9ヶ月目
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木の葉の里に戻りサクヤとアラシを綱手様に引き渡した後、私たち一行は焼肉に来ていた。
そこで私はネジに延々と説教をされている。
「なぜお前を殺そうとした奴らに、時戻しをかけたんだ! 放っておけば死んでいたものを!」
「いや、そうなんだけどねえ。」
私は苦笑いしながらネジの言葉を聞き流す。
「もしも、またアイツらがお前に牙を剥いてきたらどうするんだ!」
「うーん、それはもうないんじゃないかなぁ。」
「分からないだろう、そんなこと! だいたい、お前は考えが甘いんだ! 俺たちが一足遅ければ死んでいたかもしれないんだぞ!」
その言葉にわたしはキョトンとし、首を振る。
「それはないよ。」
「なぜそう言い切れる! 今回はお前のチャクラ量で助かったが、お前と奴らの力の差はーー」
「だって、絶対ネジは助けに来てくれるから。」
今度はネジがポカンとする。
そして、彼はやや照れながら口を開く。
「い、いや。それはそうなんだが。そういうことではなくてだな。」
「もぉ〜、何でも良いじゃなぁい。鳴海も無事だったことだし。」
テンテンが呆れたように私たちを見る。
「そうですよ。結果オーライです!」
キランと歯を輝かせるリー君。
「そうだな、リーよ!」
「まぁだが、ネジの言うこともごもっともだぜ? 普通、あの状況で独断で敵を完治させるのは周りへの配慮にも欠ける。次は気をつけるこったな。」
またしても呆れたようにシカマル君に嗜められる。
「は、はい。すみませんでした。」
本当に彼らは私より年下なのだろうか、と疑いたくなる。皆しっかりしている。
「まぁ良いじゃねぇか。アイツらは戦意喪失してたし、高槻の嬢ちゃんだって、思うところがあってああしたんだろ? 同族殺しなんて、虚しいもんな。」
アスマさんが優しく私に言う。
「……はい。彼らと私は、考え方は違うけど、目指す場所は同じなんじゃないかと思えて。それに、今まで苦労して必死に生きてきた彼らが、夢半ばで死ぬのも……私は……。」
「お前は優しすぎるんだ。鳴海。」
ネジが、はぁ、とため息をこぼしながら言う。
「そんなことは……。」
ないと思う。
彼らの事を考え出したら、なんだかしんみりしてしまった。
それに気づいてか、チョウジ君が声を張り上げた。
「まぁ、まぁ! みんな、今は焼肉の時間だよ? こんな空気、良くないよ! せっかくなら楽しまなきゃ! はい、お肉!」
そう言いながら私にお肉をくれるチョウジ君。
「珍しいじゃねぇか。チョウジ。お前が人に肉をやるなんてよぉ。」
シカマル君の言葉にチョウジ君が口を開く。
「だって、今日の1番の功労者は鳴海さんだからね!」
「ありがとう、チョウジ君。」
私は胸が暖かくなるのを感じた。
その日の夜は皆でどんちゃん騒ぎをして楽しんだが、私は少しだけ、自分1人が異質なような気がして寂しくなった。
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鳴海が連れ去られた時は、本当に肝が冷えた。
どうしてそばに居なかった。なぜ少しでも油断した。そう自分を責めた。
しかしそんなことの前に迅速に火影様に報告しなくては。
そして俺は増援部隊であるガイ班、アスマ班とともに鳴海のもとに向かった。
白眼で彼女が無事であると知った時はひとまず安心したが、状況は一刻を争う。
皆で急ぎ彼女の元へ駆ける。
今思えば、俺は移動する間も冷静さを欠いていた。
鳴海のことしか考えられず、彼女の安全をこの目で確かめるまでは心が掻き乱されるようだった。
挙げ句の果て、俺はいつもだったら避けられる程度の攻撃をまともに喰らって意識を失っていた。
本当に、いつもの自分じゃなかった。
今回のことで、もう言い逃れは出来なくなったな、と心底痛感する。
そう。俺にとって、彼女は特別な人なんだと。
世界の危機が去ればこの世界から消えてしまうかもしれない人。
そんな人を、俺は慕ってしまったのだ。
焼き肉からの帰り道、そんな事を思いながら彼女をチラリと見れば、先ほどからどこなく元気がないような気がする。
敵の襲撃を受けてナイーブになっているのだろうか。しかし彼女はその敵にすら慈悲を与えた。
しかも、彼らがもう自分を襲わない確信があるらしい。
では、一体なぜそんなに浮かない顔をしている。
「どうしたんだ。浮かない顔だな。」
「……そう?」
彼女は作り笑いで俺を誤魔化そうとする。
俺は少しムキになって鳴海に問う。
「誤魔化したって無駄だ。何があった?」
少しの沈黙の後、彼女は話出す。
「………。なんだが、私1人だけがこの世界からはじかれてるみたいで、寂しいなって。元の世界に帰りたいくせに、なに言ってんだって話だよね。」
「……やはり、まだ元の世界には帰りたいか。」
「まぁ、ね。」
「そうか。」
今度は俺が気落ちする番だった。
分かってはいるつもりだったが、いざ彼女の口からそれを聞くと堪える。
「この世界で生きていくという選択肢も、あって良いんじゃないか。」
気が付けばそんなことを口走っていた。
俺が言っていることは酷く無責任な発言だ。それで彼女が家族や友と一生会えなくなると、分かっているのに。
「そう、なんだけどね……。」
彼女の返答は煮え切らない。
「向こうに家族や友がいる以上、お前にとっては無理のある選択肢だな。」
俺は心の中で自嘲しながら言う。
しかし彼女は首を横にふった。
「それだけじゃないの。それももちろんあるけど、この世界が、私を受け入れてくれるかどうかが怖いの。」
「……どういうことだ?」
「この世界……っていうより、この世界の人達に……って言った方が正しいのかな。うん、そんな感じ。」
まだ彼女に監視の命令が出ている以上、更に無責任なことを言うのは憚られる。
俺が言葉を選んでいると、彼女は俺に向き直って言う。
「まぁ、そんなこと考えても仕方ないんだけどね!」
彼女は笑ってそう言った。
しかしそれが空元気であることくらい、俺でもわかる。
俺は鳴海にかける言葉を見つけられないまま、2人で家路に着くのだった。