なのか、しっかり知ってもらう必要があるからな。」

「……分かりました。」

私は何だかどんどん話について行けなくなっていく。
とにかく、とんでもない事になってしまったということだけは理解できた。
まさか、違う世界に来てしまったなんて。
あぁ、早く帰りたい……。

「はぁ…。」

思わず小さなため息を吐いてしまう。





この時の私はまだ知らない。

この世界が、里が、そして彼が、私にとってかけがえない存在になっていくことを。
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