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9ヶ月目

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ふと目を覚ます。

「(そうだ……私、連れ去られて……。)」

辺りを確認すれば、どこかの廃墟にいるようだ。
私は壁にもたれかかって座り込み、手を後ろできつく結ばれている。

「目が覚めたようだな。ずいぶん良く眠っていたが、よほど寝心地が良かったと見える。」

私を連れ去ったマントの二人組がこちらに近づく。

「あんた達、何者なの?」

私の問いに、二人組が目深に被ったフードを外す。
1人は中性的で中肉中背の男、もう1人はゴツゴツとした印象のガタイの良い男。

中性的な男が話出す。

「俺はサクヤ。こっちのデカいのはアラシ。俺たちはこの世界に残った高槻一族最後の生き残りだ。」

「この世界に残った……生き残り!?」

この世界に残った高槻一族がいたなんて、そんなことはどの文献にも載っていなかった。
しかし彼らを見るに、飛飛万象・改の副作用である白髪化は起きていない。
つまり、異世界へ渡っていないということの証拠でもある。

「そうだ。もうこの世界には俺たち2人しかいない。」

「……3人、でしょ。今は私もいる。」

私の言葉にサクヤは一瞬眉を顰めた。
が、すぐさま真顔に戻って私に話しかける。

「………。今日はお前に聞きたいことがあってここへ連れて来た。」

「聞きたいこと?」

「お前はこの世を救う事を何と心得る。」

「……? この世を、救う?」

私は訳が分からずオウム返しをしてしまう。

「そうだ。そのためにお前はこの世界に来たのだろう。わざわざ"飛飛万象・改"まで使って。」

「……確かに私は、この世界や里の未来を変えるためにここへ来たらしい。けど、もともとは自分の意思で来たわけじゃない。」

「つまりお前は、誰かにここへ来させられたと?」

「そうだけど、術を発動したのは私。だからーー」

私の言葉を遮るサクヤ。

「もういい。お前のことは良く分かった。当事者意識のカケラもない女だということが。」

「違う!そういうことじゃない!私が言いたいのはーー」

「もう黙れ。お前に用はなくなった。」

サクヤは懐からクナイを取り出しこちらに近づく。
どうやら私は殺されるらしい。
時間稼ぎのために私は彼らに問うた。

「……だいたい、あんた達の目的は何なの?」

サクヤの動きが止まる。

「……。良いだろう、冥土の土産に話してやる。……俺たちの目的は、この世を救うことだ。」

私は彼らの言葉に耳を傾ける。

「俺たちの先祖は高槻ガクガンとは違い、異世界へ行く事を望まない、高槻の中でも少数派の派閥だった。ガクガンらがついに異世界へ逃げて行く日、俺たちの先祖はこの世界に残り隠れながら生きていくことを決めた。それから今まで、世界を転々としながら細々と生きてきた。餓えと貧困に苦しみながらも、約束の日のために生き延びてきた!その苦労が報われる時が、ようやく来たのだ!」

「それって、里と世界の危機と関係してるの?」

「そうだ。最近、世を騒がせている暁という集団がいる。奴らは近いうちに戦争を起こす。その戦争からこの世を守るのが俺たちの役目なのだ。」

「……たしかに、私は最近まで当事者意識なんてなかったのかもしれない。だけどこれだけは言える。私にだってこの世界で守りたい人はいる! だから、その戦争の先の酷い未来を変えるためなら、私も一緒に戦う!」

「それは無理だ。」

「何で!?」

「お前と俺たちとでは一生分かり合えん。」

「どうしてそう言い切れるの!?」

「お前は別の世界でのうのうと生きてきた! そのくせお前だけが里に守られて平和を享受している! お前だけが救世主として扱われている! その役目はこの世界で耐え忍んで来た俺たちだけで十分だ! 平和ボケしたお前など要らない、今ここで死ね!」

