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二年目の春

「こんなにお祝いして貰えるなんて夢みたい。」

この日の料理はさよと円の好きなものを中心であったが、特にさよは大好きな料理と家族や友人達に囲まれ感無量といった様子であった。


「私は気が付いたらあの教室に居たんです。 生きてる時の記憶も死んだ時の記憶もなくて、ただただあの教室で多くの人が学んでは卒業していくのを見てたんです。」

そして料理を一口食べると少ししんみりとした表情になり、横島と出会う前のことを語り出す。

移り変わりが早い学校に六十年余りもの年月を一人過ごしていたさよは、今では思い出すことも出来なくなった遠い過去を僅かでも思い出しながら友人達にその気持ちを吐き出すようにゆっくりと語っていく。


「ずっと続くと思っていたそんな日々がまさか終わってこうしてみんなと一緒にご飯が食べられるなんて……。 私、私、横島さんに友達になって欲しいってお願いしただけなのに。」

そんな日頃は明るく無邪気なさよの胸のうちに秘めた想いに少女達は箸を止めて聞き入っていたが、話が横島と出会った時に移ると視線が横島に集まる。

日頃からちゃらんぽらんな横島だが、やはり人が弱ってる時や本当に困った時には頼りになると改めて思う。


「いや、正直言って成り行きなんだけどな。」

さよが横島に感謝や尊敬の眼差しを向けると少女達ばかりか高畑や近右衛門まで似たような視線を向けるため、横島は困ったような表情をしてほとんどは成り行きだと語る。

実際さよと友達になったのはさよの為に願いを聞いたからだが、あとの実体化以降はそこまで深く考えた訳ではないのだから。

ただ少女達もさよも横島が考えてはなくとも要所をきちんと押さえてるのは理解していた。


「ともだち? かぞくじゃないの?」

「最初は友達だったの。 それからハニワさんが来てタマモちゃんが来て家族になったのよ。」

一方タマモはさよの告白に不思議そうに何故願いが家族じゃなかったのかと問いかけていた。

タマモにとってはさよも横島も初めから家族であり最初は友達だったというのがなかなか理解出来ないらしい。


「そっか、かぞくはふえていくんだね。」

「私もタマちゃんと家族になりたいな。」

「うん! いいよ! みんなでかぞくになりたい!」

さよの告白からしんみりとした雰囲気だったが、それもここまでであった。

タマモがさよちゃんの言葉から家族は増えていくのだと少し違った理解をしたらしくうんうんと頷いていると、すかさず桜子がタマモと家族になりたいと言い出す。

そんな桜子に周りの少女達は成りたいと言ってなれるものじゃないだろうと笑ってしまうが、タマモは即決で桜子を家族にすると言い出すと一緒にみんなで家族になりたいとの野望を口にする。

タマモにとっては少女達や刀子ばかりかエヴァ達でさえみんなで家族になればいいと半ば本気で思っていた。

まあタマモの家族に対する価値観は人間の一般的な価値観よりは幾分動物的な価値観でもあるが。


「ヨカッタナ、ゴ主人。」

「うむ、いい機会だ横島に養って貰うか。 あまりジジイに借りは作りたくないしな。」

「おーい、そこ。 どさくさに紛れてなに言ってるんだ。」

ちなみにタマモの野望を一番拒否しそうだったエヴァは、少し酒が入って機嫌が良かったからかチャチャゼロと共に横島に養って貰うかと口にして周りを驚かせていた。

もちろんエヴァの冗談であるが、現状でエヴァの生活費は近右衛門から出ていてエヴァ自身それを少しは気にしていたりする。

以前のように呪いがあるなら別だが呪いから解放された以上はあまり借りは増やしたくないのが本音のようだが。

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