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その二

「へー、なかなかいい部屋借りたじゃない。」

「俺としては六畳一間くらいで良かったんっすけどね。」

「馬鹿ね。 安い部屋は需要が多いんだからそれだけ埋まる可能性が高いのよ。 その点高級マンションって扱いにくいに決まってるじゃない。」

結局横島は二十八階の部屋を借りて翌日には仕事帰りに令子とおキヌも見に来たが、おキヌはあまりに広い部屋に驚くも令子は立地や眺めを見ても《なかなかいい》の一言で済ませてしまう。

ただまあ対面式の広いリビングキッチンとかジャグジー付きのお風呂とか見てると、横島は本当に自分が住むのかと未だに実感が沸いてない程だ。


「霊障物件でも下手に値段を下げると周りの部屋の住人は面白くないけど、霊障物件だからGSに格安で入って貰うって言えば大抵納得するのよ。」

「へ~。」

「見たとこ問題無さげだし良かったじゃないの。 学生ならともかく本格的にうちの従業員になるなら、このくらいの部屋に住んで貰わないと私のメンツにかかわるのよ。」

正直心の何処かであのアパートでもいいかなという気持ちが横島にはまだある。

贅沢が少し怖いというかGSとしてやっていけなくなった時が怖いというか。


「本当やっていけるのかどうか。」

「アンタの場合は知識面と社会勉強しながらのんびりやればいいわよ。 普通はGS免許に何年もかかるんだから。 その分時間はあるわよ。」

ある意味横島は社会人として自分の足で立ちやれるのかという不安があるが、令子は昔と違い適切なアドバイスでそんな横島を見守っていた。

もう昔のようにセクハラもしてなければシバくこともない普通の上司と部下であり師匠と弟子の関係に近い。

それはそれで互いに少し違和感もあるが今の横島と令子には互いに適切な距離とも言える。

過去が懐かしくなる瞬間はどちらにもあるのだろうが、双方ともに戻りたいとは思ってない。


「凄い部屋ですね。」

「氷室さんもその気になれば住めますわよ。」

「私にはちょっと広すぎますかね。」

一方おキヌはかおりとジャグジー付きのお風呂なんかを驚きながら見ていたが、ここで横島とかおりが恋人として過ごすのかと思うと少しだけまだ複雑な心境になる。

すでに一線を越えてるかもしれないとずっと考えていたし、それが明らかとなり横島が卒業を機に引っ越して半同棲のような形になるのも別に驚きはないが。

それと実際のセックスはどうなんだろうと単純な好奇心と、あれだけ騒いでいた横島とどんなセックスをしたのかと少し聞いてみたいという本音もおキヌにはあったが聞けるはずもなかった。


「弓さんもここに?」

「流石に住みませんわよ。 GSの勉強とか教えてますし頻繁に来るとは思いますが。」

ちなみにおキヌは高校生のまま同棲するのかとちょっと過激な週刊誌のネタになりそうなことを想像するも、流石にかおりは一緒に住む気はない。

まあ週末は泊まる可能性もあるが。

実は母や祖父母は横島との仲を応援していて先日の卒業式の日も友達と言ったが、母には確実にバレていて帰ったらお赤飯でもと言われてかおりは顔を赤くして拒否していたりする。

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