10ヶ月目
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先月の私が連れ去られた事件の後、サクヤとアラシは木の葉の牢に入れられた。
しかし彼らに既に戦意がないことと、戦争からこの世界を救いたいという彼らの意志が汲まれて、1〜2ヶ月程度で牢を出られるそうだ。
あれから私の瞳術は飛躍的に成長した。
他人だけでなく、自分自身も飛飛万象でいろんな場所へ飛ばすことが出来るようにもなった。
時戻しで傷や壊れた物を治すことも。
ただひとつ、時渡りーー未来や過去を見る力ーーだけは自発的に発動できず、夢の中でしか見ることが出来ない。
人に触れてその人の過去をのぞいてしまうことを防ぐため人と触れあうことは極力避けている。
最近はもっぱら時渡りと近距離戦の修行ばかりだ。
そしてもう一つ、あの事件から私の中で変わったことがある。
それはネジに対する思いだ。
今まではただ大人っぽい少年と思っていた。
いや、正確にはそう思うようにしていたのだ。
しかしあの事件で自分の気持ちが浮き彫りになった。
私はネジに傷ついて欲しくないし、最悪な未来の中にネジにいて欲しくない。
それはネジが私とって大切な人になったから。
いつの間にか、私は彼を好きになっていた。
でも、これを彼に伝えるつもりはない。
ネジだって困るだろう。
年上の、いつ異世界へ帰るかもわからない女に告白されたって。
私がまだ元の世界を諦められていない時点で、彼に思いを告げるのは無責任なことだ。
万が一、私がこの世界で生きていく事を決めたなら、その時は伝えても良いかもしれない。
今の所そのつもりはないのだが。
だから、この気持ちには蓋をしておこう。
私の中だけで、大切にしまっておこう。
それで一生、彼にこの気持ちを伝えられなかったとしても。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある日の夕食の時間。
ネジは唐突に箸を置き、改まった雰囲気で私に話しかけた。
「鳴海。お前に、ある物を……渡したいのだが。」
「ある物? 何?」
私も箸を置き、ネジに問う。
ネジは懐に忍ばせていたらしい小さな箱を取り出す。
「……お前が気にいるかは分からないが……これだ。」
「これって……。」
それは綺麗にリボンが結ばれており、どう見てもネジから私へのプレゼントといった感じのものだ。
「ふ、深い意味はない。前にお前は装飾品が好きだと言っていただろう。それに以前のようにお前に敵が現れ、お前に危害を加えようとした時に自動的に発動するよう八卦掌・回天を封印してある。お前は接近戦が苦手だからな。」
彼は珍しく饒舌だ。
「……開けても良い?」
その言葉にネジは少し狼狽えた。
「こ、ここでか?」
「うん。」
「……まぁ、別に構わないが。」
彼は平静を装っているようでいて、少し緊張しているらしい。
私はその姿にクスリと笑う。
ネジはそわそわして、それに気づいていないが。
ゆっくりとリボンを引いて、箱を開ける。
そこには綺麗な花のデザインのネックレスがセットされていた。
「綺麗……。」
それは私だったら選ばないようなデザインだったが、ネジが選んでくれたというだけで特別に輝いて見えた。
ネジは私の反応にややホッとしたようだ。
「ね、付けてみてもいい?」
そう問いかける私に、ネジはやや微笑んで"あぁ"と頷く。
私は丁寧に箱からネックレスを取り出して、自分の首に装着した。
「どう? 似合ってる?」
「あぁ。」
ネジはそれ以上は言わなかったが、私は彼の優しい笑みだけで全てが伝わってくる気がした。
「嬉しい……ありがとう、ネジ!」
笑って言う私に、ネジは真面目な顔つきに変わって話し出す。
「それに封印できた回天の数は3回だ。つまり、3回までは敵の攻撃からお前を守ってやれる。それ以上攻撃されそうな場合、時空間忍術を使ってすぐに逃げるんだ。いいな。」
「うん、分かった。」
ネジが私の為にそこまでしてくれるとは、正直予想外だった。
自分が居ない時まで私を守ろうとしてくれるその姿勢に、期待してしまいそうになる。
だめだめ。期待なんかしちゃダメ。
決めたでしょ。この気持ちには蓋をするって。
ネジがわたしをどう思っていようと、私はまだ元の世界を諦められない。
それ以前に、私はネジにとってただの任務対象。
それ以上でも、以下でもない。
私たちの関係は、それで良い。