3か月目
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飛眼。その瞳術は時空間忍術を得意としており、過去や未来を見る力がある。
私は最近、その飛眼を徐々にだが発動できるようになってきていた。
いまだにチャクラを練ったり水の上を立ったりする感覚は掴めないけれど、瞳に意識を持っていった状態で集中すると、うっすらだが頬に彼岸花の模様が現れるようだ。
その時の景色の見え方は特に変わらないから、自分ではあまり自覚はないが。
それにまだ時空間に物を飛ばしたりすることもできない。
今日も今日とて、みっちり読み書きの練習と忍術、体術の特訓をしてもらい、今はその休憩中。
縁側にネジと2人で座り、冷たいお水を飲む。
「っはぁー! 染みる!」
そう言ってコップを置き、私は伸びをする。
「少しずつですが、チャクラコントロールも出来るようになってきています。あと1、2か月もあれば水の上に立てるようになるかもしれませんよ。」
「ほんと!?」
「えぇ。俺も貴方の成長スピードには驚いています。戦いのない世界から来て、忍びの基本を全く知らない人がここまで早くチャクラコントロール出来るなんて。飛眼の方のコントロールはまだまだですが。」
ネジにはたまに向こうの世界の話をしたりしていたから、私がどれだけ戦いと無縁なところにいたか重々理解してくれている。
「そっかぁー、あと2か月か!」
私はワクワクしながら水の上に立つ瞬間を想像する。
自分が自然と笑顔になっていくのを感じていた。
それにしてもいつも厳しいネジに褒められるとは、かなり嬉しい。
そういえば、ネジはエリート忍者らしいが彼はどのくらいの歳でチャクラコントロールを会得したのだろう。
というか、子供の頃のネジってどんなだったんだろう?
そんなことを思いながら再び水を飲もうとコップに手を伸ばした時、ふいにネジの手と私の手が当たる。
その瞬間、頭にたくさんの情報が流れ込んで来た。
「……!?……っぐ!」
頭が割れそうに痛い。
「どうかしましたか!?」
ネジが心配そうにこちらを伺っている。
しかし私はそれどころではない。この、頭に流れ込んでくる情報…。これは…、一体……!?
ーー「人は決して変わることなど出来ない!」ーー
ーー「俺が火影になってから、日向を変えてやるよォ!!」ーー
ーー「運命なんて、誰かが決めるもんじゃない。」ーー
これは…これはきっと、ネジの過去だ…。
しかもただの過去だけではなく、当時の彼の感情までも詳細に流れ込んできている。
それを理解した瞬間、私の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「……なっ、どうしたのですか。」
ネジが隣りで狼狽えているのが分かる。
しかし私は彼の方を向く事ができない。
過去を見てしまった後ろめたさと、今目を合わしたらもっと泣いてしまうという確信があったからだ。
「ネジ……ごめん。ネジの過去、見ちゃった、みたい。」
「……!」
ネジから少し驚いたような気配がしたが、すぐにいつもの平静を取り戻す。
「飛眼の力ですね。おそらくコントロールが効いてないのでしょう。」
そして呆れた声で私に問う。
「それで? どうして貴方が泣いているんです?」
「だって……。ネジが……、辛そうで……。」
「まったく。これじゃ、どっちが年上か分からないな。」
少なからず彼も動揺しているのか、いつものですます口調がなくなっている。
「ごめん…。ネジが……、小さい頃からずっとずっと、迷いながら頑張って生きてきたんだって思ったら……なんか、勝手に出てくるんだよ。」
ネジが再び少し驚いた気配を醸し出す。
しばしの沈黙が2人の間に流れた。
「昔の俺は、嫌な奴だったでしょう。」
彼は自虐気味に笑って言う。
「でも、それだけ辛かったんでしょう?」
私の言葉に返事はない。
「ネジは凄いよ。」
「……そんなことはない。」
「いや、凄い。絶対凄いよ。」
「俺の仲間達も俺を天才と呼ぶ。でも俺はーー」
「違う。そういう意味じゃない。」
私はネジの言葉を遮った。
涙はまだ止めどなく流れてくる。
「……? じゃあ、どういう意味だ?」
彼が不思議そうにこちらを見ているのがわかった。
「苦しみを1人で背負って、それでも前を向いて生きていることが凄いんだよ。」
「……!」
「ネジが天才だとか、エリート忍者だとか、そんなことは大事なことじゃなくて。ネジの心が、……悲鳴をあげてた心が、今はあったかいじゃん。」
私はネジを見て、流れる涙をそのままに笑った。
「……。」
彼はしばらく私を見つめ、そして前を向く。
「だとしたら、俺をそうしたのは……ナルトだ。」
「火影になるって言ってた男の子?」
「あぁ。」
「……。そっか。でもさ、きっかけはその子かもしれないけど、前を向く事を決めたのはネジでしょ?」
「そう、なんだろうか……。」
「そうだよ。だから凄いんだよ、ネジは。」
ネジは黙り込んだ。
私はようやく頬に伝う涙を袖で拭う。
涙は止まった。
「ありがとう。」
ふと聞こえた言葉にネジの方を向けば、彼は穏やかな微笑みでこちらを見ていた。
思わずこちらも微笑み返す。
そしてこの雰囲気を仕切り直すために、声を上げた。
「さて! こんなんじゃ気軽に人と触れ合えないから、飛眼のコントロール訓練、やりますか!」
私の言葉に、フッと笑うネジ。