「別に救世主として扱われてなんていない! 貴方達と私と、一緒に未来を変えることは出来ないの!? 同じ一族の末裔なのに、なんで殺されなきゃいけないの!?」

「お前はやはり、一族の誇りを失って異世界へ逃げた逃げ腰野郎の末裔だ! そんな人間はこの世界には必要ない! お前はただ死ねば良い! それがこの世界の為になる!」

サクヤがこちらに向かってクナイを投げる。

「そんなの……納得できない!」

私は両腕を解放させてそのクナイを体ごと避けた。
そう、私は時間を稼ぎながらネジに教わった縄抜けをしたのだ。

「縄抜けの術か。どうやら忍の基本はなっているようだな。」

「簡単に殺されるつもりはない!」

そう言い私は戦闘の構えをとった。

その時ーー。

「よく言ったぁ! 鳴海さんよ!!」

私とサクヤの間に8人の忍が割り込んだ。

「ガイさん! ネジ!」

そう、そのうちの4人はガイ班だ。

「大丈夫か!? 鳴海!!」

目の前で私を庇うように立ち塞がったネジが、言葉と視線で私の安否を確認する。
その節々から私を心配してくれていることが伝わってきて、私は思わず彼の存在に安心する。

「うん、大丈夫。」

それと同時に、負ける気がしない。
私は強気に微笑んだ。
ネジがホッとした空気を醸し出す。

「助けにきたわよ! 鳴海!」

「僕達が来たからには、もう大丈夫です!」

テンテンとリーの言葉に嬉しくなる。

「ありがとう、みんな。」

「どうやら敵は2人だけみてぇだな。」

髪を一つに結んだ少年が言う。

「これなら、フォーメーションBだね。」

ぽっちゃりした男の子の言葉に、皆んなが頷く。
そして、戦いは始まった。

しかし。

サクヤが距離を取ったと思った瞬間ーー

「飛飛万象!」

ーー時空が歪んで一瞬で数人が消えていなくなった。

「これは…! 時空間忍術か!」

ガイさんと同年代くらいの髭をはやした男性が言う。
消えたのはサクヤに攻撃を仕掛けようとしたガイさん、リーくん、ぽっちゃりした子だ。

私は今の攻撃を見て、簡単に状況を説明する。

「皆さん! 彼らは私と同じ高槻一族の末裔です!」

「何だと!?」
「!?」
「この世界にも、まだいたの!?」

思い思い反応する彼らに私は言葉を続ける。

「恐らく私以上の時空間忍術使い。話し合いには応じてくれませんでした。私と協力して未来を変えることには反対のようで、私を殺すことが目的のようです。」

「何だと?」

ネジが言いながら彼らを睨む。

「その女の言う通りだ。」

私の言葉を肯定するサクヤ。

「世界のため、この女には死んでもらう。」

「こっちも火影様の命で来てるんでね。それは止めさせてもらう。」

髭の男性が変わった形の刃物を握りしめながら構えを取る。

その隙にネジが小声で私に話しかける。

鳴海。お前なら、飛ばされたリーとガイ先生、それとチョウジをこちらへ戻すことができるはずだ。やれるか?」

「ちょっと待って、私、人を飛ばしたことなんてない!」

