2カ月目
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こちらの世界にきて1カ月以上が経った。
毎日毎日、忍術や体術の基本から文字の読み書きまでみっちり勉強をしている。
そしてタダで住まわせて貰うのも申し訳ないので料理だけはやらせてもらっていた。
掃除は数日に一度来てくれる日向一族のおばあちゃんがいて、名をキヨさん。
キヨさんのお掃除テクは完璧で、たまにお手伝いさせてもらっている。
洗濯は1日ずつ交代制で自分のものは自分でやるということになった。
そして今はこの大きな家の庭で体術の基本、体力作りをしている。
「にじゅう…に…! にじゅう…さん! にじゅう…ご!」
「いや、今のは24です。」
横で本を片手に私の間違いを指摘するネジくん。
私はといえば、その指摘に返事をする余裕もなく汗だくになって腕立て伏せをしている。
ありえない。
腕立て30回なんて。
私は大の運動嫌いだと言うのに。
「さん……じゅう…!」
目標の30回を達成して、地面にぺたりと倒れ込む。
「30回……! 達成……!」
「では次、腹筋50回いきましょう。」
「………。」
もう何度心が折れたことか。
私はしぶしぶ体を起こして腹筋の体制をとる。
ネジくんはといえば、本片手にもう片方の手で私の両足を押さえている。
しかも凄い力だ。
忍者ってすごい。
話によると彼は上忍とういう、忍の中でも上の階級の人らしい。
どうりで16歳らしくないわけだ。
ちなみに年齢は前にテンテンちゃんに会った時にひっそり聞いておいた。
私は体も19歳、精神年齢も29歳とどっちをとっても彼より年上なのに、年上の威厳なんてものは全くない。
むしろ私の方が子供っぽい。
「よんじゅう…きゅう!……ご……じゅう!!……はぁっ! やっと終わった…!」
「では休憩を挟んで組み手をしましょう。」
休憩はいつも通り30分。
体に付着した砂をパンパンと払い、縁側へ行き座る。
そのまま上半身だけパタリと縁側に寝転ぶ。
ネジくんが居なくなったと思ったら、冷蔵庫から冷たい水を持ってきてくれたらしい。
私にそれを差し出す。
「ありがとう……。」
しかしその水を飲む気力もなく、あまりの疲労感に目を閉じる。
そよ風が心地よい。
このまま眠ってしまいそうーー。
そう思いながら、私は意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…さい。起きてください。」
肩を軽く揺さぶられる感覚に、ゆっくりと目を覚ます。
「……あれ、私……。……しまった! 何分くらい寝てた!?」
私は現状を理解して飛び起きる。
「1時間ほどです。」
「1時間!? うわ、ごめん。すぐに組み手をーー」
「いや、疲れが溜まっているようなので、今日は瞳術の使い方のコツを教えます。組み手よりは体を使いませんから。」
「……ありがとう、ごめんね。」
「気にすることはありません。休息もたまには必要ですから。」
この1カ月で気付いたことがある。
このネジという少年は冷たい瞳のように冷徹な子かと思ったら、案外そうでもない。
ちゃんとよく人を見ているし、優しさもある。
その瞳が冷たく見えたのは、ただ私が無知なだけだったのだ。
今ではもう、この瞳を怖いとは思わない。
「じゃあ、瞳術の方よろしくネジくん。」
私がそう言うと、彼は少しだけ眉を顰めた。
「どうしたの?」
「いえ……。実はずっと思っていたのですが、その……ネジくん……という呼び方、少々子供っぽくはないですか? 出来れば、ネジと呼び捨てにして貰った方が、有り難いのですが。」
「え、そうだったの?」
確かに私から彼を呼ぶ時、いつも変な間があったり、微妙な顔されることはよくあった。
てっきり私のことあんまり好きじゃなからなんだと思っていたくらいだ。
「もしかして、今までもそれで微妙な顔してたの?」
「まぁ……。なんだか、子供扱いされている気分です。」
「それはごめん。ただ馴れ馴れしく呼んだら失礼かと思って。じゃあ、これからはネジって呼ぶね。」
「えぇ。そうして下さい。」
「でも良いの? もし私がスパイだったら、こんな風に仲良くなるの、ダメなんじゃない?」
私はニヤリと笑って、いたずら心で聞いてみる。
「俺も最初はその可能性も高いと思っていました。しかし今、貴方がスパイである可能性は限りなく低いと判断しています。なぜなら、こんなに体術の基礎がなってないスパイなんてこの世に存在しないからです。」
しれっとそう言う彼に、綺麗に反撃を喰らった。
「ぐ……。」
ぐうの音も出ないとはこのことよ。
「ま、まぁそうよね。ははは。」
「さ、そろそろ瞳術のコツに入ります。」
そうして、私は目の使い方について彼からみっちりレクチャーされるのだった。