「あぁ、そうだな。」
この日を境に、ネジは私に砕けた話し方をするようになったのだった。
私は最近、その飛眼を徐々にだが発動できるようになってきていた。
いまだにチャクラを練ったり水の上を立ったりする感覚は掴めないけれど、瞳に意識を持っていった状態で集中すると、うっすらだが頬に彼岸花の模様が現れるようだ。
その時の景色の見え方は特に変わらないから、自分ではあまり自覚はないが。
それにまだ時空間に物を飛ばしたりすることもできない。
今日も今日とて、みっちり読み書きの練習と忍術、体術の特訓をしてもらい、今はその休憩中。
縁側にネジと2人で座り、冷たいお水を飲む。
「っはぁー! 染みる!」
そう言ってコップを置き、私は伸びをする。
「少しずつですが、チャクラコントロールも出来るようになってきています。あと1、2か月もあれば水の上に立てるようになるかもしれませんよ。」
「ほんと!?」
「えぇ。俺も貴方の成長スピードには驚いています。戦いのない世界から来て、忍びの基本を全く知らない人がここまで早くチャクラコントロール出来るなんて。飛眼の方のコントロールはまだまだですが。」
ネジにはたまに向こうの世界の話をしたりしていたから、私がどれだけ戦いと無縁なところにいたか重々理解してくれている。
「そっかぁー、あと2か月か!」
私はワクワクしながら水の上に立つ瞬間を想像する。
自分が自然と笑顔になっていくのを感じていた。
それにしてもいつも厳しいネジに褒められるとは、かなり嬉しい。
そういえば、ネジはエリート忍者らしいが彼はどのくらいの歳でチャクラコントロールを会得したのだろう。
というか、子供の頃のネジってどんなだったんだろう?
そんなことを思いながら再び水を飲もうとコップに手を伸ばした時、ふいにネジの手と私の手が当たる。
その瞬間、頭にたくさんの情報が流れ込んで来た。
「……!?……っぐ!」
頭が割れそうに痛い。
「どうかしましたか!?」
ネジが心配そうにこちらを伺っている。
しかし私はそれどころではない。この、頭に流れ込んでくる情報…。これは…、一体……!?
ーー「人は決して変わることなど出来ない!」ーー
ーー「俺が火影になってから、日向を変えてやるよォ!!」ーー
ーー「運命なんて、誰かが決めるもんじゃない。」ーー
これは…これはきっと、ネジの過去だ…。
しかもただの過去だけではなく、当時の彼の感情までも詳細に流れ込んできている。
それを理解した瞬間、私の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「……なっ、どうしたのですか。」
ネジが隣りで狼狽えているのが分かる。
しかし私は彼の方を向く事ができない。
過去を見てしまった後ろめたさと、今目を合わしたらもっと泣いてしまうという確信があったからだ。
「ネジ……ごめん。ネジの過去、見ちゃった、みたい。」
「……!」
ネジから少し驚いたような気配がしたが、すぐにいつもの平静を取り戻す。
「飛眼の力ですね。おそらくコントロールが効いてないのでしょう。」
そして呆れた声で私に問う。
「それで? どうして貴方が泣いているんです?」
「だって……。ネジが……、辛そうで……。」
「まったく。これじゃ、どっちが年上か分からないな。」
少なからず彼も動揺しているのか、いつものですます口調がなくなっている。
「ごめん…。ネジが……、小さい頃からずっとずっと、迷いながら頑張って生きてきたんだって思ったら……なんか、勝手に出てくるんだよ。」
ネジが再び少し驚いた気配を醸し出す。
しばしの沈黙が2人の間に流れた。
「昔の俺は、嫌な奴だったでしょう。」
彼は自虐気味に笑って言う。
「でも、それだけ辛かったんでしょう?」
私の言葉に返事はない。
「ネジは凄いよ。」
「……そんなことはない。」
「いや、凄い。絶対凄いよ。」
「俺の仲間達も俺を天才と呼ぶ。でも俺はーー」
「違う。そういう意味じゃない。」
私はネジの言葉を遮った。
涙はまだ止めどなく流れてくる。
「……? じゃあ、どういう意味だ?」
彼が不思議そうにこちらを見ているのがわかった。
「苦しみを1人で背負って、それでも前を向いて生きていることが凄いんだよ。」
「……!」
「ネジが天才だとか、エリート忍者だとか、そんなことは大事なことじゃなくて。ネジの心が、……悲鳴をあげてた心が、今はあったかいじゃん。」
私はネジを見て、流れる涙をそのままに笑った。
「……。」
彼はしばらく私を見つめ、そして前を向く。
「だとしたら、俺をそうしたのは……ナルトだ。」
「火影になるって言ってた男の子?」
「あぁ。」
「……。そっか。でもさ、きっかけはその子かもしれないけど、前を向く事を決めたのはネジでしょ?」
「そう、なんだろうか……。」
「そうだよ。だから凄いんだよ、ネジは。」
ネジは黙り込んだ。
私はようやく頬に伝う涙を袖で拭う。
涙は止まった。
「ありがとう。」
ふと聞こえた言葉にネジの方を向けば、彼は穏やかな微笑みでこちらを見ていた。
思わずこちらも微笑み返す。
そしてこの雰囲気を仕切り直すために、声を上げた。
「さて! こんなんじゃ気軽に人と触れ合えないから、飛眼のコントロール訓練、やりますか!」
私の言葉に、フッと笑うネジ。
「あぁ、そうだな。」
この日を境に、ネジは私に砕けた話し方をするようになったのだった。