「分かっている。だがこのままじゃ、いずれ全員が奴に飛ばされて終わりだ。この戦い、お前の瞳術が鍵になる。」

私はネジの言葉に黙り込む。
できるだろうか。私に。

「大丈夫だ。お前ならできる。何度も物で練習したんだからな。」

怖い。でも、そんなことは言っていられない。
彼らが居なくなったら私は十中八九、サクヤ達に殺されるだろう。

「……分かった。やってみる。」

私は印を結んでチャクラを練る。
その次にガイさんをできる限り鮮明に想像する。
そしてーー。

「飛飛万象!」

「なっ、なんだぁ!? 戻ってきたのか!?」

ガイさんが歪んだ空間から一瞬で現れる。

「(よし!できた!)」

私は心の中でガッツポーズをする。

「次はリーくんを戻します! 飛飛万象!」

「おわっ! 一体、何が起きたんですか!?」

リーくんも戻ってきた。

「リーよ! 俺達はおそらく鳴海さんの術で呼び戻されたのだ!」

「良い調子だ。次はチョウジも頼む。」

髪を一つに結んだ少年が私に言う。
チョウジ君とは恐らくぽっちゃりした子のことだろう。

「はい!………飛飛万象!」

またしても歪んだ空間からチョウジ君を戻すことに成功する。

「わっ、戻ってきた!」

チョウジ君は目を丸くして驚いている。

「良くやった、鳴海。」

ネジに褒められる。それだけで、私の中に物凄い自信が湧いてくるから不思議だ。

「また誰かが飛ばされても、私が呼び戻します!」

気付けば私はそう口にしていた。

「ふっ、頼もしい嬢ちゃんだ。」

「笑ってる場合かよ、アスマ。」

髭の男性はアスマさんと言うらしい。

「そういうお前も、作戦が立てやすくなったんじゃないか? シカマル。」

「……まぁな。」

アスマさんはひとつ結びの男の子をシカマルと呼んだ。どうやらシカマル君は参謀的なポジションなのだろうか。

「俺たちアスマ班はデカい方をやる! いの! 準備はいいか!」

「いつでもいいわよ!」

金髪の女の子はいのちゃん。
よし、全員の名前を覚えた。

「ガイ班はそっちの女顔だ! 鳴海さん! アンタは後方にいて、飛ばされたやつをひたすら戻し続けてくれ!」

「分かりました! シカマル君!」

私の言葉に一瞬目を丸くするシカマル君。
まさか名前を呼ばれるとは思ってなかったのだろうか。
しかし彼はすぐに視線を前に戻し、不敵に笑った。

鳴海、無理はするなよ。」

こちらを振り返らずに言うネジの言葉に"うん"と頷く私。

それからは瞳術と瞳術の戦いと言っても過言ではなかった。

サクヤとアラシが飛ばした人たちを私がひたすら戻し続け、木の葉側は何とか攻撃を繋いでいる。

最初は複数人を飛ばせるサクヤとアラシの方が有利に思えた。
しかし時間が経つにつれ、彼らに変化が起きてきた。

どうやら彼らのチャクラが減ってきたようだ。
サクヤとアラシは飛飛万象を使う回数が減り、こちらの攻撃が当たるようになってきた。

私はまだまだチャクラがある。
これならいける!

そう思った時だった。
突然サクヤとアラシの位置が入れ替わったのだ。

そしてアラシの剛腕がネジを捉え、ラリアットのようにして廃墟の壁に突き飛ばした。

「ぐ……っ!」

ネジは声にならない声をあげて吹っ飛ばされ、壁が崩れ落ちる。

「ネジ!!」

私は崩れ落ちた瓦礫をかき分けてネジを起こす。
しかし彼は目を覚さない。

「ふっ、アラシの腕力は凄いだろう。その男、2度と目覚めないかもしれんな。」

サクヤの言葉に、私は頭に血が上る感覚を覚える。

「肉弾戦車!」

「影縛り! いの!」

「心転身の術!」

アスマ班のコンビネーション技がサクヤに決まったらしい。
アスマさんがサクヤにトドメを刺す。

心転身とかいう術がとけたからか、サクヤは意識を取り戻す。

「ぐ……っ! くそっ!」

「サクヤ!!」

サクヤに駆け寄ろうとするアラシをガイさんとリー君の体術が襲う。
極め付けはテンテンの飛び道具。

「ぐあっ!!」

サクヤとアラシは満身創痍の重症になった。

血だらけの体を引き摺りながら、急所を刺されたサクヤを抱えるアラシ。

「くくく…。俺たちを仕留めたつもりだろうが、甘いな、木の葉の連中も!」

「何?」

問いかけるアスマさん。
しかし私は彼らの言葉が頭をすり抜けていく。
まだ目を覚さないネジを見て、腹の奥底が沸騰するように熱い。

「(許せない……!)」

煮えたぎる腹の内をなんとか抑えている間に、サクヤが印を結んだ。

「時戻し……!!」

そう、サクヤは自分に時戻しの術をかけたのだ。
つまり、満身創痍の状態からチャクラが十分にある数分前の状態に自分達を戻すつもりだ。

サクヤの体がみるみるうちに治っていく。
アスマさんをはじめ、皆がその光景に唖然としている中、私だけがサクヤとアラシを睨んでいた。

「(そなことは、させない!)」

自分が冷静さを欠いていることは分かっていた。しかし、今なら何でも出来る気がした。

私は気付けば荒々しい声を上げていた。

「時戻し!!!」

木の葉の忍の皆が驚いたようにこちらを見る。

私は数分前に戻ろうとするサクヤを、さらに時戻しで重症の状態に戻そうと時戻しを発動させた。

「何……だと……!?」

サクヤの苦しげな声とともに、傷口が開いたり閉じたりしている。
時戻しと時戻しの我慢比べだ。

「これは…! 時間を戻す術かなにかか!?」

ガイさんの言葉にシカマル君が解説をいれる。

「恐らく、そうだ。傷をなかったことにしようとする奴に対抗して、鳴海さんは傷があった状態へ更に時間を戻している。つまり、これは瞳術同士の戦い。チャクラの残量か、もしくはどちらの瞳術が優れているかで勝負が決まるぞ。」

彼らの言葉など耳に入っていない私は集中力を上げて更にサクヤを追い込む。

「はぁぁぁあぁぁ!!」

「ぐ……っ!……貴様ぁ!……どこでそんなチャクラ量を手に入れた……っ!」

「もともと私のものだ! お前達はここで倒す!」

「ぐあ! あぁあぁあぁ!!」

サクヤが苦痛の声を上げる。
彼のチャクラが切れたのか、傷の修復力がなくなる。
私はそれ以上時が戻らないよう、すかさず時戻しを止める。

サクヤとアラシは再び満身創痍にもどる。
2人とも急所を攻撃されている。
時期に命がなくなるだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

「お前の……、勝ちだ。女。」

倒れ込んだサクヤはそう呟く。
私は荒い息を整えながら、いまだ起きないネジを抱き抱える。

「お前に、この世界が救えるか。」

サクヤは私に問いかけた。
私はネジを抱える腕を強め、言う。

「知らないよ、そんなこと。ただ、私に出来ることをするだけ。」

「ふっ、そんなことでは、この世は救えんぞ。だが、その眼は悪くない。俺たちの希望、お前に託す。」

「勝手に託すな。馬鹿野郎。アンタ達も、私と一緒に未来を変えるんだよ!」

言いながら、わたしは印を結んだ。

「時戻し!」

私のその言葉とともに、敵である彼らの体がみるみる内に綺麗に戻っていく。
サクヤとアラシは目を丸くする。

「なっ! 何やってんだ!」

シカマル君が私を非難する。

「これから先、世界の危機が訪れるなら、戦力は多いに越したことはないでしょ。」

「だからって! 貴方を殺そうとした奴らを助ける義理なんて!」

いのちゃんが言う。

「私のことは別に良い。でも、ネジを殴ったことは誤ってもらう。」

私は言いながらアラシをにらむ。
アラシは驚いた顔を真顔にしてこちらを向く。

「………すまなかった。」

私はその言葉を受け取って、自分の中でどうにか昇華する。

「分かったなら、良い。」

まだモヤモヤとする気持ちはあるが、まぁ良しとしよう。
サクヤとアラシは私を見て何か言いたげにしている。
が、私はネジを揺らして起こそうと試みる。

「ネジ、ネジ。大丈夫?」

彼は少しだけ顔を顰めて、やがて目を覚ました。

鳴海……?」

「良かった、体は大丈夫?」

「あぁ、問題ない。すまない。」

彼は自分で体を起こすと、ゆっくりと立ち上がる。
どこにも異常はなさそうだ。

「……! 鳴海その目! 大丈夫なのか!?」

立ち上がった彼は私を見てギョッとする。

「え?」

私は自分の頬を伝う生暖かいものに気付き触れる。
どうやら眼から血を流しているようだ。
気づかなかった。

「使い慣れてない瞳術を急激に使うとそうなる。時期に止まる。安心しろ。」

サクヤが私に言う。
ネジは傷ひとつない彼らを見て顔を顰める。

「おい、俺が気を失っている間に何があった?」

「説明するのもめんどくせぇよ。」

シカマルがうなだれる。

「とりあえず、こうなったらこいつらは木の葉の里に連行する。戦意はもう無いみたいだした。」

アスマさんがそう言って彼らを拘束した。
長い戦いが、幕を下ろした。

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